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魔女僕  作者: こそこそ
2/22

2つめ。

―――「いやあ、凄かったね。」

白い男が向き直る。

…何の映像だ?

「まあ、その…色々頑張ってたね。」

テレビ用の投稿作品か何かか?…それにしても…

「車は、まあ、残念…だったけど…」

微かに白い男が沈んでるようだ。

「…はー。………さ、て…」

“ぱさ”

白い男は今度は何枚かの紙をテーブルに置く。

「さて、次のお客さんが来るまでに少しだけ時間があるみたいだよ。

それまでにこれに目を通してみる?」

これ?

「奥で見つけたのだけど、少し、難しそうでね。気晴らしになるかなって。」

難しい?

…あと、また誰かが来るのか。

まったく、一体何なんだか。

やれやれ。天国というのは退屈攻めを受けるところだったとはな。

いや、実のところ、ここは地獄でしたという話もあり得るか。

「…やはは。手厳しいね。でもね、それはキミが決めるというか…

んー、“ここ”が示すのはもう一つの可能性かも。」

何を言って…

「天国?地獄?…キミさ、どっちにしたって監獄のように考えてるでしょ?」

「どちらも“終わり”のイメージだからかな?終わってから、行く。終わらないと、行けない。」

何が言いたい?つまり…

“かさかさ…”

「ごめんね、邪魔しちゃったね。はい。」

…白い男は数枚の紙のから1つを選んで、こちらによこした。

…ちっ



『人間の本質は何か?

誰でも抱くような陳腐な疑問だが、

“試練”を続けていると嫌でも考えさせられる。

身体か、心か。

結局のところ、両方必要だという結論に至るわけだが。

どうしても“試練”の辛さに逃げ道を探してしまうのだろう。

体は作れる。一番簡単なのは背恰好の近い素体を“彼”に直す事。

“彼”の事なら顔や体の造りは勿論、シミや汚れ、対照的に見えて非対称な歪み、

絶妙な筋肉と脂肪のバランス等々…細かな“美しさ”ですら完璧に分かる。

修正だけならば問題は無い。

ただ、彼は“彼”を受け入れない。彼の中にある彼の心が“彼”を拒絶する。なんという歪な“彼”だ。

では“歪な彼”の心を修正すれば、と考える。

半端者に本当の“彼”の心を教え込むわけだ。

何年も、何十年も蓄えた“彼”の歴史。もちろん、教えるのは漠然とした出来事じゃない。

“彼”の歴史に捨てるべきものなど一切存在しない。

逆に、ほんのわずかでも欠ければ“彼”にはなれない。

1秒の欠落も重大な落ち度だ。その日に、何時に目が覚めて、何を食べて…いいや、足りない。

“彼”が知覚できていることだけでは。全く。全然。もっと…もっと。

何時何分何秒に命になって、それからおよそ7200時間後にそこから出てきて…

(“およそ”!?修正の必要な欠落だ!)

産声をあげて…それから、それから…。

…美しい、愛おしい、輝かしい歴史の数々…。

…だが、半端者には入らない。受け入れようとしない。既に汚れた記憶がこびり付いていたから。

身体に、汚れた内臓に。

こいつが今までの間に積み重ねてしまった、“間違った歴史”のせいで!

…いけない。文体に感情が現れ始めている。

行き詰まりを感じているからか?ミスまでしたためてしまうとは。

少し休む必要がある。今日はここまでだ…』



これは?

「やっぱり難しいよね?」

誰かの手記?ずいぶんと偏執的だ。内容もまるで映画のような話じゃないか。

信憑性は疑わしいレベルだな。妄想癖の戯言を集めたようにしか思えない。

「そうだね。キミがココで体験しいてることなんて大した事ないくらいでしょ?」

…コイツ…

「ん~ん~ん~…?」

白い男は何食わぬ顔をしながら目をそらしていた。不器用なのか。

…それでこのおかしな文を見せて何がしたいんだ?または、何を気づかせたい?

それとも本当に単なる時間つぶし?

「…ん~…」

まだ目を逸らしている。

そろそろ間がもたなくなるんじゃないか?

「あっ!ああ!来たよ!来た来た!…こっちだよ、はい、こっちー」

気まずい空気がよっぽど堪えたのか、誰が見ても分かるような空元気で“次のお客さん”を迎えた。

白い男が手を振っている。そのずっと先にぼんやりとした人影が現れ、ゆっくりと近づいてくる。

…男性…中年、いや初老くらいか?

落ち着いた雰囲気。口ひげを生やしていて、いかにも紳士といった風貌をしているが…

…誰だ?会った事は無い。

ここが死後の世界だとすれば、生前に会った事のある人物に会うものだと思っていたのだが…?

「ええと、あなたはここに座ってくださいね。」

自分の隣に紳士が座る。

…(ぺこり)

軽く会釈された。

「お待たせしたね。でも、知ってる人物じゃなかったんだね?

うん、それじゃあこれから知り合いになるよ?はい。」

白い男はモニターを指す。またか。

「椅子の向き、変えてもいいよ?」

…白い男の椅子は既にモニター側に変えられていた。

さて、今度は何を見せられるのか…?


最初より短いけど、なんとか書けた。ああ、頭の中には壮大な話があるのになー

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