36話 茜と黒藤さん / 一緒にお眠り
あわわっ、投稿遅れてすいません!
放課後。
やはりと言うべきか、茜から『先に帰っていてください』とメールが来た。
俺は翼と奏と一、二言言葉を交わして教室を後にした。
校舎前で光月と朝日と合流し、俺たちは手を握って家に帰った。
◇妹◇
私は帰りのHRが終わると、すぐに『旧生徒指導室』に向かった。
一年の教室は三階。そこから一階にある『旧生徒指導室』に向かうのは、結構疲れる。
部屋に着き、私はゆっくりと扉を開ける。
「よう」
既に部屋には霞さんが来ており、パイプ椅子に座って読書をしていた。
「霞さんも本読むんですね」
私は霞さんの後ろに回り、内容をチラ見する。
『必見! 好きな男性に甘える百の方法!』
……なんでしょう、すごい残念な気がします。
「ん、茜も読むか?」
「いえ、大丈夫です。私は呼吸をするようにお兄ちゃんに甘えることができますから」
「……そうだな」
と他愛もない雑談をしていると、ガラッと扉が開かれる。
「あ、遅れました」
入ってきたのは黒藤夜花さん。
思ってたんですけど、名前が某ライトノベルのヒロインの名前ですよね。どのラノベかは言いませんけど。
「それでは霞さん、また明日」
そう言うと、霞さんは「あぁ」と返し再び読書を始めた。
もしかしたら、霞さんは毎日こうやって時間を過ごしてるんでしょうか。
そう思うと、少し笑えてきちゃいます。
私は黒藤さんの手を取り、『旧生徒指導室』を後にした。
下駄箱の所で、何故か一年一組の生徒から注目を浴びる。
どうしてでしょうか。……あぁ、そう言えば、黒藤さんは一組でしたね。つまり、この中に黒藤さんをいじめてる人が……
「ひっ」
そうしていると、隣にいる黒藤さんが短い悲鳴を上げる。
嫌な人と出会ったのかと思い、一組の生徒の方へ目を向ける。
が、人は先程とは変わっていない。
私は黒藤さんに目を向ける。
黒藤さんは、私を見て震えていた。
あぁ、もしかして殺気が漏れてましたか? それなら黒藤さんには悪いことをしましたね。
私は黒藤さんに近付き、小声で「大丈夫ですよ」と言う。
黒藤さんは胸に手を当てホッと息を吐く。
それにしても、黒藤さんは胸が大きいですね……。多分、推定D以上でしょうか。楓さんより大きいですからね。まったく、羨ましいです。
ただ、お兄ちゃんに聞いたら『胸なんて関係ない』って答えそうですよね。……ふふっ。
学校を出てから、歩くこと十分程。
何度か来たことのある駅前。
そこにある、一件の立派なマンション。
そこに黒藤さんは住んでいるのだと。
もし私が一人っ子だったら、一人暮らしには少し憧れるところがかります。それに、こんな立派なマンションだと余計に。
まぁ、私はお兄ちゃんさえいればどこででも住めますけどね。
一軒家は勿論、マンションにアパート。都会でも田舎でも。それこそ、無人の秘境でも。
言い方は悪いですが、私はお兄ちゃんさえいればそれでいいんです。
と、そうしている間にエレベーターは十階に着き、私は黒藤さんに付いて廊下を進む。
階の端の方にある部屋。そこが黒藤さんが住んでいる場所だ。
「お邪魔しまーす」
私は黒藤さんに促されるまま、部屋に上がった。
私は鞄をテーブルに置き、すぅぅっと息を吸う。
ん? 何故でしょう、部屋から微かにお兄ちゃんの匂いがするんですが。
「黒藤さん、一つ聞いていいですか?」
「はい、なんですか?」
黒藤さんはコップにお茶を注ぎながら答える。
「お兄ちゃん、この部屋に来たことありますよね?」
「はい、そうですけど。どうかしましたか?」
黒藤さんは「もしかして忘れ物でも?」と訊ねてくる。
「いえ、ただ確認しただけです」
そう言うと、黒藤さんは頭上に疑問符を浮かべ、小首を傾げた。
そうですかそうですか。お兄ちゃんは黒藤さんの部屋に上がってたんですね。……これはお仕置きが必要ですね。
私はいつの間にか、「ふふふふ」と不気味な笑みを浮かべていた。
ハッと気付き、私は黒藤さんを見る。
どうやら、気付いてはいないようだ。
私は静かに胸を撫で下ろす。
……どーせ私は貧乳ですよぉっだ。
◇妹◇
家に帰ってから、そろそろ二時間が経とうとしている。
だが、まだ茜から連絡は来ていない。
俺は早めに宿題を終わらせ、外出用の服を着ていた。
何故かって? そりゃ当然、茜を迎えに行くためだ。
茜のことだ。どうせ『今から帰ります』じゃなくて『迎えに来てください』と言ってくるだろう。
それに、茜は超絶可愛いから、こんな遅い時間に一人で歩いていたらとても危険だ。
それから更に十分が経ったが、まだ茜から連絡は来ない。
することがない俺は、本棚から一冊のラノベを取り出す。
タイトルは『兄と契約して魔法少女になるお話』というものだ。
タイトルだけで気付いた人もいるだろう。
そう、これは以前、月出里と再会した日に買ったラノベの中の一冊だ。
あらからいろいろあって、なかなか読む機会がなかったんだよな。
俺はベッドに横になり、一ページ目を開いた。
半分程読んだところで、スマホからピロンと着信音が鳴った。
俺は今開いているページに栞を挟み、スマホを確認する。
『終わりました。迎えに来てください』
メールには簡潔にそう書かれていた。
俺はポケットにスマホを滑り込ませ、部屋を出た。
家を出て、走ること十五分程。
駅前にあるマンションに着き、俺はエレベーターに乗った。
えっと、確か十階だよな。
俺は〝10〟と書かれたボタンを押し、「ふぅ」と息を吐く。
走ってきたから、少し疲れたな。
俺は壁に寄り掛かり、ぼーっと天井を見上げる。
少ししてエレベーターは止まり、扉が開いた。
階を見ると、十階と書かれていた。
あぁ、もう着いたのか。
俺はエレベーターから降りて、黒藤さんの部屋に向かった。
ピンポーン。
俺は呼び鈴を鳴らし、茜を待つ。
中からトタトタと足音が聞こえ、ガチャッと扉が開かれる。
「よっ。お待たせ茜」
「遅いですよ、お兄ちゃん」
「いや、無茶言うなよ。ここって結構離れてるんだよ」
「ふふっ、冗談です」
茜は口元に手を当て笑う。
が、何故だろう。茜の目は笑っていなかった。
これはあれだ。ヤンデレモードの茜だ。……なんで?
