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ヒロイン降ります  作者: ベルル
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学園入学

少し重いかな。

 10才で私が殿下のお茶会に参加したのが、我が家の転機になったのは間違いない。


 

「殿下のお茶会は、もう行きたくないよ。」

 帰宅後、ママにお茶会で何があって、私がどう思ったのか伝えたのだ。もちろん、殿下が腕をがっちり掴んで困ったことも含めて。

 

 いくら私が58才女性の記憶があったとしても、記憶は感情に置き換えれないし、10才のわたしは私を軽んじながら家族(彼らにとってはアイドルか。)の話を聞きたがる彼らに我慢できなかった。



 聞いたママは青ざめた。

 だって、ママは殿下は同じ年頃の子ども達の交流を目的にして自分の娘を誘ってくれたと思っていたからね。


 それが、子ども同士が仲良くなることで、自分達を社交の場に出したいと考えてたなんて、娘をダシに使われたわけだから。


 話を聞いたパパや兄さん達も怖い顔をした。



 それから何があったのか、私は知らない。


 一ヶ月後、我が家は王都から5日離れたツイーフと言う街に引っ越した。

 

 ここは、後ろに険しい山脈が広がっており守りやすく攻めにくい場所として、4ヵ国接地面の国境沿いにしては戦禍に巻き込まれることが少なく、風光明媚な場所も多いため観光地としても人気の街だった。


 街の中心部から少し離れた住宅街に落ち着いて3日目、ママは私を6才から15才くらいまでの子どもが通う、モキロスという学園に連れて行った。


 なんと王都では行けれなかった学校というものに通うことになったのだ。(王都では年齢の低い子女教育は個別性が高すぎて、そういうものがなかったのよ。私も家庭教師についてた。)


 周りを林に囲まれた学園は、大きなレンガ作りの3階建ての本棟を中心に、何棟かの別棟が屋根付きの渡り廊下で繋がれている造り。


 校長室へ向かいながら、ママはぐるりと周りを見回して

「ママも子どものとき通った学校なんだよ。まぁ、9才くらいまでしか通わなかったんだけどね。」

懐かしそうに教えてくれた。


「ママ、大変だった?」

 そう私が聞くと

「そうかもね。」

とさらりと答えてくれたけど私は知っている。


 ママは魔法騎士としての才能が突出してたらしく、3年学んだところでたった独りで、王都の王立学園に送り込まれたのだと、知りたくもないのにあの日のお茶会で聞かされた。

 

 ママが生きているのは、王立学園にいたからということも。


 ツイーフは戦争の被害が少ないだけでないわけじゃない。

 郊外で農業をしていたママの家は、焼き討ちでほとんどの家族と親類縁者をなくしていた。

 もし家族の元にいたらママも生きてはいないだろうとまで言われたよ。


 私は、家族が自分で伝えなければいけない家族の話を、さんざんあの日聞かされた。58才の分別で考えたら、それを私が知っていることを知った家族はきっと辛いだろうから、10才の私はお茶会で聞いた記憶に蓋をした。

 


 校長室へ着いて、校長と挨拶した後、学園の説明と簡単なテストを行い、私が入るクラスとカリキュラムが決まった。


 この学園では、読み書きや簡単な計算から始まり、自身でカリキュラムを組み、定期的な試験を受けることによってより高度な科目や座学演習が受けられるようになっている。


 また、私は家から通うけど遠方の子女を受け入れるために寮もある。

 

 私は、必須科目の一般科目と一般教養に加え魔道法と高度マナー術、防御術を選択した。あのお茶会で、自分に足りない部分を補ういい機会だと考えたからだ。


 58才も女をやっていた記憶があれば、乙女ゲームのヒロインが男性の理想を具現化したものだと分かる。


 今後、もしゲーム展開が始まるのであれば、私の中に何もなければただその流れに流されるだけになるだろう。

 しかし、自分がどういう形になりたいのか、分からずともそれを選択できるような状態であれば話は変わるはず。

 

 だから、今は学び、研鑽を積み自分の中に種を巻き育てるのだ。


 

 私、一足先に学園入学しちゃいました。


 






 

 でも、魔法騎士団のバルト兄さんと、魔導省のダリオ兄さんまでツイーフに引っ越さなくても良かったのでは……。と気がついたのは学園に入学した後だった。



 

お読み頂きありがとうございました。

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