45話 茜とデート♡ その2
今日で「妹ハーレム」が投稿開始4ヶ月になります!
今まで読んでくださった皆様、誠にありがとうございます!
これからも「妹ハーレム」を宜しくお願いします!
ペットショップの次に向かったのは、某有名のショッピングモールだ。
目的地はその中、四階にある映画館だ。
どんな映画を見るのかって? そうだな。純愛のラブコメディと答えておこう。一応言っておくが、十五禁でも、十八禁でもない。健全な全年齢向けだ。
上映開始まで時間がなく、俺と茜は走って映画館まで向かい、速攻でチケットと飲み物を買い、指定されたシアタールームに向かった。
なんとか開始前に入ることができた俺たちは、息を整えながらチケットに書かれた席に座る。
「ふぅ、なんとか間に合った」
「そうですね、少し危なかったです」
まだ茜の方も息が上がってる。そりゃ、一階から階段使って頑張ったもんな。
何故エレベーターを使わなかったのかと言うと、今日は休日で客が大勢いたから、エレベーターを使う人が大勢いたからだ。
やっと息が落ち着くと、不意にシアタールームの光が消され、スクリーンの光のみが目に入る。
おぉ、始まるのか。ちょっと楽しみだな。
俺は題名すら知らない映画に、少しわくわくしていた。
期待に胸を膨らませスクリーンを見つめていると、くいくいっと袖が引っ張られる。
隣を見ると、茜が体を倒し密着してきていた。
俺は声を上げそうになり、咄嗟に手で口を塞いだ。
そして落ち着くと、茜に顔を近付け、小声で訊ねる。
「どうかしたか?」
「いえ、その……暗くて、ちょっとえっちですね」
「ばか」(ぺしっ)
「あふっ♪」
茜は恍惚とした表情で、俺が叩いた頭を擦る。
ついに本格的な変態となったか。マゾヒストとか。
「お兄ちゃん、手、繋いでいいですか?」
そっと手を重ね訊ねてくる茜。
「あぁ、いいぞ」
俺はそう返し、茜の手を握った。
◇妹◇
まぁ、映画は面白かったと思う。
だが、茜の手の感触に意識が持っていかれてて、あまり内容が入ってきてなかった。
スベスベしてて、プニプニしてて、それに仄かに暖かくて……茜の手って気持ち良いな。
そんな考えが、映画を見終えた今ですら頭から離れない。
……よしっ、もう大丈夫だ。変に気にする必要はない。
ただいまの時刻は午後三時四十分。やはり映画は長かった。
「お兄ちゃん、次はどこに行きます?」
「そうだなぁ」
確かここのショッピングモールにアイスクリーム屋があったな。
「茜、アイスクリーム食べるか?」
「うんっ♪」
茜はアイスクリームと聞いた途端、目を輝かせ力強く頷いた。
さて、それなら行きますか。
俺は茜の手を握り、モール内を移動し始めた。
俺たちがやって来たのは、三階にあるフードコート。
その一角にあるのが、全国チェーンの某有名アイスクリーム屋だ。
少々お値段は高いが、味は物凄く良いと評判である。
俺はチョコミントを、茜はバニラを頼み、空いていた席に座った。
俺はテーブルにアニメストで買った本を置き、アイスを一口。
うん。やっぱりチョコミントは爽やかで良いな。甘さも控えめで美味しい。
「茜、バニラは美味しいか?」
「はい、美味しいですよ。お兄ちゃんも一口食べます?」
そう言いながら、こちらへ差し出してくる茜。
俺は「ありがとう」と礼を言い、一口食べた。
おぉ、バニラのわりにはさっぱりしてて、妙に甘さも残らないし、これは旨いな。
「どうですか?」
「あぁ、美味しいよ。ほい、お返しのチョコミントだ」
今度は俺が差し出すと、茜は嬉しそうにチョコミントを一口。
そんなに嬉しそうにして、茜はチョコミントが好きなのか。
と考えていると、不意に茜が俺を見つめ、ニヤリと笑った。
「間接キス、ですね♪」
嬉しそうにしてたのはそっちが理由か。
我が妹ながら、なんて残念なんだ。と俺は頭を抱える。
「お兄ちゃん、間接キスですよ? もっと喜んでくださいよ」
そう言い迫ってくる茜の頬を掴み、席に座らせる。
もう今更間接キス程度で慌てる程、俺は初じゃないんだ。まぁ、凉ちゃん辺りに照れながら『間接キス……ですね』とか言われたらグッとくるけどな。
と思い苦笑していると、茜がジト目で俺を睨んでいた。
「ん? どうかしたか、茜」
「お兄ちゃん、今私以外の女の子のこと考えてた?」
どうして楓ちゃんと同じセリフを……っ!
