頼りになるのは
家に帰って、ベッドにダイブして布団に潜り込んだ。
なんだってこんな目に合うのか頭を抱えるうちにウトウトしてしまったらしく、
「アリア、アリア〜。」
優しく名前を呼ばれ、ママに起こされたときはすっかり陽が落ちていた。
「よく寝てたね、今日のことで疲れたみたいね。」
そう苦笑されながら言われ、居間に行こうとうながされた。
どうやら、私が寝てる間に学校側からママに連絡が入ったようで、ママから連絡を受けたパパも兄さん達も、今日の出来事を私から話を聞きたいと思ったそう。
居間には、パパもお兄ちゃんたちもいてお茶を飲んでいた。
「アリアと母さんにもお茶を入れよう。」
二人がけのソファにママと座ると、前にいたダリオ兄さんがお茶とお菓子を勧めてくれる。
「兄さんありがとう。お茶美味しい。」
のどが乾いてたのか、一口飲むととまらなくてあっという間に飲み干してしまった。そんな私に優しく笑ってダリオ兄さんはおかわりをカップに注いでくれた。
お茶を飲んで落ち着いた私は、先生に頼まれて花をつんでいたとこから話を始め、エリカがケガをしたこと、竜が抱きついてきたこと、自分が竜の半身と言われてびっくりして、抱いてたソレをギリス様に渡してうちに帰ってきたことを話した。
「パパ、竜の半身ってどういうこと?半身ってふつうに考えたら運命の人ってことは、私の結婚相手ってアレなの?」
考えたらドツボだ。せめて結婚相手は人間がいい。
べしょべしょしながらいう私に、パパはバルト兄さんを見て頷いた。
それを受けた兄さんは、
「あのねアリア、まず半身についての説明だけど先生がしてくれたもので間違いはないと思うの。でもねぇ、問題はそこじゃないのよ。」
問題はそこじゃないって?
わけが分からない私に、バルト兄さんは真剣な顔で話を続けた。
「竜って稀少性が高いのよねぇ。長命な分出産率低いから、使役獣にするって本当にないことなのよ。だから、その契約っていうのは計り知れない価値があるの。」
説明をする兄さんは、私の知らない兄さんの顔になってる。
「私も、竜を使役したことがあるから分かるけど、一度その力を知ったらなかなか手放せないし、奪われたら相手を倒してでも奪い返したいと思うわね。」
いま、自分も使ったってぽろりとこぼしましたけど。
それ、兄さんからは初めて聞くんだけど。(知ってたけど〜!)
「もしかしたら、あなた半身の竜ごとギリス様にお使えしないといけないかも。」
それを聞いた私は、ギャ〜っと声を上げ隣のママにしがみついた。
「お前が使役獣については詳しいから任せて、というから任せたのに!」
「なんで泣かせるんだ、アリアのせいじゃないだろう。」
パパとダリオ兄さんが慌てたように言う声が聞こえてくるけど、
「アッ、アリアごめんね〜、なんとかするから。私の竜にも相談してみるし!」
バルト兄さんの焦った声が聞こえてくるけど。
「!」
わたしはママにしがみついてパニック状態。
ママはぎゅっと私を抱きしめて、落ち着かせるように背中をさすってくれた。そして、
「だいじょうぶよ、アリア。カンバル公国には貸しがあるから。いざとなったら、パパが竜の一匹二匹の対価に3年位働きにいけばお釣りがくるよ。」
ママ、なんか笑顔が黒くて怖いよ。
っていうか、パパそんな高給取りなの?イヤ、それより、パパ魔道省から出してもらえるの?今だって、魔法陣使って王都まで通勤してるのに。
ママの言葉にパパは固まり、ダリオ兄さんは青ざめた。バルト兄さんはオロオロしている。
そんな家族の膠着状態を払ったのは、ダリオ兄さんの一言だった。
「とりあえず夕食にしようよ、母さん。腹が減ってたら、ろくな考えもできないし悪い事ばかり思いつく。」
ダリオ兄さん、今一番輝いてる。後光がさしてるよ。
私はダリオ兄さんに促され、顔を洗ってから晩御飯をみんなで食べた。
晩御飯を食べたら、気持ち良くなって眠たくなったので寝てしまう前に、ママからお風呂に入らされた。
お風呂に入ったらますますグデグデになってしまい、ベッドに入ってバタンキュー。
いろいろありすぎて、どうしようもないときは寝るのが一番なのかもしれない。