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51話 ゲーセンでデート その4

今回は魅音ちゃんオンリーです。

今日、5月14日で「妹ハーレム」が投稿開始6ヶ月となりました!

 朝日(あさひ)とのデートを終え、続くデート相手は司音(しのん)ちゃんの妹、魅音(みのん)ちゃんだ。

 いつもの集合場所で朝日と魅音ちゃんが入れ替わり、他の皆はバラバラと他のコーナーに散っていく。

 

「よし、じゃあ行こうか」

 一人に当てられた時間はそう多くはない。だから俺はすぐに魅音ちゃんの手を引いて騒音の中に進み出す。

「……はい」

 二人っきりになったからか、恥ずかしそうに頬を朱色に染めた魅音ちゃんは、返事をすると共に俺の手を軽く握り返してきた。

 うーむ、この子供らしさは新鮮でいいな。などと思いながら、俺は魅音ちゃんに笑顔を向けた。

 

 

 さて、もう七人目というだけあって、いくら広いゲーセンでも新鮮味がなくなってきた。

 別に楽しくないわけではない(寧ろ一人一人と遊べてめっちゃ嬉しいし楽しい)が、やはり同じような流れになってしまう。

 そんなことを考えながらも、俺は魅音ちゃんがやりたいと言ったゲームを片っ端から遊んだ。

 UFOキャッチャー、エアホッケー、チュウ○ズム──と定番のゲームを遊んでいく。

 

 最初は恥ずかしがっていた魅音ちゃんだが、遊んでいるうちに恥ずかしさは消えて、純粋に楽しんでいた。

 UFOキャッチャーで一喜一憂したり、エアホッケーで俺に負けて拗ねたり、このデートだけで魅音ちゃんの知らない面を沢山見れた気がする。

 

葉雪(はゆき)さん、次はどのゲームをしますか?」

 魅音ちゃんはキラキラと輝く瞳で俺を見上げ、頬を紅潮させながら尋ねてくる。

「そうだなぁ、どれをしようか」

 俺は辺りを眺めて、次のゲームを探す。だが、俺たちが今いる場所のゲームはあらかた遊び尽くしていて、目星いモノは見付からない。

「じゃあもっと奥の方に行ってみる?」

「はい」

 俺が提案すると、魅音ちゃんは笑顔で即答する。

 そうと決まれば早速。俺は魅音ちゃんの手を握り、少し暗くなっているゲーセンの奥に進んだ。

 

 

   ◇妹◇

 

 

「は、葉雪さんっ、私を騙しましたね……っ!?」

「ふふっ……いいや、騙してないさ。これっぽっちもね」

 隣でプルプルと震え目尻に涙を浮かべながらも、魅音ちゃんは俺を睨んでくる。そんな魅音ちゃんに、俺は笑い混じりにそう答えた。

 そう、俺は魅音ちゃんを騙していない。ただ、「魅音ちゃんにオススメしたいゲームがあるんだ」と言い、手で目隠しをして連れてきただけだ。何一つ嘘を吐いていないし、騙していない。

 

 そう、たとえそのオススメのゲームが、魅音ちゃんの苦手なホラー系でも、だ。

 

 魅音ちゃんがホラー系のゲームに苦手意識を持っていることは、司音ちゃんから聞いて知っていた。

 そこで俺は、魅音ちゃんにドッキリを仕掛けることを決めた。やり方は先にも述べた通り、目隠しして中まで誘導する。これだけだ。

 

 まぁすんなりとドッキリが成功したので、俺は投入口に百円硬貨を二枚入れる。

「ま、まさかこれを遊ぶつもりですか……っ!?」

 俺の行動を見て、魅音ちゃんは目を見開き尋ねてくる。

 それに対して俺は「勿論」と答える。「せっかく来たんだしな」

 

「は、葉雪さんは鬼畜ですっ。きっとこの後、一人でトイレに行けなくなった私を人気の無いところに連れていってあんなコトやそんなコトを──」

「魅音ちゃんの中で俺はどんなやつになってんの!?」

 魅音ちゃんの口からスラスラと語られる妄想に、俺は思わず声を荒らげ突っ込みを入れる。

 今の内容だと、俺は相当な鬼畜野郎だな。

 と言うか、この子まだ小学生だよな? ちょっと知識豊富すぎませんかね。最近の小学生は皆こうなのか?

