43話 夜花ちゃんと放課後デート
展開が早いです。ご了承ください。
夜花ちゃんが俺の妹になり、そしてキスをした日から三日が経った。つまりは金曜日。
週最後の授業だからか、クラスメイトや他クラスの生徒も少しテンションが高い。
かく言う俺も少しテンションが上がっている。
なんせ、今日を乗り越えれば、明日は茜とのデートなのだから。
いやぁ、早く明日にならないかなぁ。
俺はそわそわした気持ちで、午前の授業を熟していった。
昼休み。
再び俺は『旧生徒指導室』に向かっていた。
今回も呼び出したのは茜。つまりなにか企んでいるのだろう。
まぁ、別にある程度のことならいいが。
ふと脳裏に甦るのはあの天国で地獄のようなゲーム。流石にあれをもう一度やろうと言われたら即断る。
ただ、そういうことこら家に帰ってからでもいい。多分、呼び出されたってことは夜花ちゃんに関することだろう。
とそうこう考えているうちに部屋の前まで来ていた。
俺はすぐに扉を開けようとして、手を止めた。
また前回みたいなことが起きるかもしれない。
俺は一度深呼吸をして、三度ノックをした。
中から「入れ」とかすみんの声。
俺はゆっくりと扉を開けた。
先に来ていた茜と夜花ちゃん、それと司音ちゃんは横にならんで楽しそうにお弁当を食べていた。
「お兄ちゃん、遅いですよ」
「悪い。少し考え事しててな」
そう返すと、茜は少し間を空けニヤリと笑った。
「あー、そういうことですかぁ。お兄ちゃんも変態さんですねぇ」
ニヤニヤしながら、一人納得する茜。
いや、多分考えていることは外れてる気がする。
「まぁ、確かに夜花ちゃんの胸は大きいですから? 火曜日のことが忘れられないんですよねぇ?」
と笑う茜。そして自分の胸を見てショックを受ける。
なにやってんだこいつ。
茜のセリフに夜花ちゃんは顔を真っ赤に染め、「そうなんですか? 先輩」と潤んだ瞳で見つめながら訊ねてくる。
「いやいや、違うから。茜の妄想だから」
「そう、なんですか……」
何故か夜花ちゃんは落ち込んだ。
なんで?
とくだらない会話を終え、俺は茜たちに対面して座り、弁当を食べ始めた。
全員が弁当を食べ終わり、少し寛いでいた頃。
突然、茜が口を開いた。
「お兄ちゃん、今日の放課後は夜花ちゃんとデートしてください」
「へ?」
本当に突然なことに、俺は思わず素っ頓狂な声を上げた。
「ダメ、ですか……?」
続けて夜花ちゃんが震えた声で訊ねてくる。
「いや、全然大丈夫だけど、いきなりどうしたんだ?」
「それはですね。夜花ちゃんもお兄ちゃんの妹になったわけじゃないですか」
少しおかしいが、俺は頷く。
「で、まず最初にイチャイチャするとしたらデートでしょう?」
「ごめん、よく分かんない」
俺は茜と楓ちゃん以外とはデートしたことない。だから妹になったからデートはよく分かんない。
それを伝えると茜は、
「それは、実妹&義妹は家でいつでもイチャイチャできますし、司音ちゃんも魅音ちゃんも、霞さんもイチャイチャしたことあるじゃないですか」
「うっ、まぁそうだな」
あのゲームでいちゃいちゃしました、はい。
「なので、今いる妹とはデートしなくてもいいんですよ」
なる、ほど? それでいいのか分からんが、まぁ茜が言うんだからいいんだろう。
「分かった。それじゃあ夜花ちゃん、HR終わったら迎えに行くから、教室で待ってて」
「は、はいっ、分かりまひたっ。…………うぅ」
舌を噛んで痛さと羞恥に悶える夜花ちゃん。
うん、可愛い。
茜も司音ちゃんも、かすみんも夜花ちゃんの姿を見てほっこりしている。
うーん、夜花ちゃんは癒し系の才能があるな。
そうしていると、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
◇妹◇
午後の授業も難なく熟し、HRも終わってやってきました放課後。
翼と奏と少し会話をして、俺は教室を出た。
──ところで俺は思い出した。
俺、夜花ちゃんの教室知らねぇや。
何故あのとき聞いてなかったんだ。とため息を吐いていると、ピロリン♪ と着信音が鳴った。
スマホを取り出し確認すると、送信者は茜。内容は『夜花ちゃんは一年一組ですよ』と。
