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望む世界  作者: ちぇん
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日常の崩壊

俺は社交的でもないし、学生時代友人もいなかった。

教師からはまじめという評価しか受けておらず、かといって生徒会などに選ばれたり、立候補するほど学校生活に積極的に参加していた訳でもない。

学歴は一応大学までは出ている。

親が社会に出てから必ず役に立つからと半ば無理やり受験し、浪人できるほど裕福な家庭ではなかったので、まぁ、ぼちぼちの大学に入学し、普通の成績で卒業。

家族は両親健在で、3才年下の弟もまぁ、元気にやってる。

俺は大学卒業後、中小企業の営業として入社。

しかし、社交的ではない俺は、会社に馴染めず、1年経たずに辞めてしまった。

その後、就職活動を行っているが、特に何も目立ったもののない自分を雇ってくれる会社はなく、ある企業の倉庫で流れ作業のアルバイトをやっている。

正直、人との関わりの少ない現在のアルバイトは気が楽だ。


亮太「お疲れ様です…」

社員「はい、お疲れ様」


社員に挨拶をし、本日のバイトが終了した。

今日のバイトも終わり、家路に着くだけ。

会社を辞めてからのいつも通りの1日。

正直、給料は安いし、仕事は見つからないし、未来が見えない…

生きている意味も分からなくなってきた。

唯一の楽しみは自分のアパートの隣に暮らしている女性、話した事もないし、表札で[香川]という苗字を知っている位だが、信じられない位自分の好みの女性だ。

関係といえば、軽い挨拶をする事位…

自分が引っ越してきた時には既に住んでいた。

年齢は同じ位かな…

今日もすれ違えたらいいな…などと妄想しながら帰宅する。

我ながらこういう人間がストーカーになったりするのかなど考え自己嫌悪に陥る…


人通りの少ない路地を歩いていると、

「佐藤亮太さんで宜しいでしょうか?」

突然、スーツ姿の中年の男性に声を掛けられる。

亮太「はい?」

野口「突然申し訳ありません。私は野口と申します。今お時間あればちょっとそこの喫茶店に来ていただけないでしょうか。」

亮太「…」

怪し過ぎる。

亮太「すいません。急ぎますので…」

横を通り過ぎようとした瞬間、腹部に強烈な衝撃が走り、立っていられないほどの痛みが駆け抜ける。

亮太「ぐぅ…」

野口「申し訳ありませんが、ついてきて頂きます。」

路地に車が入ってきて、野口と名乗る男は自分を担ぎ上げ、車に放り込んだ。

その後、手足を拘束し目隠しをされる。

野口「手荒な真似をして申し訳ありません。しかし、あなたにとっても悪い話ではないですので。」

拉致?誘拐?

俺は殺されるのか?

さっきまで生きている意味が分からないなどと考えていたが、とてつもない恐怖に襲われる。

こんな事になるなら隣の香川さんに嫌われてもいいから声を掛ければよかった…


暫くして車が停まり、また人に担がれた。

恐らく野口だろうが、この男中肉中背の体格なのにどういう力をしているんだ?

野口「到着しました。」

と、床に下ろされ、目隠しを外される。

どこかの倉庫だろうか…

周りには野口と、もう二人…

一人は大柄な男…年は俺位だろうか…

もう一人は車椅子に乗った老人…

老人「野口が手荒な真似をして申し訳なかったね。大丈夫か?」

亮太「大丈夫な訳ないだろ!いきなり殴られて誘拐されて…」

老人「もっともだ。しかし、どうしても君に用事があったものでね…」

こっちを気遣っている言葉は発するが、こっちの言葉は聞く気がないようだ…

老人「実は君に折り入って相談があるんだ。君に一つ仕事をお願いしたい。」

亮太「こんな事しといてそんな勝手な話があるか!」

若者「いいから黙って話を聞け!」

突然顔を蹴り上げられる。

地面に血が飛び散る。

亮太「ひぃ…」

我ながら情けない声が漏れる…

老人「手荒な真似をするな!宮内!」

老人の一喝により、姿勢を正す若者。

老人「すまんな。しかし、話を聞くだけなら問題はないだろう。」

亮太「…」

老人「実は、これから野口とこの宮内にある仕事をしてもらう。そこで君には外で見張りをしてもらいたい。そして今日見た事は口外しないと約束して欲しい。もちろん報酬は払う。どうかね?」

怪し過ぎる…

亮太「なんで俺なんだ…」

老人「君について少々調べた。君には特徴がない。仕事もアルバイトのみ。家族との連絡もほとんどしていないだろう。友人もいない。君みたいな人間を探していてたまたま目についたのが君だったのだ。」

なんて理不尽な理由だろう。

亮太「断ったら?」

老人「非常に残念な結果になってしまうな…」

死…

亮太「…わかったよ。」

老人「よかった。野口。佐藤君の拘束を解いて手当てをしてやれ。その後、宮内と佐藤君を連れて例の場所へ連れて行け。」

野口「了解しました。」


こうして俺の平凡で退屈な日常は大きく変わってしまった。






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