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47話 妹たちと温泉旅行

 温泉旅行への準備を進めながら、変哲もない授業を(こな)し、あっという間に金曜日となった。

 この日も相変わらず、(つばさ)(かなで)との雑談をから始まり、授業では何度も当てられ、そのせいで少し疲れたりしながらも、午前の授業は終わりを告げた。

 

 そして昼休み。

 今日も(あかね)司音(しのん)ちゃん、夜花(よるか)ちゃんの三人を連れ『旧生徒指導室』へ向かっていた。

『旧生徒指導室』へ向かう途中、茜や司音ちゃん、夜花ちゃんが楽しく会話をしているところを見ると、少し嬉しい気持ちになる。

 何故って、茜は昔から俺にベッタリで友達と呼べる人が少なかったからだ。だからこう、友達と楽しく会話している姿を見ると、兄としてはすごい嬉しい。

 いやぁ、こうしていると、茜も普通の女の子なんだよなって実感が持てる。

 もしかしたら、今のクラスでは友達が多いのかもしれない。

 ただ、その中で実の兄に求婚しているということを知っている者がいるのかどうか。

 俺はそこまで考え苦笑した。

 

 余談だが最近、一年生から「シスコン先輩」に続き「ハーレム先輩」というあだ名が付けられた。

 ハーレム先輩って……いや、なんでもない。

 

 

「さて、ついに明日となったわけだが」

『旧生徒指導室』にて。俺たちは昼食を食べながら明日のことについて話していた。

「朝の八時に羽真家(そっち)に行けばいいんだよな?」

 俺は玉子焼きを咀嚼し終えると、頷き次のおかずへ箸を伸ばした。

「そうだな、私が三人を車で連れていって、そっからリムジンで旅館に向かう。こんなところか」

(かすみ)さん、あれ持ってきてくださいね?」

「あぁ、分かってるよ。茜も忘れんなよ?」

 と、明日の時間を決めると、茜とかすみんが意味深なやり取りを始めた。

 ……いや、全然意味深じゃない。そうだ、最近茜が暴走しまくってるからそう聞こえるだけだ。うん。

 俺は一度深く息を吐き、頭を落ち着かせる。

 

「そうだ、旅館までちょっと距離あるし、リムジンの中で遊べるような物も持っていった方がいいかもな」

「そうですね、トランプとかでしょうか?」

 うん、やっぱトランプはいいよな。いろんなところで遊べるし、遊びの種類も多いしな。

「……あの、どうして誰もリムジンに突っ込まないんですか?」

 突然、夜花ちゃんが手を挙げ訊ねてきた。

 俺たちは揃って首を傾げ、

「「「「だって羽真家だから」」」」

「え、えぇ……」

 

 それからいろいろなことを話しているうちに時間は過ぎていき、昼食を食べ終わった頃に昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

 俺たちは弁当を袋に入れ、各々の教室へ戻っていった。

 

 

   ◇妹◇

 

 

 午後の授業も滞りなく進んでいき、やっとこさ帰りのHR。

 担任の話していることを聞き流し、俺が考えているのは明日のこと。

 さて、何事もなく旅行を楽しめればいいんだが。茜のことだ、なにか企んでるんだろうなぁ。

 俺は何度もため息を吐いた。

 

 HRも終わり、クラスメイトたちは部活やら帰宅やらで教室を出始めた。

 勿論、数人は教室に残り、他愛もない雑談をしている。

 

「あぁ、そうだ、翼、奏」

「ん、なんだ葉雪(はゆき)。ちょっと忙しいから早めに頼むよ」

「なになに~、なにか用事かい、ユキくん」

「明日温泉に行ってくる」

 そう言うと、二人は目を見開き、そして苦笑を浮かべた。

「これまた突然だね、葉雪」

「お土産、宜しくね~」

「おう、分かってるよ。それじゃあ、部活頑張れよ」

 俺は二人にそう言い教室を後にした。

 

 

   ◇妹◇

 

 

 翌日。土曜日。

 俺と夜花ちゃんはいつも通りランニングを熟し、夜花ちゃんをマンションに送ってから俺は家に帰った。

 

 シャワーで掻いた汗を流し、体を洗って風呂場を出た。

 今日もラッキースケベは起こることなく、俺は持ってきていたシャツを着て部屋に戻る。

 それからラフな格好に着替え、俺はリビングに向かった。

 

 まだ(かえで)ちゃんは来ておらず、俺は一人淡々と朝食を作り始めた。

 それから少しして、リビングの扉が開かれる。

 入ってきたのは、少し寝癖を残した、部屋着姿の楓ちゃんだった。

 

「おはよう、楓ちゃん」

「おはようございます、葉雪にぃさん」

 挨拶を交わすと、楓ちゃんは俺の隣に来て朝食を作り始める。

 

 朝食を作り終えたところで、リビングに全員やって来て、皆揃って朝食を食べた。

 

 

 そのあと俺は、あらかじめ着替えなどを入れておいた大きめの鞄をリビングに置いて、ソファーで寛いでいた。

 

