閑話 チョコと妹とバレンタイン
遅くなりましたが、バレンタインの閑話です!
チョコのように甘ったるい兄妹のイチャイチャです!
皆、今日二月十四日が何の日か知っているか?
答えはバレンタイン。
もとは男女関係無く、好きな相手にカードや花束、そしてチョコレートを贈り共に一夜を過ごすという日だ。
日本に伝わり、そこにお菓子会社の企みが関わり、女性が好きな男性にチョコレートを贈る日となった。
それと共に、来月三月十四日はホワイトデーと名付けられ、チョコレートを受け取った男性が女性にお返しをする日となった。
近年では、好きでもない異性に贈る義理チョコというものが流行り、そして同性に贈る風習も出てきた。
男子はこの日、チョコが貰えたか貰えなかったかで一喜一憂し、女子は互いに牽制し合う……まぁ、これは俺の偏見かもしれないが。
また余談だが、バレンタインはリア充のイベントであり、非リアのイベントではないと思う人もいるらしい。
全く持って馬鹿馬鹿しい。
◇妹◇
二月十四日。夜。
夕食を食べ終えた俺は、茜たちが風呂から上がってくるのを、自室で小説を読みながら待っていた。
だが、気になることがあり、小説の内容が頭に入ってこなかった。
今年はまだ茜たちからチョコを貰っていないのだ。
去年までのバレンタインを思い返すと、茜たちは夕食前にはチョコを渡してきた。
なのに、だ。今年はまだ誰からも貰っていない。茜や光月、朝日は勿論、楓ちゃんや蓮唯ちゃん、凉ちゃんからも貰っていない。
なんだろう、すごい嫌な予感がする。
去年、正確には羽真家にお世話になり始めた時から、茜が暴走するようになった。
何かある度に誘ってくるし、何もなくても誘ってくる。やべぇ、発情期かよ。
……コホン。とにかく、こう、素直にチョコを渡してこないと言うことは、また何か企んでいるのだろう。
「はぁぁぁぁ……」
俺はつい、堪らずにため息を吐く。
──コンコン。
丁度その時、軽く扉がノックされた。
「はい」
俺は開いていたページに栞を挟むと、ゆっくりと扉を開けた。
そこには、寝間着に着替えた光月と朝日が立っていた。
二人は手にラッピングの施された掌よりも少し大きな箱を持っている。
もしや、チョコを渡しに来たのか?
俺は二人を部屋に入れ、ベッドに座るよう促す。
二人は素直にベッドに座り、上目遣いで俺の顔を見つめる。
「「おにぃ、バレンタインチョコ、あげる~」」
二人は声を揃え、同時にチョコを渡してくる。
「ありがとう。味わって食べるよ」
そう言うと、光月と朝日は互いの顔を見て、コクリと頷く。
何を考えているんだ? と首を傾げると、二人はポケットからおもむろにチョコ(ちっさいやつ)を取り出す。
そして、包みを開きチョコを口に含むと、「むー」と口を近付けてきた。
「……なぁ、何をしようとしてるんだ?」
「「ひょこのくひうふひ」」
……はぁ。やっぱりこうなるのぁ……
俺はため息を呑み込む。
こうなったらやらなきゃダメなんだろうなぁ。……やるしかないんだろうなぁ。
「……分かったよ」
俺はそう言うと、まずは光月と唇を交わす。
口内の温度で半分溶けたチョコは、どろどろしてて、それに少し生暖かった。
唇を離し、そのチョコを飲み込むと、続いて朝日と唇を交わす。
こちらもやはりチョコは溶けていて、それでいて生暖かい。
チョコを飲み込むと、俺は二人に「ありがとな」と礼を言う。
「「ホワイトデー、期待してるね。おにぃ」」
俺は苦笑いを浮かべ、「あぁ」と応える。
「「それじゃあ、おやすみ~」」
