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魔女僕  作者: こそこそ
5/22

5つめ。

―――「あはは、おかしな事もあるものだね、パパ。」

紳士は恥ずかしそうに俯いている。

「あ、いやいや。いくつになっても人生は驚きの連続なんだよ。

いつだって冒険しているんだ。何も恥ずかしがる事はないよ」

うなだれる紳士を必死に慰める白坊主。神というヤツはもっと傲慢で無神経な存在かと思っていたが、

ここに居るヤツは謙虚で神経質だ。

「そ、それに、ほら。キミはねぎらいの言葉一つで少女を救ったんだよ?…え?心にもない事…?」

庶民的というか…イメージ崩壊だな。見た目は殺し屋のような風貌をしているくせに。

「…心は、キミには無くても少女にはあったんだよ。言葉は放った時点で半分は相手のモノさ。」

…それにしても…

「…だから遡ってキミにも心があるっていうのは…こじつけかな?」

白いスクリーンを見る。…今は何も映っていない。

「なんにしたってキミにはお友達ができた。」

先程まで映っていた映像、あれはそちらの紳士の記憶なのだろう。

「今のキミは決して空虚じゃない。価値を認めてくれる友達がいるんだ。」

内容はさておき…あれには記憶が映っていた。臨死体験のようなものか?

「さあ、価値が詰まったところでこれからどうするのか決めていこうじゃないか。」

…だとすれば、最初の映像は…しかしなぜ?

「それと…」

あんな経験、記憶に無い。

“カサ”

自分の前に紙が置かれる。またか。

「二枚目。キミはたくさん詰めてるみたいだね。リラックスしよう。」

二枚目ということはあの狂気じみた手記の続きということだろう。

いったい、なんのリラックスというのか。

やはり神は無神経だ。

「ん~ん~ん~…?」

またよそ見か。

あいかわらず、はぐらかすのが苦手なようだ。…まあいい。


『…身体は創れる。それは以前に書いた通りだ。それは当然、素体を“彼”に変えるような小細工じゃない。0から創る事も可能だという意味だ。

もちろん、最初はそれを試みた。異物から“彼”を作る事に嫌悪感はあったからだ。


結果は…芳しくなかった。

身体はほぼ完全に再現できた。外見も中身も。

必要な臓器や骨、“彼”を彩るしこりや欠けも含めて全て揃えた。

…ただ、長持ちしない。

すぐに止まってしまう。数日保つ例がどれだけあることか…

人間は身体を揃えただけでは成立しない。この世にしがみつこうとする“心”が必要だ。

未練の無い身体は機能を停止させてしまう。

止まるまでの間に“彼”の記憶を擦り付ける事も試みた。

しかし…だめだった。身体が理解するまでに停止する。

身体を留めるには肉の記憶が必要だった。

それは(口惜しい事に)“彼”の記憶より以前のもの…つまりは…世代の記憶の事だ。

人間は有性生殖を繰り返し、世代を交代させてきた。

環境に応じた形質を残し、不適な形質は消していった。

そう、消していった…と、考えていた。実際はそうではないのだ。

全て継承されている。有性、劣性のフィルターで発現の調整をしているだけだ。

発現していない情報は消えてはいない。肉の中に刻まれている。

そう、“彼”には情報が足りていないということだ。


身体を創るのにも心が不足する。

心を変えるのにも身体が拒絶する。


今、私はこの2点の問題を抱えている。

解決策をそれぞれで用意した。


…時間がせまっている。どちらか一方でも正解できることを願うばかりだ…』


あいかわらず、これはこれで…

「さて、少しはスッキリしたんじゃないかな?」

そんなわけはないだろう。

ヘタなSF小説じみた内容で何が整理されるというのか。

「読む前の疑問、忘れることができたと思うんだけど…」

………?

…つまり、はぐらかした?

「いや、まあ、それだけじゃないんだけどね」

この…!

「ああ、いやいやっ!そういえばアレ、気になるね?アレ!

車の人、どうしちゃったのかなっ…て」

立ち上がろうとしたところ、両肩を掴まれて再び座らされる。残念ながら…力はあるようだ。

「ほら、見るよ。ほら!」

…そのまま椅子の向きも変えられて…


再びスクリーンは映像を映し始める。

うは、少ない。

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