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そんなに面白いかよ!!

すいません遅くなりました!

一ヶ月ぶりとか何考えてんだ俺…


そんなわけで新章スタートです

 束の間村を騒がせたピンカバは来た時と同じように突然に、甲高い笛の音とともに去っていった。

 村を囲む森にお城の様な荷車の最後が消えていくと村には静かな日常がかえってくる。


「いやはや、毎度のことながらあの活気のよさは少々つかれるなぁ」

 

「タロウ兄ぃは毎年それいってるよねえ」


「そもそもタロウ兄ぃのは毎回時自業自得だし」


 新しいもの好きと珍しい物好きを併発するタロウ兄ぃ。年に一度のピンカバの来訪は彼の購買精神を大いに高ぶらせるらしく、その手の店の前で何時間でも交渉している姿は毎度のことだ。

 僕にしたって串焼き屋の前で何時間も過ごしていたのだ、人のことは言えないが。


 とにかく僕らは疲れていた。

 それでもピンカバがいる間はやめていた特訓をその日のうちに再開した原因は、あのとき串焼きを齧りながら言ったあのクサイセリフのせいだろう。

 もちろんあの串焼き屋の語ったリリオのエピソードも多分に関わっているのだろうが。


 訓練を再開する前に、リリオに言われたことがある。


「君は強くなりたいと言った。

 それは尊いことだと思うし、事実そう思わずしては今より強くは成れない。

だから忘れるな。

強くありたいと願った今の君の気持ちを」


 正直なところ、彼女が何を言いたいのかは今一よく分からなかった。

 曖昧なままに、ごまかすように頷く僕に苦笑して、彼女は修行の再開を宣言した。

 まぁ、僕の修行は相も変わらず棒振りなんですけどね。


***********************



 さて、そんなこんなでいつものように村の空き地ではゴンタとリリオがぶつかり合い、少し離れてタロウ兄ぃがヘンテコなオブジェを作っている。

 手の空いた暇な大人たちはなんだかんだと観戦していくのも、最近では見慣れた風景。

 そして僕はと言えば、一人寂しく森の中で素振りに明け暮れていた。


 おかしい。

 なんかすごくかっこいいことを言われ、やる気は満々だというのに。

 がんばる宣言だってしたのに。


「なんで僕だけ一人稽古? 」

 

 最近割と真剣にいじめの可能性を考えだすようになってきた。

 第一、能力の鍛えようがないから棒術の修行をする。というところから意味不明なのだ。

 なぜ棒なのか。どんな思考をすれば能力が使えない=棒の修行になるのか。

 リリオに詳しく問いつめたいとこるではあるが、そんなことをしても結果は見えている。

 

「あーあ、つまんないなー・・・・えい!」

 

 右手に力を込める。

 音も無く発現する黒い炎。大きさも形もいつも通りの平常運転。

 あの大熊討伐で少しは運命値も上がっているのだが、全くの変化なしには期待していなくともがっかりはする。

 もちろんあのときの様な力は感じない。


「こんなのが『第三種』なんていわれるすごい力とは、思えないんだけとなー」


 思いっきり振りかぶってみても、動け! と念じてみてもビクともせずに手の平に居座り続ける黒炎。

 せめてゴンタの炎みたいに動けばいいものを。

 なんてぐちぐち思いながら棒を振っているうちに日が傾いてきた。

 家の手伝いや子供衆としての仕事もあるので修行はここまでだ。

 布で汗を拭い、村の方へ歩き出す。

 




 空き地へ出てきた僕が見たのは、ちょうどゴンタが吹っ飛ばされているところだった。 

 そこそこ飛ばされてちょうど僕の目の前に落ちる。


「勝負あり!!」


 判定でもしていたのか、二本の棒を持ったユウタが片方を振り上げて宣言している。


 ・・・なんだろう、この既視感のある光景は。

 というか、ゴンタのやつ、前から進歩なしとはどういう了見なのだろうか・・・

 倒れっぱなしもかわいそうなので、仕方なく手をのばしてあげたのだが。


「なんだよ! 俺が負けてそんなに面白いかよ!」


 差し出した手はパンッ!と払われ、顔を真っ赤にして噛み付かれる。

 僕に助け起こされそうになったことが、そんなに腹立たしいのだろうか?

 負けて悔しかったのは分かるが、八つ当たりとか。子供か。

 なんていじめられっ子としては口が裂けても言えないので適当に誤魔化しておく。

 

「いやいやまさか。いつものことじゃん、リリオさんに負けてるの。気にすんなよ」

 

 直後のゴンタの顔の変化を見るまでもなく、僕にも分かった。

 

 

 あ、地雷踏んだ。




「ほお・・とうとうツクセにまで馬鹿にされるようになったか」


 いや・・とうとうも何も、僕の方が3つは年上なんだけどね。

 怒り爆発!!と言ったところか。

 ガキ大将を気取っていた身としては、年上の格上とはいえ女の子に負け続けているのは我慢ならない。

 かといってどうすることも出来イライラが溜まっていたところに、馬鹿していた僕からの慰め。

 我慢の限界。という奴なのだろう。

 

「おいツクセ!! 勝負しろ勝負!」


 まあそうなるか・・・

 リリオに負け続けていると言っても成長くらいしているのだろう。

 イライラを発散させるはリリオは強すぎる。それでも暴れたければ、ほかの誰かに当たればいい。


「いやそれは・・だってあれだよ? 僕ってばずっと素振りしてただけだよ? 勝負になる訳が」


「いい考えだ。どうせならタロウ兄ぃもやってみるか?」


 思わぬところから援護が入ってしまった。


「いやリリオ! 何言っちゃってるの! 無理だよ」

 

 年下とはいえ、ゴンタの火球はシャレにならない威力がある。

 リリオとの修行も考慮に入れると、最悪命に関わる。


「まあそんな情けないことを言うなツクセ。大丈夫、危なくなったら止めるさ」


 リリオさん、そんな笑顔で言ってもあんまり説得力無いですよ。

 

 

 

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