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望む世界  作者: ちぇん
3/6

自分の意思

ピピピピピ。

携帯のアラームが鳴り目覚めた。

アルバイトの時間だ…

俺は重い体を起こした。

昨日の事がまるで夢の様だ…

しかし、枕元に無造作に置かれた封筒に現実だと思い知らされる。

ふと不安が込み上げてきて携帯で本日のニュースを確認する。

昨日の事が事件になっていないかだ…

しかし、特に何もない…

本当に何もしなかったのだろうか…

それならこの報酬は…?

考えてもわからない…

もやもやした気持ちのままアルバイトの準備をして家を出る。

香川「あ、こんにちは。」

ちょうど香川さんが出かけるところのようだ。

亮太「こんにちは。」

香川「昨日大丈夫でしたか?ずいぶん顔色悪かったですけど…」

亮太「あ、大丈夫です。」

憧れの女性が声を掛けてくれているのに何で俺はこんなに無愛想な返事しかできないんだ…

香川「あまり無理されないでくださいね?お大事に。」

そう言うと、香川さんは頭を下げ、出かけて行く。

心配された!昨日と言いこんなに香川さんの声を聞いたのは初めてだ!

言いようのない喜びが込み上げる。

俺はもやもやした気持ちが少し薄れ、アルバイトに向かった。


社員「佐藤君、ちょっといい?」

急に社員に声を掛けられたのは昼休みだった。

亮太「はい。」

なんだろう…心当たりがない。

社員「急で申し訳ないんだけど、今月でその…辞めてもらいたいんだ…」

突然過ぎるだろ…

亮太「なんでですか?」

社員「そのね…会社で決まった事なんだ。経営が苦しいらしくてね…大幅にアルバイトを削る事になったんだ…」

リストラって事か…正社員でもないのに…

亮太「そうですか…わかりました。」

特にこの仕事に未練もないし、アルバイトならすぐ見つかるだろう…

亮太「じゃあ今月いっぱいではなく今日で辞めさせて下さい。次の仕事探したいし、すぐ入社できる状態でいたいので。」

社員「それは困るよ!今月のシフトは決まってるし、勝手すぎるだろう!」

亮太「勝手なのはそっちじゃないですか!もうこっちは辞める事が決まってるんだ!クビになる会社の事なんで知らないですよ!」

社員「そんな勝手は許さないよ!本当に責任感がないんだな!だから正社員の仕事も決まらないんだよ…」

俺の中でプツンと何かが切れた…

亮太「もういいです。今月分の給料もいらないのでこれで帰らせてもらいます。」

社員「待て!」

そう言う社員を振り切り俺は会社を出た。

やってられるか!何であんな勝手な理屈が言えるんだ…

責任感?知った事か!

理不尽過ぎるだろう!

どうにも怒りが収まらない。

近所の喫茶店が目に飛び込んだので頭を冷やす為に入る。


アイスコーヒーを頼み、席に着く。

近くにあった新聞を手に取り読んでみる。

新聞なんて読むのいつ以来だろう…

ほとんどの事が興味がない。

パラパラ新聞を捲っていくと、ある記事に目が留まる。

「○○病院で医院長自殺。借金苦によるものか?」

○○病院…?

昨日の事が鮮明に思い出される。

あの病院だ…

医院長自殺?

あまりにもタイミングが良すぎる…

どういう事だ…あいつら…人を殺したのか?