「ほらまた。ねぇお兄ちゃん、今お兄ちゃんがデートしてるのは私なんだよ? 私のことだけ考えて……」
あのときと似たセリフ。
ただ、茜は寂しさからくるものではない。これは茜が昔から持っていた独占欲からきたものだろう。
「ごめん。そうだな、俺は今茜とデートしてるんだよな」
俺は謝罪の意を込めて、茜の頭をゆっくりと撫でた。
すると茜の機嫌は良くなっていき、ついにはだらしない笑みまで浮かべ始めた。
「んぅ~♪ お兄ちゃんのナデナデ気持ち良い」
「そうか。それな、よかったよ」
それから俺たちはアイスクリームを食べ終えると、再び移動し始めた。
◇妹◇
その後俺たちがやって来たのは、二階にあるアクセサリーショップだ。
なんのために来たかって? そりゃ勿論、茜にプレゼントを買うためだ。
ほら、楓ちゃんにネックレスをプレゼントしたことが知られてせがまれたあれ。
と考えていると、茜がジト目で睨んできた。
はいはい、分かったから心読まないでね。
俺は宥めるように、茜の頭を撫でる。
すると茜の機嫌は一気に良くなり、俺の腕に抱き付いてきた。
歩きづらいけど……まぁいっか。
アクセサリーショップにて。
茜には外で待ってもらい、俺は店の中で茜に似合う物を探していた。
やっぱり楓ちゃんと同じでネックレスにするか。……うーん、それだと茜はあんまり喜ばないだろうなぁ。さて、どうしよ。
俺は展示されているアクセサリーを見ながら、それを着けた茜をイメージする。
「──彼女さんへのプレゼントをお探しですか?」
「あ、はい──ってうおわっ!?」
突然背後から現れた店員さんに、俺は驚き素っ頓狂な声を上げた。
な、なんだっ、全然気配を感じなかったぞ!?
「あの、どうかしましたか?」
「あ、いえなんでもありません」
「そうですか。それで、お客様は何をお探しですか?」
ふむ、そうだな、こういうときは店員さんに聞いた方がいいよな。
そう思い、俺は店の外にいる茜を指差す。
「えっと、あいつへのプレゼントなんですけど──」
「まぁっ、すごい可愛らしい彼女さんですねっ!」
可愛いのは同意するが彼女じゃないっ!
咄嗟にそう叫びそうになるのを堪え、俺は心を落ち着かせる。
まぁ、茜は黒髪だが、俺は白髪混じりだからな、そりゃ兄妹に見えないか。
それに彼女の方が都合がいいな。
と自分に言い聞かせていると、茜がプルプルと震えていた。
ん、寒いのか? ……いや、あれはっ。
多分、さっきの会話が聞こえてたんだろうなぁ。……はぁ。
俺は小さくため息を吐いて、店員さんに要望を伝えた。
「──なるほど、ならこれはどうですか?」
そう言い店員さんが見せてきたのは、黒いリングに赤い宝石(のような物)が付いた指輪だった。
……どうしてこうも、茜の色にあった物があるんだろうか。
そんな疑問を抱きながらも、この指輪をはめた茜の姿を想像する。
……うん、似合う。それに茜はすごい喜びそうだ。
「えっと、これにします」
「ありがとうございます。それではレジの方へどうぞ」
俺は店員さんに付いていき、レジで会計を済ませた。
この指輪が、今日一番の出費だったことは内緒にしよう。
◇妹◇
プレゼントを買い終え、俺たちが向かったのは、アニメストとはまた違うアニメショップだ。
本来なら寄る予定はなかったのだが、現在放送されているアニメのイベントをやっていて、急遽寄ることにしたのだ。
「お兄ちゃん、先程から所々で聞こえる〝イメン〟とはなんですか?」
アニメショップ内を巡っていると、突然茜が訊ねてきた。
「あぁ、それは確か先週放送された話で、メインヒロインが言ったモノだ」
確か『えーくんってカッコいいよね! えっと、なんて言うんだっけ? ……イメン?』みたいなセリフだった。
そこまで大丈夫するセリフではないのなが、思い出すとつい「ふっ」と笑ってしまう。
「──なるほど、それで皆さんはネタにしてるんですか」
「そうだな」
俺たちはイベントを流し見して、アニメショップを後にした。
時刻は既に四時過ぎ。
よしそろそろだな。
◇妹◇
