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ヒロイン降ります  作者: ベルル
15/33

これ、ゲームのうちですか?

明けましておめでとうございます。

今年もゆっくりですがポチポチと書いていきます。

 ギリス様とエドワルド様は、お付きと一緒にそれぞれの馬車で我が家にやって来た。

 同じ所に向かうことと、エドワルド様を案内しなければならないということで、私はギリス様の馬車に乗せてもらった。

 普段は歩いて通っているので15分位かかるのだが、やっぱり馬車は早くてゆっくり走らせても5分位で家に着いたので、ギリス様と狭い空間を共有する居心地悪さも我慢できたよ。


 


 今日は、試験で早帰りなので家にはまだ誰もいない。

 なので、当然私が鍵をあけ、泥棒避けの魔方陣を解き、4人を応接間に迎え入れる。

 ギリス様とエドワルド様はソファに、お付きの人たちは隅のテーブルに案内した後、

「少々お待ちくださいね。」

 そう言って私は応接間から引き下がり、キッチンでサンドイッチやクッキーなど軽食とお茶を用意して、4人に供した。




「母は、もうすぐ帰って来ます。少しお待ち下さい。」

 お茶を入れながら、二人にそう伝えると、

「何の連絡もせずに来たのだから、気にするな。」

 にこやかに笑いながら、注いだお茶を飲むギリス様と、

「この家には使用人はいないの?自ら、動いているようにみえるけど。」

 少しそわそわした様子で尋ねるエドワルド様。

 私は頷きながらエドワルド様の前にカップを置き、

「はい、男爵位を拝しているとは言いながらも、父も母も元々が平民の出ですので、他人の目があると落ち着かないですし。父と兄がいうには、魔導研究に差し障りがあるというので。ところで、お茶にお砂糖は1杯と1/3でよろしかったですか?」

 そう尋ねた。

 5年前のお茶会で、彼好みの砂糖の量はそうだったからだ。

 エドワルド様は目を丸くして尋ねた私の顔を、見つめた。

「覚えていたんだ?」

「ええ。」

「ありがとう。でも、今は無しで。」

 ややもすると、冷たい感じのする顔立ちが、目に見えてやわらかくほころんだ。


 そうでしたか、じゃあ洗い物が1つ減りました。と心の中で考えお茶を出す。砂糖の量を覚えていたのは、他の子の砂糖の量が半端なかったのと、一杯と1/3なんて中途半端だったから。

「エドワルドはアリアとどのように知己を得たのだ?」

 ギリス様が尋ねてくる。エドワルド様は嬉しそうに、

「5年前のことになるんだけど…。」

 と話はじめた。私はそれを見計らって、応接間を下がる。


 だって、お腹が空いたのだ。お昼まだだし私だって何か食べたいよ。

 キッチンで、手早くパンにハムとチーズを挟み牛乳で流し込む。モグモグしてるとママが帰ってきた。

「アリア、ギリス様とエドワルド様のお付きの方から連絡があったけど、お二人共もうお出でなの?」

「ふん、ひてる。ほうへふまにひる。」

「あら、ちゃんとお茶出しできたのね。エライ!」

 そう言ってママは頭をポンポンする。もう、小さい子じゃないとは思うけど、こうされると何か嬉しくて笑っちゃう。

「では、行きますか!」

 ママはグリグリ肩を回してニヤリと笑った。



♢♢♢

「お待たせして申し訳ありません。」

 ノックの後応接間に入るママの姿を見たエドワルド様は、待ちかねた様子で立ち上がり、

「ミリア、会いたかった。」

 そう言ってママを抱きしめた。

 自分より大きくなった彼の身体にすっぽり入ってしまったママは、すかさずその抱擁をひきはがし、

「エドワルド様、お久しゅうございます。健やかであらせられましたか?」

 半歩下がって距離を取りつつ挨拶をする。

 しかし、彼は空いた距離を埋めるように長い足を一歩大きく前に出し、

「ああ、ミリアも変わらず綺麗だね。いや、以前よりも魅力的になったような気がする。」

 素早くママの両手を握りしめ、自分の胸に抱き込む。

「まあ、年上をからかうものではありませんよ。」

 ママは握られた両手ごと、抱き込まれた胸に一突きし反動で自由を取り戻す。


 ナンだこれ……熱烈に口説いているように見えるのは私だけか?

