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ヒロイン降ります  作者: ベルル
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そんなことされても

不定期更新ですみません。

 療養室で制服を脱いで、左肩を出して療養室の管理者のエメリ先生に見てもらった頃には、エリカは相当痛かったのだと思う。歯を食いしばって肩を出していたから。

 それを見た先生は眉をひそめ、

「これは酷い打ち身ね。とりあえずヒールしときましょう。」

 エリカを丸椅子に座らせてから、左肩に手をかざしゆっくり呪文を唱える。淡い光が先生の手から出て消えると、大きなひどい青あざは薄くなっていた。

「楽になりました。ありがとうございます。」

 エリカは、笑顔でお礼を言ったので私も先生にペコリと頭を下げた。



「さて、何でこんなことになったのか話してね。ライトさんのお家にも連絡しないといけないから。」

 治療の後の先生の言葉に、エリカは困ったような様子で制服を直しながら、

「私はよく分からないんです。」

そう言って私を見る。 


 う〜ん、私だってよく分かってないんだけど……。

 私はそう思いながらも話し始めた。


「私達、魔法薬のタキ先生から頼まれて裏の花壇でお花をつんでいたんです。そうしたら、声がして何か飛んできて、エリカに当たったんです。そのせいでエリカ花壇に倒れて。」

 ここまで合ってるよねってエリカに視線で確認したら、うんうんと頷いてくれるのでひとまず安心。

「そのあと、男の子が3人来て何か言ってたけど、よく分からないしエリカを早くここに連れてきたかったから……。」

「そう、びっくりしたわね。その男の子達って誰か分かる?」


 先生の質問に、私とエリカはお互い困ったように顔を見合わせた。


 私もエリカも誰かは分かるよね。

 だって、彼らある意味有名人だもん。 

 

 さて、どう話そうかと首をかしげたときだった。


 "ゴンゴン"

「すみません、僕達がやりました。」

乱暴なノックのあと、ドアの外から声がした。

 この人達、仲がいいのかいつも一緒にいるのよね。カンバル公国のギリス第二皇太子、ダレーン国のウナス第三皇太子、天才棋士ナラタ、これが彼らの名前。

 

 3人は、その才能と優れた容姿から学園でも目立っているし、あと3年もすれば学年、いや学園カーストの上位にはいるだろう。

 今だって色ごとに早く、自信のある子は、お近付きになろうと積極的に行動している。


 彼らは、先生の許可の声に療養室へ姿を見せた。


「あなた達だったのね。いったい何をライトさんにしたの?ひどい打撲痕だったのよ。」

 3人に事情を聞く先生にナラタがグイッと先程の緑のボールを見せた。


「ギリスがソラに命令したら、言うこと聞かなくて飛んでいってしまって、彼女に当たってしまったみたいなんです。」

 ウナス第三皇太子が説明すると

「なんてこと!ちゃんと主従契約されているはずの使役獣しか学園内には持ち込んではいけないはずですよ。」

 先生はあ然として緑のボールをみた。


 それは、ナラタの手の上でピクリとも動かない。

 でも、先生は使役獣って言っている。

「あの、なんですか、ソレ。」

 ついつい好奇心で聞いてしまうと、

「ギリスの使役獣の竜だよ。まだ赤ちゃんだけど。」

 なぜか嬉しそうに、ナラタが私にソレを近づけてくる。

 イヤ、ただの楕円のボールにしか見えないけど、と思っているとそれはいきなり私の胸に飛び込んできた。

「ひぇ〜っ!」

 乙女ともいえない声が出ちゃったよ。

 無意識に抱きとめたけど、抱きとめたけどね!

「ギュ、ギュア」

 な、なんか言ってる。言いながらグイグイ何か押し付けてきますけど、なんですか、どうすればいいんだよぅ。



 私が竜から猛烈アタックを受けている間、ギリス第二皇太子はこちらの騒ぎなどどこ吹く風といった体で、

「ミエル ライト外交官の第一子のエリカ ライトだな。私の不始末で怪我をさせてしまい、申し訳なかった。お父上には私から事情を話してお詫びをしたいので、今から貴女を送らさせてもらえるだろうか。」

 右膝をつき、立てた左膝の上に両手を置き、丸椅子に座っているエリカを見上げながら話している。

 エリカは自国の皇太子からそのようにされて、身の置き場がないのか困ったように眉を寄せて

「わかりました。」

と、答えていた。


 その様子を見ながらその瞬間に、

(皇太子の使役獣なんだから、コレなんとかして!)

空気を読んで、そう言わなかった私は偉いと思う。


 でも、なんか竜を抱いてるところ湿っぽくなってきてるし(涙か涎か……。)ナラタに渡そうとしても離れないし……。ウナス第三皇太子(ウナス様でいいか)は羨ましげに見てるだけで手も出さないし、いい加減なんとかしてほしいと思ったところでギリス第二皇太子(ギリス様でいいや)が

「私の使役獣の面倒を見てくれて感謝する。」

と私の胸にくっついているソレを剥がしにかかった。


「イタ、痛たっ、ちょっ、爪。」

「ギャゥ〜、ギャギャキ〜ィ!」

 竜は、私の服と身体に爪をたてて離れまいと頑張り、ギリス様はなんとかして剥がそうと力任せに引っ張る。

「もう、やめて〜!」

 私も竜も何だか、つらすぎる。


「お前、ソラに何をした?」

 ギリス様が怖い顔で聞くので、

「なっ、何もしてないでしょ。してないよね、エリカ。」

 エリカに同意を求めると、エリカも頷いてくれる。


「お前のご主人様は、私じゃないんだよ〜。お帰り。」

 竜へ優しく言い聞かせても、竜はイヤイヤと涙(よかった、涎じゃなかったんだ。)を流し離れない。


 混乱状態の私達に天の声が掛かる。


「とりあえず、使役獣についての判断は私では無理だから、幻獣科のタラ先生を呼びました。エリカさんはおうちの人に連絡をしたので迎えが来るそうよ。ギリス君はその時に話をしてちょうだい。」


 エメリ先生、ありがとうございます。

 

 


 


 



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