 そこまで思い、魅音ちゃんが特殊すぎると結論付けて記憶のフォルダから消去する。

 

「さて、始めるから銃構えて」

「………………うん」

 魅音ちゃんは半目でジトーっと俺を睨みながらも、目の前にある機関銃を手に取り、画面に向ける。

 このゲームは、謎の島に辿り着いた探検家の主人公(プレイヤー)が、襲い掛かってくるゾンビやら色んな化け物を銃で倒していくという、いたってシンプルで定番なモノだ。

 

 さて、説明も終えたところでゲームスタート。まず最初に映されるのは主人公が島に辿り着くシーン。

 ご丁寧に経緯やストーリーを説明してくれ、そして山の中央へと進んでいく。

 

 そしてここで最初の脅かしシーン。主人公が乗ってきた小船がバキッと豪快な音を発てて崩れ海へと沈んだ。

 

「ひゃぁっ!? ふっ、船が! 葉雪さんっ、船が壊れました!」

「あーうん、そういう設定だから」

 予想以上に驚き慌てふためく魅音ちゃんに、ゲーム上での万能言語である「設定」だと説明し、引き金を引いてストーリーを進める。

 このゲームは、戦闘時以外では引き金がボタンの役割を担っている。つまり、引き金をカチカチしていれば流れるようにストーリーが進んでいくのだ。

 

 

 それから適当にストーリーを流していき、最初のバトルイベントが起きた。

 ガサッと木陰から物音が鳴り、間を開けずに画面に飛び込んできたのは定番の化け物、ゾンビ。

 爛れ腐敗し、骨などが見えている。そんな姿に魅音ちゃんは叫び声を上げる。

 

「落ち着いて、魅音ちゃん、これゲームだから。さ、銃を構えるんだ。まぁこれはチュートリアルの一環だから、やられることはないよ」

 説明しながらも、俺はまずゾンビに一発撃ち込む。

 やけにリアルな血飛沫が上がり、魅音ちゃんが絶叫する。

 やばい、魅音ちゃん想像以上にホラー系苦手だ。最後まで行けるか?

 そう思いながらも、俺は引き金を引き続けゾンビを倒した。

 

「ほら魅音ちゃん、もう倒したから。もう画面見ても大丈夫だから」

「……ほ、ホントですか?」

 幾度と上がった血飛沫にSAN値を削られた魅音ちゃんは、なんと俺の背中に顔を埋めていた。

 そんな魅音ちゃんに声を掛け、なんとか隣に座らせる。

 いやぁ、それにしても、魅音ちゃんはホントにダメなんだな。

「魅音ちゃん、次からは参戦してくれよ?」

「は、はい、分かりました。…………善処します」

「それ絶対参戦してくれないやつだよね?」

 大丈夫? と確認すると、魅音ちゃんは少し青ざめた表情で「大丈夫だ、問題ない」とドヤッた。

 なんで知ってんだよ、そのネタ……

 

 

 魅音ちゃんのイー○ックネタから十分程。宣言通り魅音ちゃんはちゃんと戦闘に参加してくれた。

 と言っても、ほぼ目を閉じ顔を背けながら撃っていたので、その大半がゾンビに当たることなく、どこかへ飛んでいっていたが。

 

 そして更におもしろ……不幸な出来事が起きた。

 

 ストーリーもそろそろ中盤に差し掛かるというところで、新たなモンスターが出てきたのだ。

 そのモンスターは丸い胴体に八本の足という気持ち悪い姿をしている。つまりは蜘蛛だ。それも巨大な。

 

 これまた司音ちゃん情報だが、魅音ちゃんは虫も苦手らしい。特に蜘蛛とG。

 そして今目の前には、巨大な蜘蛛が。

 さて、こうなったら魅音ちゃんがどうなるか、想像するのは容易いことだ。

 

「いやぁああああああああああああああああああ!! 蜘蛛ぉおおおイヤぁあああああ!!」

「ちょっ、危ない! 魅音ちゃん落ち着いて!」

 想像するのは容易いと言ったな。あれは嘘だ。魅音ちゃんは俺の想像を越えて、絶叫しながら銃を振り回し始めた。

 ヤバい、これはヤバい。魅音ちゃん完全に冷静さを欠いてる。こうなれば、俺がこいつを早く倒すしかない。

 そう決心し、俺は銃を巨大蜘蛛に向け、銃を撃ちまくった。それも、正確さを棄てただ早く倒すだけを目的に。

 

 だが、蜘蛛は倒れることなく、長く気持ち悪い足で攻撃してきた。画面の枠が赤くなり、左上に表示されているライフが二つ減った。

 なんでこんなに体力多いんだよ! ……って、二人プレイだからか。

 自問自答する俺。そう、これはプレイヤーの人数によってボスの体力が増える仕様になっているのだ。

 くそっ、早く倒すには魅音ちゃんの協力が必要不可欠。だが、今の魅音ちゃんは戦える状況じゃない。俺一人でやるしかないのか!

