42話 新妹の夜花ちゃん / ファーストキスともう一つ
最近伸びが良くてにやけてる吉乃です。
夜花ちゃんのバストサイズがE→Fに変更です。
翌朝。
時刻は午前五時。俺は公園で黒藤さん改め夜花ちゃんを待っていた。
俺は夜花ちゃんを待つなか、ベンチに座り昨日のことを思い返していた。
夜花ちゃんのいじめが解決して、放課後に夜花ちゃんに告白されて……断って。走っていった夜花ちゃんを追い掛けて、抱き締めて……ホントにいろいろあったな。
俺はふと笑みを浮かべ、
「──先輩、なににやけてるんですか?」
「うわぁぁぁあああああっ!?」
突然、夜花ちゃんに声を掛けられ、俺は驚き叫んだ。
俺の叫び声に夜花ちゃんは驚き、ビクリと肩を跳ねた。
「せ、先輩、いきなり大きな声出さないでくださいよ」
「ごめん、夜花ちゃんが突然出てきてびっくりして」
そう言うと、夜花ちゃんは「まぁいいですけど」と頬を膨らませる。
こう見ると、本当に明るくなったと思う。表情も豊かになったし、初めの頃とは段違いだ。
俺がうんうんと頷いていると、夜花ちゃんはこてっと首を傾げる。
「あ、あの、どこか変ですか?」
「ん? あぁ違うよ。夜花ちゃん変わったなって思ってね。勿論、良い意味で」
「あ、ありがとうございます」
夜花ちゃんは頬を赤らめ俯く。その顔はとても嬉しそうだった。
「よし、それじゃあ走ろっか」
「はいっ」
◇妹◇
ランニングが終わり、いつものようにマンションまで夜花ちゃんを送ってから、俺は小走りであの豪華な家に帰った。
部屋に入ると、着替えをタンスから取り出し、そのまま風呂に向かった。
脱衣所で汗を吸った衣類を脱ぎ、風呂場に入る。
シャワーで汗を流し、髪から体と念入りに洗い、風呂場を出た。
これまでに掛かった時間は凡そ十分足らず。
よし、これならまだ朝食を作れる。
持ってきていた着替えを着て、俺は自室に戻った。
制服を着て、鞄片手に俺はリビングに向かった。
まだ誰も来ておらず、俺はソファーに鞄を投げ台所に立つ。
そして久しぶり朝食を作り始めた。
ここ最近は夜花ちゃんと走ってる間に楓ちゃんが作り始めてたからな、今日は先に来れてよかった。
朝食を作り始め少し経つと、リビングに楓ちゃんがやって来た。
「おはようございます、葉雪にぃさん」
「おはよう、楓ちゃん」
挨拶を交わし、楓ちゃんは俺の隣に立つ。
「今日は早かったですね」
「あぁ。最近は楓ちゃんにやらせてばっかりだったからね」
「……もっと私を頼ってくれてもいいんですよ?」
楓ちゃんは苦笑しつつ、不満げな口調でそう言う。
「気持ちだけありがたく受け取っておくよ。といっても、一緒に作ってるんだけどね」
「そうですね」
朝食、そして弁当を作り終える頃にはリビングに全員が集まっており、席に座ると共に合掌をして、皆一緒に朝食を摂り始めた。
◇妹◇
学校に着き、俺はいつも通り翼と奏と雑談をしながら、HRまでの時間を潰していた。
体育祭も終わり、そして部活の大会が近付いてきているらしく、二人──特に翼には疲れが見て取れた。
そのことを口にすると、翼に「葉雪はよくわからないな」と驚きながら言われた。
そして時間は過ぎていき、昼休み。
俺は茜から呼ばれて『旧生徒指導室』に向かっていた。
いつも呼び出しがあるならかすみんがしてくるんだけどな。
と俺は疑問を持ちながらも、ゆっくりと階段を降りていく。
教室を出てから五分程。
『旧生徒指導室』に着いた俺は、ノックをせずに扉を開けた。
だが、それが問題だった。
馴れているからとは言え、やはりノックは大事だと思う。
「──い、いやぁ、ごめん」
俺はそう言うと、静かに扉を閉めた。
少し遅れ、中から聞こえてくるのは夜花ちゃんの叫び声。
俺が何を見たか、言うべきか言わないべきか。
と考えていると、中から「もう大丈夫です」と夜花ちゃんの震えた声が聞こえてきた。
俺は一応ノックと声を掛け、扉を開けた。
先程の光景とは打って変わって、茜、司音ちゃん、夜花ちゃん、かすみんは平然と椅子に座っていた。
いや、一番の被害者である夜花ちゃんは、耳まで真っ赤にして俯いているけど。
「それで、夜花ちゃんはシャツをはだけさせて何をしてたんだ?」
俺は純粋な疑問から訊ねると、夜花ちゃんは「はうっ!?」と声を上げ、額を机に叩き付けた。
結構な音が鳴り、夜花ちゃんは額を押さえ唸り出す。
「えっとですね、夜花さんの胸の大きさを測ってたんです」
俺の質問に答えたのは、夜花ちゃんの胸にメジャーを当てていた茜だ。
「うん、まぁなんとなくは分かってたけど」
そりゃ胸にメジャー当ててたら、そのくらいは想像できる。
俺が聞きたいのはそうじゃないんだ。
