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57話 かすみんと波乱なデート 3

ハッピバスデートゥミー

今回でかすみんとのデートは終わりです!

 幼女(かすみん)が大人の色気に溢れている。

 

 不機嫌そうなつり目は妖しく光り、瑞々しいピンク色の唇を舐めずる様子は容姿とは裏腹に淫靡さを醸し出している。

 二の腕に伝わってくる細やかな感触に、彼女の小さくもしっかりとある膨らみを意識してしまう。

 ピッタリとくっ付けられた太ももの熱が、体を侵食するようにジワジワと伝わってくる。

 

 (あかね)(かえで)ちゃんのような若々しい色気よりも扇情的で今までにはない刺激に、俺は身動きを取ることができずにいた。

 その様子はさながら蛇に睨まれた蛙だ。

 まぁこの場合、恐怖で動けないのではなく、かすみんの色気に動けないのだが。

 

「どうした葉雪(はゆき)。いつもの余裕さがないようだが?」

 かすみんはニヤリと微笑む。

「そうか、私の色気にやられてしまったのか。所詮葉雪も若い男子というわけか」

 勝ち誇ったかのように笑みを浮かべるかすみんにちょっとイラッとしたが、言っていることが半ば嘘ではないから言い返せない。悔しい。


「ほら、何とか言ってみろよ。じゃないと──我慢できずに襲ってしまうぞ?」

 そう言いながら、かすみんは細く白い手を俺の体に這わせる。

「ふぐっ」

 くすぐったいような感覚に思わず素っ頓狂な声が出てしまう。

 そんな俺を見て、かすみん恍惚とした表情を浮かべた。

 

「いいな、いつも余裕ぶってるお前が手も足も出せないでいる。そんな姿をみるとゾクゾクする……っ!」

 かすみんの根本はもしかしたらドSなのかもしれない。

 そんなくだらないことを考えるくらいには余裕ができてきた。

 

「なぁ葉雪、私とならいいんだぞ?」

「な、なんのことだ?」

 突然の問い掛けに戸惑い尋ね返すと、かすみんは仄かに頬を染めた。

「だからな、私ならもう大人だし……お前の相手をしてやることも、できるんだぞ?」

「ごめん、さっきから何を言ってんだ?」

「チッ……こういうときだけ鈍いんだな、お前は」

「なんだと? 俺のどこが鈍いんだ」

 俺を鈍感系ラノベ主人公と一緒にするな。

 すると何故かかすみんは深いため息を吐いた。


「まったくお前というやつは……。まぁいい、ストレートに言ってやる」

 俺を一睨みすると、かすみんはゆっくりと口を開いた。

 

「私なら、お前の欲望を受け止めれる、ということだ」

 

 …………………………は?

「すまんかすみん、俺は疲れてるみたいだ」

 休ませてくれと言うと、かすみんは一層不機嫌になった。

「お前、わかってて言ってるだろ」

「いやわからねぇよ。言ってることもかすみんよ意図もわかんねぇよ」

「何だ? もっと直接的な言い方をしたらいいのか?」

「それは止めろ」

 色々アウトだから。

 

「……はぁ。なぁかすみん、なんでいきなりそんなことを言ってきたんだ?」

「いきなりじゃないさ。お前は私の気持ちを知ってるだろ?」

「……まぁな」

 当然わかっている。というか、告白だってされた。これで気付かないやつはいないだろう。

 だが、

「俺は断ったし、かすみんも納得したはずだろ?」

「納得? 冗談言え。私は納得も何もしてないぞ」

「……あれ?」

 これは予想外だった。いや、当然と言えば当然なのか? 一度フラれたくらいじゃ諦めないってヒロインもざらだし。

 

「まぁ茜に誘われてお前の妹になって少しは不満も解決したさ。だが、別にお前を諦めたわけじゃないぞ?」

 つまりかすみんは、抜け駆けするき満々だったということか。

「それにな、私だったら実の妹でも義理の妹でもないから、法律的にも世間的にも何の問題もない」

「いや、教師と生徒って世間的にアウトな関係があるだろ」

 その突っ込みをかすみんは華麗にスルー。

 

「それに私は大人だから、お前が卒業してすぐに結婚することもできる」

「いや、年齢考えたら楓ちゃんとかもできるだろ」

「ほう? つまりお前は楓と結婚するつもりと?」

「いや違うから。あくまで例えだから」

「そうか、なら安心なんだが」

 とそこでかすみんがコホンと咳払いをした。


「話を戻すぞ。私だったらお前と結婚できるし、思春期男子の持て余す欲望も受け止められる。どうだ? いい話だろ?」

「思春期男子を発情期の猿みたいに言うなよ」

「あくまで例えだ」

 ダメだろその例えは。そう思いながらも俺はキッパリと答えを出す。

 

「俺はそのつもりもない。それに……かすみんも茜たちと同じ大切な人なんだ。だから不誠実なことはできない」

 するとかすみんはうっと言葉を詰まらせた。

 そしてそっぽを向いたかと思うと、

「義妹どころか後輩や実妹とキスしてるやつに言われても、説得力に欠けるな」

「それを言われたら何も言い返せない……」

 