 

 仕方なく一人銃で応戦するが、結局倒すことはできず、そこでゲームオーバーになった。

 

 

   ◇妹◇

 

 

「……葉雪さん、酷いです。こんな純粋無垢な少女をあんなところに連れ込んで、あろうことかあんな恐ろしいことを……」

「悪かった。本当に悪いと思ってるから、その誤解を招く言い方を止めてくれ」

 

 隣で物騒なことを淡々と呟く魅音ちゃんに、俺はすかさず謝罪を述べる。

 すると魅音ちゃんは、ぷくーっと頬を膨らませふんっとそっぽを向いた。

 あぁ、これは完全に拗ねてやがる。どうしよ。

 そう悩んでいると、不意に魅音ちゃんがシャツの袖をクイッと引っ張ってきた。

 

「どうかしたか?」

「……」

 俺が尋ねても、魅音ちゃんは口を開いてくれない。

「もしかして、トイレか?」

「そうだけど葉雪さん配慮が足りない!」

 適当に言ってみると、どうやら当たりのようで、魅音ちゃんは頬を朱色に染めポカポカと軽く殴ってきた。

 

「ごめんごめん。それで、少し距離あるけど大丈夫?」

 そう尋ねると、魅音ちゃんは首を横に振る。

「実はあのゲームやってる途中から行きたくて……」

 マジか! と思いながらも、俺は素直に反省する。そりゃあんな恐怖心を的確に突いてくるゲームをしてれば、尿意なんて忘れるだろう。

 

「……よし。魅音ちゃん、少しだけ我慢してくれよ」

「え? どういう──」

 魅音ちゃんが尋ねてくる前に、俺は魅音ちゃんの体を持ち上げ、お姫様抱っこをして走り出す。

「ふぇえええ!?」と声を上げる魅音ちゃん。ただでさえお姫様抱っこという目立つことをしているのに、魅音ちゃんの可愛らしい悲鳴? が相まって周りからの視線を多く受ける。

 通報されてないといいなぁ。と淡い期待を持ちつつ、俺は一番近いトイレまで全力疾走した。

 

 

 なんとか間に合い、済ませた魅音ちゃんとゲーセン内を歩いていると、やはり多くの視線を感じた。

 これはヤバい、通報されたかなぁ。と思っていると、状況を察した魅音ちゃんが、

「お兄ちゃん、ありがとね」

 と周りに聞こえるように礼を言ってきた。

 その言葉で俺たちを兄妹と勘違い(ある意味正しい)した人たちは、俺たちから視線を離して散っていった。

 

 俺はお礼として、魅音ちゃんの頭を撫でた。

 

 

   ◇妹◇

 

 

 魅音ちゃんとのデートも残り僅か。ついにやつはやって来た。

 ……いやまぁ、あれ(相性占い)は動かないけど。なんかすごい引力で俺たちを引き寄せてるんじゃないのか?

 と、それはさておき。

 

「葉雪さん、これ、これやりましょう!」

 少し興奮しながら、魅音ちゃんは相性占いを指差す。

 俺は笑顔で「分かった」と返し、百円を投入する。

 最初に名前を記入。続きお題が表示される。

「『好きな海洋生物』って、やけに範囲を狭めたな」

「そうですね、他の似たようなモノではないような質問です」

 そう相槌を打ちながら、魅音ちゃんは「オオサンショウウオ」と記入した。

 な、なかなかにマニアックなところを選んできたな。普通はもっと水族館で人気なやつを選ぶだろ。

 そう思いながら、俺は「エイ」と記入した。

 

 さて、続き五問計六問の質問を終え、表示された結果は──

「『親友以上、恋人未満の良い関係』ってどこが〝良い関係〟なんだよ。一番反応しづらい関係じゃねぇか」

「…………ぐすん」

 中途半端な結果に俺は突っ込みを入れ、魅音ちゃんはぐずり始めた。

 慰めとは違うが、俺たちは恋人繋ぎをして皆の元へ戻った。

この作品を読んで頂きありがとうございます!

誤字脱字、改善点等がございましたら容赦なく教えてください!

この作品を読んで頂いた読者様に最大の感謝を

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