 ──ピンポーン。

 

 一人静かにソファーで休んでいると、突然呼び鈴が鳴った。

 スマホで時刻を確認すると、既に八時になっていた。

 俺は茜たちに声を掛けたあと、急いで玄関に向かった。

 

「よう、かすみん。今日もゴスロリなんだな」

「うっさい。いいだろ、これが好きなんだから」

 唇を尖らせ、かすみんはゴスロリのスカートの端を摘まみ上げた。

 かすみんの後ろには、半袖の白いシャツにホットパンツといった、お馴染みの姿の司音ちゃん、淡いピンクのワンピースを纏った魅音(みのん)ちゃん、黒基調のパーカーに膝丈程のフリルの付いたスカートを纏っている夜花ちゃんの三人が立っていた。

「皆可愛いよ。よく似合ってる」

 俺は素直に四人を褒めると、それぞれ別々の反応を見せてくれる。

 かすみんは当然だと言わんばかりにない胸を張っているが、顔は少し赤い。

 司音ちゃんはシャツの襟を引っ張り、チラチラと胸元を見せてくる。そして顔はにやけていた。

 魅音ちゃんはプルプルと震えながら「ありがとうございます」と礼を言ってきた。

 夜花ちゃんはパーカーの裾を引っ張り、顔を赤くして俯いている。

 

「それじゃあちょっと待ってて。茜たち呼んでくるから」

 そう伝え、俺は早足でリビングに戻った。

 それから全員揃ったのを確認して、門の前で待機していたリムジンに乗った。

 さて、楽しい旅行の始まりだ!

 

 

   ◇妹◇

 

 

「──と思ってたんだけどなぁ」 

 リムジンの中、俺は窓からその景色を眺めぽつりと呟いた。

 金曜日にも話した通り、俺はリムジンで遊べるようトランプを持ってきていた。

 だがいざリムジンに乗ると、半数近くが緊張で車酔いを起こし、トランプで遊ぶことはできなかった。

 やけに静かなリムジンで、俺はもう一度ため息を吐いた。

 

 

 リムジンに揺られること一時間。

 やっとこさ温泉旅館に着いた俺たちは、まず深呼吸をした。

 ふぅ。俺も少し車酔い気味だったから、少しスッキリしたな。

 他の皆を見ると、まだ数人は顔色が悪い。

 

「よし、それじゃあまずは部屋に行くぞー」

 俺は妹たちを連れて、旅館に足を踏み入れた。

 

 

 部屋に来るや否や、三人が同時に床に寝転んだ。

 その三人とは司音ちゃん、魅音ちゃん、夜花ちゃんだ。

 まぁ分かると思うが、この三人が車酔いをしていた三人だ。

 他にもいるが、この三人が少し酷かった。

 

 三人が落ち着くまで、他の妹たちは荷物を隣の部屋に置き寛いでいた。

 そんな中、朝日(あさひ)蓮唯(れんゆい)ちゃんの提案でトランプをすることとなった。

 参加者は俺、茜、朝日、楓ちゃん、蓮唯ちゃん、かすみんだ。

 光月(みつき)(すず)ちゃんは、三人と一緒に寝ている。

 ちらりと見えた寝顔が可愛かった。

 

 最初にやったのは大富豪。

 一位は勿論この俺だった。

 いやぁ、妹たちに負けるなんて兄としてあってはならないからな。

 意外に楓ちゃんが強く、俺に続いて二位で上がった。やはり羽真家(いいとこ)のお嬢様。大富豪でも上位は逃さないか。

 茜は更にそれに続いて三位。楓ちゃんに負けたことを少し悔しがっていた。まぁ、基本ゲームをするときは俺に続いて二位だったもんな。そりゃ悔しいよな。

 茜の次に上がったのはかすみん。こちらも少し悔しがっていたが、「まぁいいか」と呟いていた。

 そして始まった最下位決定戦。

 残っているのは言い出しっぺである朝日と蓮唯ちゃん。

 が最下位決定戦も数分で決着が付いた。

 勝ったのは蓮唯ちゃん。つまり、最下位は朝日だ。

 いやぁ、朝日はあまりゲームが強くないと思ってたけど、ここまで弱かったのかぁ。

 他の皆が入ってたらまた結果は変わってたのかもしれないな。

 

 大富豪の終えた俺たちが始めたの神経衰弱。

 裏側で並べられたトランプの中から、同じ数字を当てるゲームだ。

 長く続いた神経衰弱。そして今回も俺が一位だった。

 次にかすみん。その下に茜が来ていて、茜はとても悔しそうにしていた。

 それから更に下の順位は、楓ちゃん、蓮唯ちゃん、朝日の順だ。

 また朝日が最下位だった。

 朝日よ、お前はトランプゲームに向いてないのかもしれない。

 俺は今回のことを通して、そう感じていた。

この作品を読んで頂きありがとうございます!

誤字脱字、改善点等がございましたら容赦なく教えてください!

この作品を読んで頂いた読者様に最大の感謝を

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