恋の奴隷
長らくお待たせしてすみません。スマホでもなんとかできることが分かったので、少しずつ書いていきます。またよろしくお願いいたします。
あの家族会議の翌日、私は熱を出し学校を休んだ。
いわゆる知恵熱だ。
自分では対処できない問題に、身体がSOSを出したらしい。
滅多に出さない熱と頭痛にベッドから起き上がれず、グッタリと過ごし、気分は完全に低空飛行だった。
にもかかわらず、問題案件はその日の夕方、向こうからやってきた。
青ざめた表情で竜を抱いて
「このままでは、ソラが死ぬ。アリア嬢と離れてからずっと食事もせずに丸くなっているのだ。」
そう言って、ギリス様は我が家にお付の従者と共にやってきたらしい。
その連絡を受けて迎えたのはママとバルト兄さん。
バルト兄さんは、自分も普段から竜と接点があるからなのか、どうなのか、ぐったりした竜の様子を見てただ事じゃないと思ったようで、
「アリアの気持ちも分かるけど、緊急事態なのよ〜。」
とかなんとか言いながら、私の部屋に連れてきた。
そして、あろうことか私の寝ているベッドに竜を一緒に寝かせようとしたのだが、
「うぅ、兄さん悪いけどやめて。何か生臭い。」
私はとっさにベッドの端により、ソレから距離を取って拒否。
確かに最初に見たときより色つやも悪いし、グッタリしてるっぽい緑のボールは哀れな様子だけど、何だか泥くさいような生臭さ。私だって具合悪いんだよぅ。
気分が悪そうな私の様子に眉をひそめ、竜と私を交互に見、今更ながら私の状態に気がついたバルト兄さんは、なぜかにっこり笑うと、(なんか、頭の上にピッカリしてたよ…。)竜を抱いて部屋を出ていったかと思うと5〜6分後、臭いの無くなったソレを私の枕元に寝かせた。
やっぱり寝かせるのか。
「ごめんねアリア、私にも竜がいるから具合の悪い子を放っとけないのよ。」
そういいながら、私の頭を撫でる。
「ギャ…。」
竜は私に気がついたのか、丸まった姿から身体を伸ばし、じっとこちらを見る。
それは、羨望と恐れの混じった切なげな表情で。
(あぁ、もう!)
私は上掛けの中から手を伸ばし、竜を引き入れるように抱き寄せた。
私だって、調子は良くない。気分だって良くないけど、こんな風にされて放って置けるほど人でなしじゃないので。
「とりあえず、こんなのは今だけだからね。」
胸に爪を立てないようしがみついてくる竜に言い聞かせる。
「ギャ。」
竜の表情は布団の中にいるので見えないが、コクコク首を動かしているのは分かった。こちらが言ってることは分かるみたいだ。
「アリアと離れてから、食事も水分も摂ってないそうよ。」
そう兄さんが言うので
「食べないんなら、このままギリス様の所に戻ってもらうよ。」
あまり良くない気分のまま、少し怖い声で言うとモゾモゾと上掛けから頭を出しアムアムと口を動かしているので、それを見た兄さんは
「何か持ってくるわね。」
笑いながら部屋を出ていった。
その頃、ママとギリス様、ギリス様の従者は今後の話を相談していたが、現状では何も決められないので、とりあえず竜が落ち着くまで、家で預かることで話がついたらしい。
ギリス様は、竜を使役するバルト兄さんと話をしたら安心して納得したらしく、うちに来た時には悲壮感を漂わせた表情だったのがずいぶんリラックスした落ち着いた様子で帰ったそう。
私は微熱でぼうっとする頭と体でその話をママから聞いて、難しい問題もあるので、私達の体調が戻ったらみんなで話をしましょうと言われた。
竜は、私の近くに居ることができて安心したのか、バルト兄さんの用意した果物や野菜を食べると、お腹がいっぱいになったせいかうとうとし始めた。
私のベッドの上で。
仕方ないと、私も横になるとピタリとくっついてくる。
なんかね、なんか硬いし、サリサリした感触だし、思わず枕カバーを外して竜の体に使ってしまった。
いきなりそんなことされた竜は驚いてジタジタしてたけど、
「一緒に寝るなら、裸は嫌だから。今はパジャマないからその袋使わないなら客用ベッド用意するから。」
そう伝えると、頭を袋から出し
「ギャー。」
と言いながら、コクコクあたまを縦にふった。
私が竜に冷たい?
だって、正しい竜の飼い方なんて知らないし。
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