初めてのお友達
書くの遅くてすみません。
モキロスに入学して一ヶ月が過ぎた。
少しずつ周りの環境にも慣れ、なんとこの人生初のお昼ごはんを一緒に食べる友達もできた。
初めての友達は、エリカ ライトという肩までの濃緑の髪と少しキツイ感じのグリーンの眼が印象的な女の子。
背が高く所作がきれいなせいかきれいというより格好良さを感じる。
仲良くなったきっかけは学校内の案内。段差に躓いた私をかばってくれ、私が感謝の気持ちを言っていた舌の音が乾かぬうちに、今度は彼女が躓いて私がかばったのだ。
「実は私、よく転ぶのです。」
真面目な表情でいう彼女が可愛くて、
「私も、おんなじだよ〜。」
と、あまり人に知られたくはないドジっ子特性を暴露してから、お互いに自分の失敗を話して笑いあった。
エリカ、黙ってればキリッとしてしっかり者に見えるから、実態とのギャップに萌えるよ。
親しくなってから知ったのだが、エリカは非常にモテ体質(自覚なし、特に女の子から)だった。
気品があり、どこか近寄りがたい雰囲気を纏っているにもかかわらず、誰にでも親切で、押し付けがましくなく差し伸べてくれる救いの手。その上、適切な距離感を保ちながら、相手を拒否せず受け入れ話を聞いてくれる。なんか思い当たるなぁ、って考えたら○塚の男役さんだった。
女の子の理想だもん、それは好かれるなぁと思っていたら、エリカは取り巻きはいても(お互いに牽制しすぎて)仲の良い友達というものがいなかったらしい。
「お友達になってくれる?」
勇気を出して私がいうと、華が開いたような笑顔で
「こちらこそ、喜んで。」
ぎゅっと両手を握ってくれた。
さて、この学校、驚いたことは通う子女の国籍の多様性と文化交流だった。
ザッカート王国、ダレーン国、カンバル公国そして聖グレイド王国の4ヵ国接地面という地域性もあり、学園内は国際交流の場であると同時に国々の社会的マナーを学び、それぞれの国の理解を深める役も担っているようだった。
いや、だってさ、食堂だって毎日その国々のメニューが日替わりで出るし、必須授業で各国の歴史とか文学とか芸術とかやるんだもん。
相互理解をして、お互いに仲良くしましょうって教育だよね。
私の、初めてのお友達(キャッ)のエリカもお父さんカンバル公国の外交官だし、王族のいとことかはとこ、貴族階級とかザラザラいる。反面、階級なしの商人や職業人、技術職のお家もザラザラいるので、建前でも学園内身分不文律でないと毎日、このお方をなんと心得るって声がアチラコチラで聞こえてきそうだ。
ある日の放課後私とエリカは、裏庭で先生に頼まれ大人の手の平サイズの布袋いっぱいそこの花壇の花をつんでいた。魔法薬の準備らしい。
「爽やかな匂いがします。」
すぅっと親指の先の大きさ位のオレンジ色の花を鼻先に近づけてにっこりするエリカ。
「ほんと〜、なんの薬作るのかな?」
私も同じように匂いをかいでみた。甘さのないスッキリした匂いは気分が悪いときにいいのかな?
「先生は、あんまりぎゅうっと詰め込まないでって言ってたけど。」
「もう、そろそろ先生に持ってく?エリカ。」
エリカと私が、8分目位になった袋を覗き込んでいた時だった。
「あぶないっ‼」
大きな声と、こちらに向かって飛んできた何か。
私達は避けようとしたけれど、それはエリカの左肩に当たり、勢いでエリカは花壇に倒れ込んだ。
全てがあまりに早すぎて私は何もできなかった。
「エリカ、エリカだいじょうぶ?」
呆然とした表情のエリカは、身を起こして
「せっかくつんだのに…。」
と中身が三分の一に減ってしまった袋を見てへにゃりと眉を寄せた。
うん、あんなショックでも袋は手放さなかったんだねぇ。
いったい、何が飛んできたのかと辺りを見回すとダークグリーンの丸い大人の拳2個分くらいのボール。
「こんなのが当たったんだよ、療養室行こう。」
それを指を指して促していると、バタバタ足音が聞こえた。
「だいじょうぶか?」
私達に声をかけてきたのは、3人の男の子。
「ソラが当たったみたいです、ギリス。」
細身で背のあるグリーンの髪の子が言えば、
「すまない、機嫌が悪かったのを無理に起こそうとしたから。」
その子からギリスと呼ばれた、銀青色の髪のタレ目がちな子が言う。
「ソラ、どこだよ?」
茶髪のサル顔の子は、キョロキョロ周りを見回しマイペースな様子。
こんな時でもなければ、3人共じっくり鑑賞したいほどキラキラしい人種だ。
彼らは口々に喋るけど、わけが分からない。
エリカと私は顔を見合わせて、ため息をついた。
何なの、付き合ってらんないよ。
私はエリカから袋を受け取り、左手を貸して立つのを助けた。
「とりあえず、行こうよエリカ。」
「ええ、そうね。」
でも、これって何らかのフラグくさいんですけど。