そう言い、二人は部屋から出ていった。
あぁ、これは他の皆も来るな。
俺はそう悟り、寝ることを諦めた。
◇妹◇
光月、朝日の次に部屋を訪れてきたのは、凉ちゃんだった。
凉ちゃんは顔を真っ赤にしながら、ラッピングされたチョコを突き出してくる。
「あの、バレンタインのチョコ、です。……貰ってくださいっ」
「ありがとう」
俺は笑顔でチョコを受け取ると、ゆっくりと凉ちゃんの頭を撫でた。
「ふゅぅぅぅぅっ」
凉ちゃんは更に顔を赤く染め俯いてしまった。
が、すぐに顔をガバッと上げると、何故か胸元からチョコ(ちっさいやつ)を取り出した。
……確かに凉ちゃんは茜たちより胸大きいけど。なんでそこに入れてるんだ……
凉ちゃんはチョコを咥えると、背伸びをして顔を近付けてくる。
うん、分かってたさ、こうなることくらい。
「にぃさま……」
凉ちゃんの潤んだ瞳に、俺は倒された。
俺は凉ちゃんの咥えたチョコを反対側から咥え、そして凉ちゃんの唇にキスをした。
「~~~~~っ!」
凉ちゃんは耳まで赤くしながらも、積極的に舌を絡めようとしてくる。
が、俺は素早く唇を離し、チョコを咀嚼する。
「美味しかったよ。ありがとう、凉ちゃん」
「ご、ごちそうさまです……っ」
凉ちゃんはそう言い、急いで部屋から出ていってしまった。
……凉ちゃん、可愛いなぁ。
◇妹◇
「にぃに! バレンタインのチョコあげる!」
部屋に来て早々、蓮唯ちゃんは笑顔でチョコを渡してきた。
「ありがとう、蓮唯ちゃん」
「それとねー、もう一つあるの」
そう言うと、蓮唯ちゃんはポケットからチョコ(以下略)を取り出し、それを口に放り込んだ。
「んー」
そのまま、蓮唯ちゃんはキスを求めてくる。
俺はそれに応じるように、蓮唯ちゃんの唇に、自分の唇を押し付けた。
蓮唯ちゃんは舌を使い、俺の口の中にチョコを押し込んでくる。
俺はチョコを飲み込み、唇を離す。
蓮唯ちゃんは瞳を潤ませ、頬を紅潮させている。
俺は乱暴に頭を撫でると、「おやすみ」と言い蓮唯ちゃんを部屋に帰らせた。
◇妹◇
コンコンと扉がノックされ、俺はゆっくりと扉を開く。
そこには、白いドレスのようなものを纏った楓ちゃんがいた。
「葉雪にぃさん、少しいいですか?」
俺は無言で頷き、楓ちゃんを部屋に招き入れる。
「あの、葉雪にぃさん、これどうぞっ」
楓ちゃんは後ろに隠していたチョコを、俺の胸板に押し付けてくる。
「あ、ありがとう」
俺は礼を言い、チョコを受け取る。
「それでですね、その……」
「あー、うん。何となく分かった」
そう言うと、楓ちゃんは顔を真っ赤に染め、モジモジとする。
「そ、それじゃあいきますよ……?」
「……おう、こい」
楓ちゃんは胸元からチョコを取り出すと、皆と同じように口に含み、キスをしてきた。
もともと胸に仕舞ってあったからか、チョコは既に原形を留めておらず、どろっどろに溶けていた。
チョコを飲み込むと、俺は楓ちゃんとのキスを楽しむ。
あぁ……甘い。
数秒して楓ちゃんは唇を離し、恥ずかしそうに手で顔を隠す。
「あ、ありがとうございました……っ」
「こ、こちらこそ?」
羞恥が限界を越えたのか、楓ちゃんは「お邪魔しましたー!」と叫びながら部屋から出ていった。
◇妹◇
やはりと言うべきか、最後は茜だった。
が、何故かメールで『部屋に取りに来てください』と呼び出しを受け、俺はすぐに茜の部屋に向かった。
コンコン、と軽くノックすると、中から「開けてください」と言われ、俺はゆっくりとドアノブを回し、扉を開ける。