「えっと、どうして夜花ちゃんの胸を測ってたんだ?」
「気になったからです」
「は?」
「気になったからです」
さも当たり前のように二度答える茜。
「いやぁ、実際どのくらい大きいかきになったんですよ~」
いつもの口調で茜は続ける。
「そ、そうか。……いや、ここでやるなよ。誰かに見られたらどうするんだ。ってか俺は見たけど」
そう言うと、夜花ちゃんは自らの胸を抱き締める。
「うぅぅぅっ、先輩に見られたぁ。これは責任を取ってもらうしか……」
「だ、大丈夫! ブラは見えたけど生は見れてないから!」
「……お兄ちゃん、その言い方はどうかと思いますよ」
「そ、そうだな、ごめん」
俺は素直に謝る。
夜花ちゃんは驚いて「だ、大丈夫ですから!」と返してくれる。
夜花ちゃん、優しい。
「それでですね、なんと夜花さんはGカップもありました」
「あああ、茜ちゃんんんっ!?」
突然の茜の申告に、夜花ちゃんは顔を真っ赤に染める。
まじか。確かに楓ちゃんより大きいとは思ったが、そんなに大きかったのか。
「せ、先輩! 今のは忘れてください! なんでうんうんって頷いてるんですか!」
「あぁいや、なんでもないよ」
そう返すと、夜花ちゃんは「ならいいですけど」と言う。
「それで茜、どうしてここに呼んだんだ?」
俺は最初っから疑問に思っていたことを訊ねる。
「あぁ、それはですね──」
「私の口から言います」
茜の言葉を遮り、夜花ちゃんは真面目な表情で俺を見つめる。
「あの、私今日から先輩の妹になりました。改めて宜しくお願いします!」
「うん、宜し──……ん? 待って、今なんて言った?」
「えっ、あの、改めて宜しくお願いします……?」
「違うそこじゃない。夜花ちゃん分かってやってるでしょ」
そう言うと、夜花ちゃんは悪戯な笑みを浮かべる。
「もう、少しはノってくれてもいいじゃないですか」
俺はそれをスルーして「はい、もう一回」と言う。
「えっと、先輩の妹になりました」
「……………………………………………………え?」
夜花ちゃんが、俺の妹? もうわけ分かんない……
俺が頭を抱えると、茜がクスッと笑った。
「大丈夫ですよお兄ちゃん、ほら、霞さんも司音ちゃんも魅音ちゃんもお兄ちゃんの妹じゃないですか」
あっけらかんと言う茜に、俺はジト目を向ける。
すると茜は「ああっ、その目すっごくイイです♪」と恍惚とした表情で言い、自らの体を抱き締めた。
「……変態」
俺がぼそっと呟くと、何故か茜は嬉しそうに「えへへ」と笑う。
これはやばい。一度病院に連れていった方がいいんじゃないか。
「……それじゃあ、夜花ちゃんも司音ちゃんたちと同じってことでいいんだな?」
「はい、大丈夫ですよ。さぁ、これからもっとイチャイチャしましょう!」
「しねぇよ!?」
俺が大きい声で拒否すると、夜花ちゃんが驚いてビクッと肩を跳ねる。
「イチャイチャ、してくれないんですか……?」
……どうやら、声の方ではなかったようだ。
「そ、そりゃ夜花ちゃんは後輩だし、いちゃいちゃするのは……」
「なに言ってるんですか、お兄ちゃん先輩は私と魅音にいろいろなことしてるじゃないですか」
そこで突如口を開く司音ちゃん。
確かにそうだけどっ!
俺はどうしようかと考え、頭を抱える。
「……そう、ですよね。やっぱり、私なんか──」
「あーもう分かったから! 夜花ちゃんはネガティブにならない!」
気を付けよう。この子まだ精神が不安定すぎる。
「……私と、イチャイチャしてくれますか?」
「お、おう。あまり過剰なことじゃなかったらな」
そう言うと、夜花ちゃんは少し考える素振りを見せる。
「それじゃあ……キスはどうですか?」
夜花ちゃんは青く輝く瞳を潤ませ、上目遣いで聞いてくる。
うっ……その仕草は卑怯だろっ。
つい頷いてしまいそうになるのを耐え、茜と司音ちゃんに目を向ける。
茜は『さぁ早く!』と、司音ちゃんは『私ともしたんですから、してあげますよね?』と視線が語っていた。
これは、するしかないのか……
俺は意を決して、夜花ちゃんに近付く。
「せっ、先輩……っ」
「えっとそれじゃあ──」
そして俺は、夜花ちゃんの唇に優しくキスをした。
「──んっ」
唇を離すと、夜花ちゃんの口から息が漏れる。
頬は紅潮しており、青い瞳もとても潤んでいる。
どことなく、発情したときの茜に似ているな。そう思った。
沈黙に身を任せていると、不意に夜花ちゃんが立ち上がり、
「私のファーストキス、先輩に奪われちゃいました♪」
「──っ!」
夜花ちゃんは突然抱き付いてきて──そして唇を重ねてきた。
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