別れの季節
だいぶん遅くなってしまいました。不定期更新で申し訳ありません。楽しんでくださると嬉しいです。
光魔法のテストが終わって、エリカとランチをしたあと家に帰ると、庭でソラが私の背の半分くらいの小山に積んだピカピカ光る石と、一抱えある花の苗の横で伏せて待っていた。
テストを邪魔したのを謝りに来たらしい。
鼻をブヒブヒ言わせながら目を潤ませて、
「ギャッギャッ、クエ~。」
と、反省している様子だったので、一緒にピカピカ光る石を縁石にして、花壇を作った。これなら通訳なくても、一緒に作業できる。
土をさわりながら、私はソラに話す。
「あのね、そんなに守ってやらなきゃって思わなくていいよ。やってほしいときはいうから。あっ、そこもう少し掘って。」
「ギャ。」
「それに、危ないことなんてそうそうしないし、心配しなくていいから。」
「ギャ~…。」
ソラが、土を起こして穴を空けたところに、私が苗を植えていく。
「ソラは、ギリス様ともうすぐ帰るんだよ。今までみたいにうちに来られなくなるけど、黙って遊びに来ちゃダメだよ。ソラがちゃんとできないと、私が心配だよ。」
土いじりは、ゆっくり時間が進むみたいで私もソラも表情がほぐれている。心が穏やかになる。しかし、これだけは譲れないと私はソラに言った。
「それからもう、いろいろ持ってこなくていいから。」
狭くもなく広くもないうちの庭は、今ではソラと作った囲い多めの花壇が庭の80%のスペースを占めてる。
いつの間にか、庭石にも敷石にも使っているそれらは、実は魔石や宝石の原石らしいが、何せ多すぎて処理が追い付かない。
最初のうちは、ちゃんとパパに買ってもらった宝石箱に入れていたけど、ソラの成長と共に持ってくる石は大きくなるし、量は増えるし部屋に起ききれなくなって、庭で使うようになったのだ。
時々、パパやダリオにいさんが自分の研究用にどっさり持っていってくれるからまだ庭は石で埋め尽くされてないけど、それがなかったらと思うと恐ろしいよ。
ほんとにもう、綺麗な石とか珍しい花の苗とか要らないから!
欲しかったらちゃんと言うから!
♢♢♢♢
私のテストが終わって3日後、学校内のカリキュラムが全て終了して終了式の日がやって来た。
9年生で各国に帰る生徒はかなり多い。
終了式が終わって、学園の正面玄関口はごった返していた。
私とエリカはそんな様子を見ながら、これから一週間の休みをどうするか話していた。
終了式後、学園は一週間の休みに入る。モキロスは大型の休みはなく、春の終了式後と秋の収穫時期位に一週間の休みがあるだけ。
その代わり、出席率という考えもなく到達度テストで、ある一定のレベルができていればよいという、サボりやすい環境にあるのだが、ほとんどの生徒の出席率は高かった。
と、いうよりも授業を受けてなおかつ、自宅学習にも取り組まなければテストが難しいからだ。
なので、久々の長期休みは貴重だ。
「エリカは、お休みどうするの?」
私がそう尋ねると、
「カンバルに父と戻って、向こうの様子をいろいろと。あと社交をしてくる予定です。」
にっこり、ちょっぴり悪い笑顔で教えてくれた。
エリカのお父さんは、カンバル公国の外交官なので、普段は聖グレイド王国の首都に住んでいるけど、週末はツイーフに戻るといった生活をしてて、年に何回かカンバル公国に報告に戻るという。今回、報告に戻る時期と長期休みが重なったので、一緒にカンバル公国に向かうとのこと。昨年15才になったので社交デビューをしなければならなかったのに、タイミングが合わなかったらしい。
「カンバルの旬な情報をキャッチしてきます。すごく楽しみですわ。」
瞳をキラキラさせて、私の両手をギュッと握り嬉しそうに言った。
……エリカ人を惹き付けるからなぁ、きっと山盛りのゴシップを仕入れてくるんだろう。
ちなみにモキロスのことで知りたいことがあったら彼女に聞けば、何でも教えてくれると気がついたのは、ソラが半身になって3ヵ月後だったな。
ギリス様との関係を真偽関係なく噂されていた私に、最善の忠告とアドバイス、人間関係とパワーバランスを世話してくれて、本当に助かったけど、同時に背中に冷たいものを感じたのも本当。だって、敵にしたらかなわないよ、この人!親友でよかった~!
そんな思いが駆け巡り、少し遠い眼差しで彼方を見ていると、黙ってしまった私を気遣ったように、
「アリアはどうされるの?お休みといっても、ご家族はお仕事なのでは?よかったら、一緒にカンバルに来ません?」
エリカが優しく誘ってくれた。そんな彼女に対し私は首をふって、
「ううん、休みの間は訓練だよ。バルト兄さんとダリオ兄さんが騎竜と位置転換の魔法と魔方陣を休みとってみっちり見てくれるって。どこかは詳しく知らないけど、山の方に場所借りたって言ってた。」
そう答えた。
キラキラした社交もうらやましいけど、ソラがもっと大きくなったら(ソラの竜種はエメラルドドラゴンというらしく、中型で騎乗ができるタイプで属性は土らしい。)騎乗する事もあるかもしれないということと、家族で、まだ転移ができないのが私だけなので、この休みの期間に兄さんが面倒を見てくれることになったのだ。
「な、なんて贅沢な。聖グレイド王国の第一竜騎士隊隊長と魔導省のトップ5の実力を持つ方からの直々の指導なんて……羨ましすぎます。」
というエリカの呟きは、聞かなかったことにしておこう。
お読み下さりありがとうございます。