 ボディタッチを巡る攻防をチラ見しながら、ギリス様の前の2人掛けのソファに座る。


 そういえば、ママとエドワルド様が一緒に居るのを見るのはこれが初めてだな。剣を教えていたときもこんな風だったのだろうか?

 若く美しい少年が、熟女を恋慕うって小説とか舞台ではあるけど、実際はないと思ってたのに、それが自分の母親ってのはなかなかにキツイ。(ママは見た目アラサー、実際はむにゃむにゃ。一番最初に産んだ子が今年27才なんだから推測してほしい。)

 そう思いながら、冷めた目で見てるとママは隙を見て私の横に座り、エドワルド様もギリス様の隣の一人掛けのソファに戻ってきた。


「エドワルドは、とてもミリアを慕っているのだな。」

 にこやかに笑うギリス様に、

「ソウデスネ。」

と枯れた笑顔を返しておいた。




♢♢♢


「では、エドワルド様は今年一年をモキロスで過ごされるのか。私とは入れ違いだな。」

「そうなんだ、残念だな。ではカンバルに戻られるのか。」

「ああ、今後は個人教授でしごかれる。」

 ママとエドワルド様が親交を深めた後、しばし歓談が始まった。ギリス様とエドワルド様は和やかな様子だが、今の会話なんかひっかかる。

「エドワルド様は、王立学園で学ばれていましたね。なぜ一年だけモキロスに?あと、この学年終了の時期に編入は早すぎませんか?」

 ママが不思議そうに聞いた。そうよね、一年だけって変だよねぇ。

「学生交換という制度が今年から始まってね。ツイーフにはウィスカ家がいるから、立候補して選ばれたんだ。モキロスには、新しい場所に慣れるためと、説明を受けるため早めに来たんだよ。」

 なぜかどや顔で喋ってるけど、王太子が立候補したものにダメ出しはできないでしょう。職権乱用じゃん。

「今年は私を含めて3名の交換生だよ。私以外にはロゼリアとキーナンがいる。」

 アリアは覚えているか?と尋ねられて頷いた。


「モキロスにアリアがいてくれて助かったよ。私を含めて他には知り合いがいないからね。」

 何かと頼りにしているよと、にっこり笑顔で言われては、イヤとは言えないじゃん。

「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」

 あんまりお付き合いしたくないけど、という本音を隠して笑顔で答える。

 だって、私、エドワルド様にもロゼリア様にもキーナン様にもあまりいい感情を持てない。あのお茶会は、いまだに私の中でモヤモヤした黒い出来事として未消化だ。

 でもエドワルド様は嬉しそうに

「ありがとう。」

なんて笑顔で返してくる。


 くっ、これじゃあ、私の心が猫の額、いや金魚のおでこみたいじゃないか。


 私の苦しい心のうちなど関係なく、エドワルド様はすっきりした表情でギリス様に向かって、

「そういえばギリスの用はなんだったの?」

 そう尋ねた。

 ギリス様は少し考えて、

「そうだな、しかし私の話は次の機会に回すとしよう。少し個人的なことになるのでな。」

 にこやかに答えた後、立ち上がり、

「では、これで失礼する。ミリア、予定なく尋ねてしまいすまなかった。暖かなもてなしに感謝する。」 

 ママへ挨拶した。するとエドワルド様も、

「では、私も失礼するよ。ミリア、こちらにいるうちにまた稽古をお願いしたいから、考えておいて。」

 ママへ向かって声をかける。



 二人を見送った後、私は思わず聞いてしまった。

「エドワルド様ってママのことどう思ってるの?」

「さぁ?でも、稽古は真面目に受けてたかな。後、"ミリアより強くなったら、今度は自分が護るから"って言ってたけど、ママより強くなるのは、後500年位かかるかな~。」

だって。

 やっぱり、エドワルド様、人妻好きだった。

 



 しかし、交換生でエドワルド様とロゼリア様とキーナン様って、シミュレーション開始ってことなの?

 あと、ママタゲってゲームのうち?



お読みいただきありがとうございました。

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