「まぁいい。なら今日は時間の許すまでお前を誘惑するとしよう」

 そう言うと、かすみんは再び蠱惑的な笑みを浮かべた。

「いや、もう慣れたし平気──っ!?」

 俺の言葉を遮るように、かすみんがキスをしてきた。

 互いの熱が混じる。瑞々しい唇の感触に、心がどこかへ飛んでいきそうだ。

 少ししてかすみんが口を話す。互いの口を伝う透明な線に、鼓動が速くなる。

 

「どうだ? これでも平気か?」

 かすみんはイタズラが成功した子供のように微笑む。

「あっ、いや……」

 これはマズい。なんて言えるわけもなく。

「ふふっ、ならお前がどこまで耐えれるか試してみるか」

 唇を舐ずると、かすみんはおもむろに服を脱ぎ始め──

「いやいやいや! 何やってんの!?」

 俺は慌てて脱げかけた服をかすみんの肩に掛ける。

 

「いや、思春期男子を誘惑するのに一番有効なのは裸だと思ってな」

「そうだけど! そうだけども!」

 反論しようと口を開くが、何から言えばいいか迷ってしまう。

 そうこうしていると、かすみんは胸元をはだけさせた。

 そこから覗く黒色の洒落た下着に目がいってしまい、俺は慌てて目を逸らした。

 

「ふっ、お前でも恥ずかしいモノがあるのか」

「あ、当たり前だろっ」

 そう返すと、不意にカチッと金属が当たったよな音がした。

「か、かすみん、何してるんだ?」

 顔を背けたまま尋ねる。

 するとかすみんは、

「ホックを外しただけだが?」

「いや本当に何してんだよ!?」

 と声を荒らげると、かすみんに右手を握られた。

 そしてそのまま誘導され──

 

 むにっ。

 

 ツルツルと滑るような、それでいて瑞々しく柔らかい、小さくも確かにあるこの膨らみ。それに加えこの暖かさ、まさか!?

 驚いてかすみんの方へ目を向けると、なんとかすみんは俺の手を取り自らの胸へ直接当てていた!

 あまりのことに驚きを隠せず、再び俺は身動きが取れなくなった。

 

「なななっ、何してんだよ!?」

「どうだ? 初めてだろ、この感触は」

 かすみんのふざけた問いに俺は「当たり前だろ!」と声を上げた。

 あの茜でも、こんなことはしてこない。

「葉雪、我慢は止めとけ。欲望のままに揉みしだいてもいいんだぞ?」

「やらねぇよ!」

 と声を荒らげたせいか、無意識に力が入り、

「んぁっ」

 かすみんの口から悩ましい声が漏れる。

 結果として、かすみんの胸を揉んでしまった……

 俺はなんてことを……


「なんだ、実は葉雪もその気だったのか」

 嬉しそうな、それでいて妖艶な笑みを浮かべるかすみん。

「いや、本当にその気はないっ」

 それでも俺は手を離せないでいる。

 男の本能が憎い!

「強がるな。私がリードしてやるから」

 そう笑うと、かすみんはゆっくりと手を動かし俺に胸を揉ませてきた!

 小さいのに柔らかい。なんだこの感覚は……っ!

 

「んっ……ふふふ、どうだ? 私に惚れたか?」

「くっ、何をっ」

 言い返そうとしたところで、とある異変に気付く。

 手に伝わってくる柔らかさの中に、突如固い感触が……

「なぁかすみん、もしかして──」

「気にするな」

「いやでも」

「気にするな」

「はい」

 かすみんの有無を言わせない迫力に、俺は敬語になってしまった。

 よく見れば、かすみんの顔がリンゴのように真っ赤になっていた。 

「まぁいい、このままお前を──」

 

「お客様ぁ? ここはそういう施設ではないので、お控え願いますでしょうかぁ?」

 

 丁度そこへ、従業員(女性)がやってきた。

 こめかみがピクピクしている。これは相当怒っているようだ。

「「す、すみません」」

 

 こうして、俺たちは出禁となったのだった。

 

 

「葉雪、今日はすまなかった」

 少し暴走してしまったと謝罪するかすみん。

 怒られた幼女のようにしゅんとなっている彼女を見ると、もう何も言えない。

「わかったから、もういい」

「ありがとう」

 かすみんは安心したように微笑んだ。

 その笑顔にドキッとしたのは、俺だけの秘密だ。

 

「そうだ、あのとき言ったことは私の本心だ。忘れるなよ?」

「……わかったよ」

 かすみんが言っているのは、かすみんがまだ俺を諦めていないということだろう。

 つまり、これからも機会があれば同じように誘惑してくるつもりなのだ。

 大丈夫だろうか、俺の理性。

 正直めっちゃドキドキしたし。従業員さんが来なかったら、本当に一線を越えていた可能性もあるかもしれない。

 頑張れ、俺の理性。

 

 決意した俺は右手を強く握りしめた。

 少しだけ、かすみんの胸の感触を思い出してしまったのは、仕方ないと言い訳したい。

 


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