俺は疑問に思いながらも、茜の頭を撫でる。
「んぅっ~♪」
茜は頬を緩ませ、気持ち良さそうに喉を鳴らす。
「あっ、先輩」
そうしていると、中から黒藤さんが姿を現す。
「今日はありがとうございました。茜さんのお陰でいろいろなこと知れました」
そう言い、黒藤さんはペコリと頭を下げた。
茜さん、か。もうそんなに仲良くなったのか。
「それじゃあ、また明日」
「はい、また明日」
黒藤さんはふわりと微笑み、俺たちを送ってくれた。
帰路の途中。
突然、茜が握っていた俺の手をぐいぐいっと引っ張る。
「ん? どうかしたか?」
そう訊ねると、茜はハイライトの消えた瞳で見上げてくる。
「お兄ちゃん、黒藤さんの部屋に行ったよね?」
「うっ。あぁ、そうだが」
確かこのことは茜に話していない。黒藤さんから聞いたのか?
と疑問に思っていると、茜が口を開く。
「最初に部屋に入った時、黒藤さんの匂いに混じってお兄ちゃんの匂いがしたんです」
恐るべし、茜の嗅覚。
いやなんなの? 俺が黒藤さんの部屋に行ったのは昨日の放課後だよ? なんで俺の匂いが分かったんだ。
茜は唇を尖らせ、「まぁいいんですけどね」と言う。
「いや、よくはないですけど。……お兄ちゃん、今日は嫌って言っても甘えさせてもらいますからね?」
「……あまりアレなことはやらないからな?」
「分かってますよ。だから今日は一緒に寝ましょう」
またか。まぁいいけど。
「分かったよ」
俺はそう答え、空いている左手で茜の頭を撫でる。
茜は気持ち良さそうに微笑み、腕に頬擦りをしてくる。
いやぁ、うちの妹すっげぇ可愛いわ。
茜の姿が、まるで甘えてくる子犬のようで、俺は少し悶えた。
◇妹◇
家に帰ると、楓ちゃんが「遅いですよ」と言いながら出迎えてきた。
「もう夕飯作っちゃいましたからね」
「ごめん、明日はちゃんと作るよ」
そう言うと、楓ちゃんは「別に私に全て任せてくれてもいいですけど」と言い、プイッとそっぽを向いた。
楓ちゃん可愛い。
そう思っていると、茜が横腹をツンツンとつついてくる。
茜の方を見ると、茜は頬を膨らませていた。
いやさ、だからなんで俺の心読めるの?
俺は楓ちゃんが戻っていったのを確認すると、茜の耳元で「茜が一番可愛いよ」と囁いた。
茜は耳を押さえ、顔を真っ赤に染める。
やっぱり、茜は突然のことに弱いなぁ。
と笑っていると、茜が頭突きをしてきた。
痛い。
夕食後。妹たちと変わって俺は風呂に入った。
湯船に浸かりながら、俺は天井を見上げ今日のことについて思い返す。
それから数分経ち、俺は風呂から上がった。
部屋に戻ると、ネグリジェ姿の茜がベッドに横になっていた。
一緒に寝るのはまぁいいんだが、ネグリジェはやめていただきたい。
何故なら、茜が纏っているネグリジェは黒基調の薄地で、透けているのだ。
そう、透けているのだ。つまり、茜が身に付けている白い下着と、茜の肌も、全て透けているのだ。
もしかして、強調するためにわざと白の下着にしたのか?
そう思いながら、俺はベッドに腰掛ける。
「お兄ちゃん、早く寝ましょうよぉ」
茜はベッドに膝立ちになり、後ろから抱き付いてくる。
「……甘えなくていいのか?」
「寝ながら甘えます」
俺の問い、茜は「ふふん」と鼻を鳴らしながら答える。
まぁ、いっか。
俺は一度立ち上がり、部屋の電気を消してからベッドに潜った。
茜は正面から抱きついてきて、小声で「頭を撫でてください」と言う。
俺は言われた通り、ゆっくりと茜の頭を撫でる。
「ふふっ♪ こうしていると、お兄ちゃんと二人っきりになった気分です」
「まぁ、部屋には今、俺と茜の二人っきりだけどな」
「そうですけど、そうじゃないんですよ」
茜が何を言っているなか、俺には理解できない。
それから十分以上茜の頭を撫で、そして俺たちは眠りに就いた。
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