非日常からの解放?
野口「大丈夫ですか?」
亮太「大丈夫なわけないでしょう!」
野口「まぁまぁ、そうカッカせずに。本日は仕事をご一緒するのですから。」
そう言いながら野口は手際よく手当てを行っていく。
宮内「野口のおっさん!車用意できたぜ。」
宮内が部屋に入ってきた。
宮内「しっかしそんな弱っちぃ奴で大丈夫なのかよ?」
野口「あの方が決めた事です。従いましょう。」
チッと下打ちをする宮内。
野口「では行きましょうか。」
そう言って、俺は目隠しをされ車に乗せられる。
野口「着きましたよ。」
車でどの位走ったのだろう…
目隠しを外された俺の目に飛び込んできたのは見た事がない病院だった。
亮太「ここはどこだ?」
宮内「それはお前には関係ない事だろ?」
野口「まぁまぁ、では佐藤さん。今から私と宮内君で病院に行ってきますのであなたはこの病院に誰か近づかないか見張ってて下さい。」
そういうと野口は携帯を俺に手渡し、
野口「誰か近づいてきたらこの携帯のこの番号に連絡を下さい。恐らく、15分程で戻ります。」
そういうと、野口と宮内は車を出て、病院の裏手に向かった。
今なら誰も見ていないのだから逃げれるのではないか?
そう考えた俺だが、あの二人が何をしているのかも気になる。
強盗?
この場合俺も共犯になるのか?
それともこの病院の人間と知り合いでただ話しているだけ?
ただその場合、なぜ俺が必要なんだ?
このまま仕事が終わり帰ったとして俺は無事に家に帰れるのか?
まさかそのまま死…
逃げたい願望と好奇心がほぼ同じ位の大きさである…
などと、考えていると野口と宮内が足早に戻ってきた。
野口「誰も通らなかったですか?」
亮太「は、はい。通らなかったです。」
野口「結構。では行きましょう。」
宮内「あいよ。」
そして俺は目隠しをされ車は走り出した…
やっぱり犯罪でもしてたんだろうな…
などと考えていると、車は停まり、
野口「着きましたよ。」
そう言いながら俺は目隠しを外された。
来たところとは違う、公園…かな。
老人「3人ともご苦労様!問題はなかったか?」
野口「はい。滞りなく。」
老人「結構!宮内!佐藤君!ご苦労様。」
老人はねぎらいの言葉を掛ける。
老人「佐藤君は突然ですまなかったね!」
俺は正直このまま帰らせてもらえる気がしない。
怖い…
老人がおもむろに懐に手を入れる。
銃?死?
俺は瞬間的に覚悟を決めた。
しかし、
老人「これ!今回の報酬ね。では私たちはそろそろ行かせてもらうよ。」
そういうと、野口と宮内に合図をし車に乗り込む。
老人「そうそう、さっきも言ったが今日の事は他言無用だよ。わかったね?」
そういう老人の目は今までみた人間の中で一番冷たく、背筋が凍りつくような目だった…
いったいなんだったんだ…
突然の誘拐…圧倒的な暴力…見張り…解放…
今となっては夢でも見ていたような感覚だ。
辺りを見渡すと、自宅から5分ほど離れた公園にいた。
送ってくれたのか…
老人に渡された報酬の入った封筒を片手に帰路に着いた。
自宅のアパートの部屋の前で
香川「こんばんは。」
香川さんだ…
亮太「あ、こんばんは。」
香川「どうしたんですか?すごく顔色悪いですよ?」
亮太「あぁ、大丈夫です。」
香川「体調気を付けてくださいね!じゃあ、失礼します。」
亮太「どうも。」
自宅に入り、ふっと我に返る。
香川さんと話したな、俺!
あんなに会話したの初めてだ!
急に嬉しくなった!
が、今日の事がインパクトが強すぎて再び不安な気持ちと恐怖が訪れる…
そこで渡された封筒の存在を思い出す。
中を確認すると
亮太「な、なんだこの札束!?」
数えたところ150万円入っていた。
やっぱり絶対犯罪絡みだ…
明日の朝ニュースになるのかな?
俺の存在もばれるのかな…
やっぱり逃げておけばよかった…
香川さんと話せた喜びはとうに消え去り、後悔と不安が押し寄せる。
突然の非日常のせいだろう。
どっと疲れが出て、俺はそのまま眠りについてしまった。