急に不安に襲われる。

先ほどまでの怒りはすでに消えてしまった。

アイスコーヒーを一気に飲もうとしたところで、

「そんなに急がないでも宜しいではないですか。」

急に声を掛けられる。

亮太「あんたは?!」

野口だ…

野口「昨日はお疲れ様でした。」

亮太「な、何しにきたんだ!」

自分でも声がうわずっているのがわかる。

野口「落ち着いて下さい。今日は突然のリストラ…お気の毒でした。」

亮太「なんでその事を?」

野口「そんな事はどうでもいいのです。申し訳ないのですがまた本日も付いてきて頂けないでしょうか?」

亮太「何でだよ!昨日で終わりじゃなかったのかよ!っていうかこの記事…」

野口「それ以上は喋らないで下さい。手荒な真似はしたくありません。」

昨日の記憶が蘇る…

俺は黙って野口に従う事にした…

喫茶店を出ると、車が停まっていた。

車に乗ると俺はまた目隠しをされ、車は走り出した。


目隠しを外されるとまた見た事のない倉庫にいた。

そこには昨日の老人と野口、宮内がいた。

老人「いや、また急にすまなかったね!昨日はよく眠れたか?」

亮太「そんな事よりなんでまた俺を連れてきたんですか?昨日で終わりじゃなかったのか?」

老人「いや、君が急に仕事を失った事を知ってね…困っているだろうと思って。」

亮太「そうだ!野口さんも言ってたけど何で知ってるんだ!俺だってついさっき知らされたのに…」

老人「まぁまぁ、そんな事はどうでもいい事だよ。」

亮太「それに新聞の記事!あれ昨日言った病院だよな?医院長自殺?どういう事なんだよ!」

自分でも興奮して声が大きく、乱雑になっていくのがわかる。

野口「佐藤さん…少し静かに…」

野口が声は決して大きくはなかった…しかし、それ以上こっちには喋らせない、何かがあった。

老人「まぁ、聞きたい事はたくさんあるだろうが、まずはこちらの話しを聞きなさい。」

亮太「…」

老人「宜しい。ではまず君が仕事を失った事を知っている理由。私たちは強い情報網がある。それを利用しただけだ。

次に新聞の記事の事。結果から言うと私たちの仕事の結果だ…違う形もあったかもしれないがな…」

頭が混乱する…

老人「私たちには依頼人がいる。仕事を選んでいるのは私だ。そして依頼内容を実行するのがこの野口と宮内、あと数人いる。

決して殺し屋のみの仕事ではない。ざくっというと何でも屋だな。」

言っている事はわかるがわからない…

老人「最後に、君をここに連れてきた理由。昨日言ったように君の特徴のなさ。私はそれをとても買っている。そして今日

君は今日仕事を失った。率直に言おう!私達と仕事をしないかね?」

突然過ぎる。

全く頭がついていかない…

亮太「殺しとか…依頼とか…正直頭がついていかないです…そもそも断ったら俺は殺されるんですよね?」

老人「殺しはしない…がそもそも今回の手伝いに関しては君が今更誰に何を話しても信じないだろう。なので君には

断る権利はある。」

亮太「じゃあ、なぜ昨日はあんなに脅したんですか!」

老人「君に深く考えさせたくなかったので、緊張を与えただけだ。」

俺は死を覚悟したけど…

亮太「そもそも特徴がないって…他にもいくらでもいるでしょう!」

老人「…まぁ、たまたまだな。」

どんな運だ…。

亮太「仕事を手伝うって…俺はそこの野口さんや宮内さんみたいに強くないし、できる事なんてないのでは…」

老人「君にそんな事は求めていない。君に求めるのは別の所にある。」

亮太「それっていったい…」

老人「後々わかる事だよ。」

絶対辞めたほうがいい…殺人とか…下手したら自分も死ぬ可能性があるって事だろ…

しかし、また昨日と同じ感情…

好奇心…どうせ無職の自分。家族とも連絡を取っていない。恋人もいない。仕事もない。

こんな経験他では絶対できないだろう…

亮太「…」

老人「報酬は十分に出す事は昨日わかっただろう?仕事のある日はこちらから連絡を取る。」

亮太「まだやるとは言ってないじゃないですか…」

老人「そうか?君の顔を見ていると断るとは思えないが…」

俺、どんな顔してるんだ…

結局俺は老人たちと仕事をする事を決めていた。

本当によかったのか…


帰りの車、また俺は目隠しをされていた。

亮太「俺はみなさんの仲間になったんですよね?」

野口「そういう事になりますね。」

亮太「なんで目隠し?」

野口「仕事柄、警戒心が強くてですね…申し訳ありませんね。」

まぁ、そんなもんか…

野口「着きましたよ。」

また、昨日と同じ公園に送り届けられた。

野口「また仕事があるときは方法は決まっておりませんが連絡します。」

亮太「はい。」

野口「あ、それと一つだけ忠告を…」

亮太「?」

野口「我々の世界では、信用がなによりも大切です。これだけは心に命じておいて下さい。」

昨日と老人と同じような目で俺を見る野口…

亮太「わかりました…」

野口「では、失礼します。」

微笑みを浮かべ、車で去ってゆく。

その瞬間、どっと汗が出た…

俺はとんでもない事を決めてしまったのではないか…

今更とてつもない不安と恐怖に包まれる。

家までの道のり、いくら考えても何も答えが出てこない…

吐き気すら出てきた。

家の近くの道に差しかかると、香川とばったり会った。

香川「あら、偶然ですね。」

亮太「あ、こんばんは。」

香川「まだ顔色が優れませんね…」

亮太「大丈夫です。ちょっと疲れてるのかな…」

香川「お疲れ様です。休めるときはゆっくり休んで下さいね。」

亮太「香川さんも遅くまで大変ですね。」

香川「まぁ、お互い様ですね!頑張りましょうね。」

亮太「はい。」

そこで丁度アパートに着いた。

香川「では、お休みなさい。」

亮太「お休みなさい。」

そういって自宅に入った。

最近よく会うな…

その分、訳の分からない事も起こるけど…

俺、どうなっちゃうんだろう…

どっと疲れが押し寄せ、そのまま深い眠りに着いた。


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