俺たちは電車に乗り、羽真宅の最寄りの駅まで戻ってきた。
そして向かったのは、いつもの公園。
もう日が暮れ始めているからか、公園に人影はない。
よし、これなら安心して渡せるな。
「ここの公園で渡してもらえるなんて、なんかロマンチックですね」
俺たちしかいない公園を見渡し、茜は微笑む。
「覚えてますか、お兄ちゃん。昔私がこの公園でお兄ちゃんにプロポーズをしたこと」
「あぁ、勿論覚えてるぞ」
あれは確か、俺が小学六年生、茜が五年生のときだ。
友達と何を話したか知らないが、下校途中いきなりこの公園に引っ張られ、そしてプロポーズされたのだ。
確かあのときのセリフは──
「──『お兄ちゃん、私を一生幸せにしてください』……思い出すと、少し恥ずかしいですね」
頬を朱色に染め、微笑む茜。
あぁ……くっそ可愛い。
プレゼントを渡そうとしているのに、俺はつい茜の可愛さで悶えてしまう。
「そしたらお兄ちゃんは『もちろん、茜は俺が一生幸せにする!』って言ってくれましたね」
「……まぁ、今でもその気持ちは変わってないけどな」
「ふふっ、嬉しいです」
「けど、結婚はできないからな?」
そう言うと、茜は唇を尖らせ膨れっ面になる。
「良い雰囲気なんですから、そんな現実を突き付けないでください」
「ははっ、ごめんごめん」
俺は笑いながら、茜の頭を撫でた。
「んぅ♪ やっぱり、お兄ちゃんに頭撫でてもらうの好きです」
「俺も、茜の頭を撫でるの好きだよ」
「……私のことは、好きですか?」
突然、茜は当たり前のことを訊ねてくる。
俺はそれに応えるよう、茜の体を抱き締めた。
「おっ、お兄ちゃんっ!?」
「ほら、これが答えだ」
そう言うと、茜は「ふふっ」と微笑み、俺の胸に顔を埋める。
「さて、そろそろプレゼントを渡すとするか」
「お兄ちゃんは、私に何をプレゼントしてくれるんでしょうね~♪」
俺は「期待しろよ」と茜に言い、袋の中から四角い小さな箱を取り出す。
その箱を見た途端、茜は顔を真っ赤に染め、口元に手を当てた。
まぁ、見たらこれだけで分かるよな。
「それじゃあ、手を出してもらえますかね」
俺は下手な演技のようにそう言い、片膝を突く。
……あとで土を払っておこう。
「……はいっ」
茜は震えた声で返事をすると、そっと左手を差し出してきた。
いやもう、これは薬指にはめるしかないじゃないか……。まぁいいけどな。
俺は箱を開け指輪を取り出すと、茜の左手の薬指にゆっくりとはめた。
俺は立ち上がり、茜に「どうだ?」と訊ねる。
茜はポロポロと涙を流しながら、ふわりと微笑んだ。
「──すごい、嬉しいです。ありがとうございます、お兄ちゃんっ」
俺は茜の笑顔に見惚れ、つい立ち呆けてしまった。
「お兄ちゃん?」
「あっいや、喜んでもらえたなら良かったよ」
「ふふっ、お兄ちゃんに結婚指輪をもらっちゃいました」
「いや、違うから」
俺はすぐに否定する。
すると茜は、イタズラな笑みを浮かべ、
「そうですよね。これは婚約指輪ですもんね」
「それも違うから。兄妹じゃ結婚できないからな」
そう言うと、茜は唇を尖らせ「そんな現実は知りません」とそっぽを向いた。
「お兄ちゃん、私疲れたので、飲み物がほしいです」
「はぁ、しょうがないな。なにがいいんだ?」
「お兄ちゃんの──」
「却下」
「……お茶で」
「分かった」
茜をベンチに座らせ、俺は公園の端にある自販機まで走った。
◇妹◇
葉雪が自販機に向かったのを確認すると、茜は自らの左手、その小指にはめられている指輪を見つめる。
「ふふっ、お兄ちゃん、私はお兄ちゃんと結婚してみせますからね」
茜は微笑むと、鞄からスマホを取り出し、ある相手にメールを送る。
そしてスマホを仕舞い、ふと空を見上げた。
「この指輪を、本当の婚約指輪にしてみせますよ、お兄ちゃん」
小さい声でそう呟くと、茜はチュと指輪に軽くキスをした。
「……あぁ、お兄ちゃんとキスしたい」
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