「茜、どうして呼び出し──」
それから先は口にすることができなかった。
何故なら、茜の姿に見惚れた──わけではなく、茜の姿に驚き言葉を失ったからだ。
茜は下着姿になり、自分の体にラッピングテープを巻き、更には溶かしたチョコを胸やお腹に付けていた。
こいつ……またバカしやがって……
もう呆れることしかできなかった。
俺はゆっくりと扉を閉め、茜に近付く。
「おい、なにやってんだ」
「なにって、ただお兄ちゃんにバレンタインのチョコを用意してたんですよ」
「……」
あっけらかんとしている茜にジト目を向けていると、茜はハッとなり「ちゃんと体は洗いましたから、大丈夫ですっ!」と自信気にそう言う。
そこじゃないんだが……まぁいいか。
「それで、俺は何をすればいいんだ?」
そう訊ねると、茜は待ってました! と顔をパァっと輝かせる。
「お兄ちゃん、私の体に付いたチョコを、な め て?」
上目遣いでそう言う茜は、姿も相俟ってとても魅力的に見えた。
俺はため息を吐くと、「……分かったよ」と返す。
「それじゃあ、お願いしますねっ♪」
俺はゆっくりと、茜のお腹に舌を這わせる。
そして、少し固まっているチョコを舐め取った。
「んっ」
俺は聞こえてくる茜の声を遮断し、ただ一心にチョコを舐め取っていく。
一分足らずでお腹に付いたチョコを舐め終わると、一度茜から距離を取る。
……やっぱり。発情してやがる。
茜は頬を紅潮させ、瞳を潤ませ荒く息をしている。
「お兄ちゃん……」
茜は胸を左右から押し、胸を強調させる。
「お兄ちゃん、こっちの方もお願いします……」
俺は間を開け、コクリと頷く。
茜の肩を掴み抱き寄せると、茜の胸に付いたチョコを舐め始める。
「んあっ!」
舌を這わせる度に、茜は可愛らしく喘ぐ。
くっ、静まれ、俺の欲望ッ! 茜は妹、茜は妹、茜は妹……
俺は沸き上がるナニかを必死に抑えながら、チョコを舐める。
これも一分足らずで舐め終わり、俺は茜を見る。
先程以上に興奮した茜は、「お兄ちゃん……」と呟きながら抱き付いてくる。
そしてどこから取り出したか分からないチョコを口に入れると、そのままキスをしてきた。
茜は舌を入れてくると、チョコと共に絡ませてくる。
……甘い。茜の唇、すっごい甘い。
どれくらいの間、俺たちはキスしているのだろうか。
もう時間が分からなくなるまでキスをした俺たちは、体を離すと互いに顔を背ける。
流石に茜もここまでは恥ずかしかったようだ。
「お、お兄ちゃん……今日は、ありがとうございました」
「お、おう。これで満足してもらえたなら良かったよ」
それから俺たちは五分程ぎこちなく会話をし、気持ちを落ち着かせた。
「お兄ちゃん、これ、バレンタインのチョコです」
興奮が収まった茜は、机からラッピングされたチョコを取り、俺に渡してくる。
あぁ、良かった。ちゃんと普通のチョコもあった。
「ありがとう。大切にするよ」
「ちゃんと食べてくださいね」
茜は微笑み、最後に軽くキスをしてきた。
「おっ、おやすみなさい!」
茜は俺を部屋から押し出し、そう言いながら勢いよく扉を閉めた。
チラッと見えた茜の横顔は、リンゴのように真っ赤に染まっていた。
「おやすみ、茜」
俺はそれだけ言うと、茜からのチョコ片手に自分の部屋に戻った。
余談だが、これから眠りに就くまで一時間もの時間を有した。
この作品を読んで頂きありがとうございます!
誤字脱字、改善点等がございましたら容赦なく教えてください!
この作品を読んで頂いた読者様に最大の感謝を




