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57話 かすみんと波乱なデート 1

今日で「妹ハーレム」が投稿開始から10ヶ月になります!

 七月下旬。それは(地域や学校で差はあるが)夏休みと呼ばれる長期夏期休暇の入り口である。

 そして我が伊吹(いぶき)高校も例に漏れず、今日七月二十日から夏休みに入る。朝日(あさひ)光月(みつき)の通う浦瀬(うらせ)中学校は先週から夏休みだ。

 追記すれば、(かえで)ちゃんたちの通う名門校の天ノ川学園は、伊吹高校よりも三日早く夏休みに入っている。

 

 学校に行かなくてもいいし、妹たちとずっとイチャイチャしてられる。

 夏休み、なんて素晴らしいんだ!

 

 ビバ・夏休み! そんなキャッチフレーズが何度も頭を駆け巡り──え? 期末試験はどうしたかって? ……別に話さなくてもいいだろ。皆テストとか嫌いだし。

 

 ……話を戻そう。

 今日から夏休み。何度でも言うが、夏休み。青春の代名詞とすら言われる夏休み。

 普通の生徒であれば、部活でいい汗流して他校と激戦を繰り広げたり、二学期や来年のことを考えて勉学に励んだり、友人たちと遊んだり恋人とデートしたり──などをするだろう。

 

 ……なのに。

 

「何で俺はこんなことやってんだ……」

「愚痴は後にしろ」

 悲痛な叫びを漏らす俺に、かすみんはやや尖った口調で叱声を飛ばしてきた。

 

 俺がいるのは、かすみんとの愛の巣もとい『旧生徒指導室』。

 夏休みだというのにガッツリ制服を身に纏い、かすみんの雑用を手伝っているのだ。

 

 先に言っておくが、この雑用はかすみんがサボってできたモノではなく、他の教師に押し付けられたものである。

 可哀想だとは思うが、生徒に手伝わせるなよ……

 

 そんな愚痴は口には出さず、俺は黙々とかすみんの助手を務めるのであった。

 

 

 延々と雑用を処理すること三時間。山のようにあった雑用の諸々はきれいサッパリなくなった。

 我ながらよく頑張ったと思う。

 

「お疲れ。よくやってくれたな」

 そんな労いの言葉と共にコーヒーを渡してくるかすみんに、珍しく大人だなと印象を受けた。

 ただ、口にするとすぐに拗ねてしまうので、俺は一言「おう」と胸を張り、差し出された缶コーヒーを受け取る。

 

「ふぅ……。葉雪(はゆき)はいい仕事をするな。あれだけの量が午前中だけで終わるとは思ってもみなかったぞ」

「そうか? あれくらいは兄として常識だ」

「お前の中での兄は神か何かか?」

「そんなワケないだろ」

 むしろ妹が神だな。そう答えると、かすみんはやれやれと首を振った。

 なんだその反応は。

 

「まぁそれは置いといて」

「置いとくなよ」

「……葉雪、午後は空いてるか?」

 俺の突っ込みをスルーして、かすみんは素っ気ない口調で尋ねてくる。

 それとなく両手を胸の前で祈るような仕種に不安そうな上目遣いをしてくる辺り、かすみんはとてもあざとい。

 まるで兄にお願いするロリ妹のような仕種に、俺はため息を吐く。

 そんなことされたら何であろうと断れるワケないだろう。

 

「特に用事はないが」

 そう返すと、かすみんは「そうか」と呟き妖艶な笑みを浮かべた。

 

 

   ◇妹◇

 

 

 ……というワケで。俺はかすみんとデートすることになった。

 そこまでの経緯は割愛するが、とにかく(あかね)を宥めるのが大変だった。

 何せ午前学校に行って帰ってきたと思ったら「デート行ってくる」だもんなぁ。

 あぁ、胃が痛い。

 

 

「葉雪か、時間ピッタリだな」

 席まで辿り着くと、コーヒーを飲んでいたかすみんが感心そうに呟いた。

 場所は変わって駅近くの喫茶店。

 俺は制服からVネックのシャツとジーンズに、かすみんはスーツから肩や胸元、手足の露出が多い白のゴスロリへと装いを変えている。

 