ナイスだ茜。帰ったら思う存分甘やかしてあげよう。
そう思いながら、俺は一年一組の教室に向かった。
一年一組の教室に着いた俺は、こっそりと中の様子を確認する。
夜花ちゃんはいじめがなくなったと言っているが、果たして本当なのか……
まぁ、結果から言うと、心配する必要はなかった。
夜花ちゃんは女子と楽しく会話をしており、とても楽しそうだ。
そして男子。数人はチラチラと夜花ちゃんのことを見て、頬を染めている。止めろ、男子がそれしても気持ち悪いだけだから。
中になジッと見つめている者までおり、もはや夜花ちゃんはクラスの人気者になっている。
俺は安心して、夜花ちゃんの名前を呼んだ。
「夜花ちゃん!」
俺が呼ぶと、夜花ちゃんは勢いよく振り向き、目を輝かせた。
その様子を見て、女子は茶化し、男子は俺に嫉妬と憎悪の籠った視線を向けてくる。
いやぁ、向こうもそうだったけど、まさかこっちでもそうなるとは。はっはっは。
夜花ちゃんは話していた女子に手を振り、こちらにやって来た。
「それじゃあ行こうか」
「はいっ、楽しませてくださいね、先輩♪」
夜花ちゃんは、茜のような悪戯な笑みを浮かべそう言った。
◇妹◇
学校を出て俺たちが向かったのは、お馴染みの駅前。
さて、デートと言ったが、何をすればいいんだろうな。
そういえば、俺は夜花ちゃんの趣味とか知らないし……よし。
「夜花ちゃん、質問していい?」
「は、はいっ。その、胸のサイズは──」
「いや違う、そうじゃないから。それに茜から聞いて知ってる」
夜花ちゃんが頬を赤らめながら言おうとしたことを、俺はすぐに遮る。
なんてモンを言おうとしてんだ。
「? ならなんですか?」
きょとんとした顔で訊ねてくる夜花ちゃん。
「夜花ちゃんの趣味ってなに?」
「趣味、ですか……」
夜花ちゃんは顎に手を当て唸りながら考える。
「……走ることですかね。毎朝先輩と走ってるうちに好きになっちゃいましたから」
「そ、そうか」
この場合の返し方を誰か教えてくれ。
俺はそう切実に思った。
「他には? デートでしたいこととか」
「デートでしたいこと。うーん……──はっ」
夜花ちゃんは考えている途中で、視線をある方向へ向け固まった。
俺は夜花ちゃんの見ている方向へ目を向け──吹いた。
夜花ちゃんが見ていたのはホテル。しかも普通のビジネスホテルではない、ラブホテル、通称ラブホと言うものだ。
いやぁ、なに見てんでしょうね、この後輩は。
俺は堪らずため息を吐いた。
「あっ、いや別に行きたいわけじゃないですよっ!? ただ偶然、ぐぅぅうううっぜんっ、目に入っただけですからね!?」
「そんなに慌てなくてもいいから。それでどこか行きたいところある?」
そう訊ねると、夜花ちゃんはもう一度ラブホを見てこら「げ、ゲームセンターに行きましょうっ」と言った。
俺は頷き、夜花ちゃんと手を繋いでゲーセンへ向かった。
それから俺たちはゲーセンでUFOキャッチャーやプリクラ、対戦ゲームで遊んだ。
驚くことに、夜花ちゃんは対戦ゲームが上手く、何度も負けそうになった。そこはまぁ、兄としての威厳で勝ったのだが。
ゲーセンの次は屋台のクレープ屋で休憩していた。
互いに食べさせあって、夜花ちゃんが「間接キス、ですね……」と呟いて顔を真っ赤にさせたり、胸元に落ちたクリームを「舐めてくださいっ」と言って顔を真っ赤に染め──っと、とても可愛かった。
それから茜色の空はどんどん暗くなっていき、夜花ちゃんとのデートは幕を閉じた。
「先輩、今日は楽しかったです」
「それはよかった。俺も楽しかったし」
意外にゲーマーだったり、実は大胆だったりと、今日のデートでは夜花ちゃんの色んな一面を見れて、本当に楽しかった。
「……その、またデートしてくれますか?」
少し控えめに、でもハッキリとした口調で訊ねてくる。
「おう、勿論」
「っ! ありがとうございますっ! それじゃあおやすみなさいっ」
夜花ちゃんは頬を朱色に染め、嬉しそうに微笑んでマンションへ消えていった。
俺は少しだけマンションを眺め、そして家に帰った。
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