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特訓篇3ーー黒い炎と「今はまだ」

特訓篇の三人目、我らが主人公ツクセ君の出番です(笑)

今日も村外れの空き地では大きな火の玉が舞い、奇妙な岩塊が出来ては崩れる。

ゴンタの火の玉がリリオさんに迫る度に歓声が上がる。

タロウ兄ぃのオブジェが出来る度に笑いが起こる。


「・・・さみしい」


最近では、特訓にあまり肯定的ではなかった大人達も覗きに来て、娯楽の少ない村の数少ない楽しみになっている。


「・・・僕もキャーキャー言われたい」


そんな賑わう教会跡からさらに離れた森の中。

樹々の隙間に出来た小さな空間に僕はいる。

僕に課せられた課題はただ一つ。


『能力を使わずに、強くなること』


うん、おかしいことは僕もよく分かっている。

だって他の二人なんてタロウ兄ぃの特訓は言わずもがな、ゴンタの組み手だって能力主体だ。

そりゃ僕の能力は確かに弱いよ。

でも、だからって始めから諦めるのは、あんまりじゃないだろか・・・


ヘソくらいまでの長さの棒を振り回しながら、くどくどと心の中で愚痴る。

もちろん口に出さないのは、リリオさんに聞かれ無いように。

あの人の耳は地獄耳だ。

それに何より運命値が上がると、身体能力も圧倒的に上がる。

大柄なゴンタを華奢な少女が殴り飛ばしたのを、僕たちは忘れない。

その身体能力の上昇はもちろん、聴覚にも及ぶ。

・・・おっと、話がずれた。

ともかく、運命値の高低は筋肉とか技術とはまるっきり別に、その人を強くする。

そこに圧倒的な能力の補助まで加わるのだ。どうしたって勝てっこ無い。

だからこそ他の二人は技術で喰らいつける能力面の強化を目指している。


ただ、僕の能力はその限りでは無いらしい。





***************


特訓の指導を付けてくれることになったとき、リリオさんには僕らの出来ることを全て見せた。

そのとき彼女が言った言葉によると、


「同じ能力など、二つと存在しない」


らしい。

一見同じに見える能力でも、実はそれぞれに千差万別。



例えばゴンタの火の玉。

あれは比較的制限の緩い類のモノらしく、中には同じ火の玉使いでも手のひらから果実大の火の玉しか出せない、という人もいるそうだ。

ただその人は運命値も高く、ビンタに火の玉をコラボさせることで爆裂するビンタを得意とするとか。

他にも、同じ火の玉でも無駄に青く燃えるモノ、形が球形で無いモノ、水でも消えないモノ、消えるモノ・・・・様々だそうだ。


火の玉だけでもその有様。

あまりにその数が多いので誰が作ったか、能力には3つの簡単な分類方法がある。

第一の分類は自発型。

純粋にその能力のみで存在意義を持つモノ。

当たり前に聞こえるかもしれないが、これが意外と重要。

それがよく分かるのが第二の分類で、付与型。

その名の通り対象に能力の効果を"付与"するタイプの能力を指す。

タロウ兄ぃの『岩石構築ゴーレムメイク』やリリオさんの植物を急成長させる能力などかこれに当たる。

これはつまり、対象が無ければ無用の長物と言うことである。


万能性に優れる自発型。

応用力に秀でた付与型。

そして第三の分類は、それら二つとは大きく性質が異なる。


『簡単に言うと、君の能力はまだ本当の意味で目覚めていない』


『先日の大熊の件。あの雷を打ち払った炎は出せるかい?』




ーーあの時、あの時確かに僕は感じた。


ーー黒い炎に力を感じた。


それを今は感じない。


『ならそのとき、君は力を望んだんだ』


『仲間の命が危機に晒され。君自身危なくなった』


『そこに来て、ようやく君は力を求めたんだ』



それこそが第三の分類だと、リリオさんは言う。

他の二つとは根本的に異なる能力。

遥か高位の運命値の相手とすら、互角以上に打ち合える能力。

けれどそれゆえ、発現者のより純粋な力への願望が鍵になるとされる。

理性と本能が一つとなって目の前の敵を倒す事を願ったとき、初めてその力は真の姿を表す。





「・・・つまり鍛えようが無いって事だもんな~」


命を張れば少しずつ扱える様にはなるらしい。

実際、高運命値の中にはこの『第三種』と呼ばれる能力を持つ人はかなり居るらしい。


「運命値が上がれば村には居られなくなるしなぁ」


そんな命を張った様な修行をすれば、あっという間に運命値は上がる。

リリオさん曰く、運命値が500000を切った辺りから、闘争に呑まれるらしい。

そうなれば、村にも闘争の渦に吸い寄せられる様に強者が現れる。

そうならない様に、そして少しでも『あの力』を使えるようになるために。

今はただ、与えられた課題をこなすしか無い。

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