 俺はかすみんと対面する席に座り、やって来た店員に飲み物の注文をして息を吐く。

 

「まったく、いきなり言い出すモンだから、茜を宥めるのに手間取っただろ」

「あー、うん。どんまい」

 このロリっ子め、他人事みたいに言いやがって。

「……葉雪、失礼なこと考えてないか?」

 ギロリと、かすみんはもとから鋭い目を更に光らせる。

「いや、何も?」

 ホント、何でこうもわかるのかね。

 もはや超能力じゃないかと疑ってしまう。

 それはさておき。

 

「……で、これからどうすんだ?」

「そこは葉雪が決めてくれ。デートだからな」

「いや、言い出したのはかすみんだろ。……まさかどこに行くか決めてないのか?」

 疑いの目を向けると、かすみんはサッと目を逸らした。

 

「そ、そうだな。流石に来て早々帰るわけにもいかんし、少しここで休憩するか」

「まだ何もしてないだろ」

 適当なかすみんをジト目で見るが、本人はどこ吹く風と無視している。

 まったく、このロリっ子め。

 なんて考えてたら睨まれた。ホント察しがいいよな。

 

 

   ◇妹◇

 

 

 三十分という休憩を終えた俺たちは、ひとまず駅に来ていた。

 行き先が決まっているワケではないが、取り敢えず電車でどこかへ行こうということになったのだ。

 

「さて、どこへ行くか」

「早くしろよ葉雪、時間がなくなるだろ?」

「ならかすみんが決めてくれないか!?」

 誘ったのはお前だろ! と言いそうになったが、ここはグッと飲み込む。

 何故って? それは言ったところで「そうだな」や「妹のお願いだぞ?」なんて返してきそうだからだ。 

 まったく、大人ならもっとしっかりしてほしい。

 そんな愚痴を内心呟きながら、俺は行き先を選ぶのであった。

 

 

 それから十分。結局俺たちはつい先日オープンしたスポーツありゲームありのレジャー施設に行くことにした。

 ここからは電車で十分足らずで行ける距離である。

 

 ──そして十分後。

 

「ここが噂のレジャー施設か」

「噂って、俺はそんなの聞いたことないぞ?」

 入り口から建物を眺めそう呟くかすみんに、俺は突っ込みを入れる。

 が、かすみんは聞こえていないのかボーっとただ建物を眺めていた。

 仕方がないか。そうため息を吐き、俺はかすみんの手を引っ張って中へ入る。

 

 受付で料金を払いパンフレットを受け取った俺たちは、まずパンフレットを開いた。

「広いな」

「あぁ、そうだな」

 驚いたように呟くかすみんに、俺は相槌を打つ。

 確かに、これは相当広い。

 

 一階にはプールやバッティングセンター、卓球などのスポーツ系が隙間なしに詰められている。正直この一階を回るだけで時間がなくなりそうだ。

 

 二階にはカラオケやビリヤード、ダーツなどがあり、どちらかというと大人が好みそうな場所となっている。

 

 三階は全体がゲーセンとなっていた。パンフレットを見る限りでも相当な数であることがわかる。

 

 四階はジムになっていた。どうやらここでは筋トレもできるらしい。だからなのだろう、先程からマッチョな男女がエレベーターで四階に向かっていた。

 

 そして最後、五階はキッズコーナーだった。まぁここに行くことはないだろうから、説明は省かせてもらう。

 

 さて、ここまで数が多いとどこに行こうか悩んでしまうな。

 どうする? とかすみんに意見を求めると、かすみんは「うーむ」と唸りながらパンフレットを凝視する。

 やがて決まったのか、ある場所を指差し不敵な笑みを浮かべた。

 

「いつぞやのリベンジマッチといこうか、葉雪」

「おう、その挑戦受けてやるよ。またやられても泣くなよ?」

 

 俺たちは挑発し合いながら、三階のゲーセンへと向かった。

 

 こうして、俺とかすみんのデートは始まった。

この作品を読んで頂きありがとうございます!

誤字脱字、改善点等がございましたら容赦なく教えてください!

この作品を読んで頂いた読者様に最大の感謝を

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