空っぽ
アパートに2階の角部屋に住んでいた唐住道子は、隣の部屋に住んでいた川本という女性が引っ越したことを知る。
仕事から帰ってきて、川本が住んでいた部屋の玄関にあったネームプレートがなくなっていた。確認のために、隣の塀越しに隣を覗き込むと、カーテンがなくなって、家具がなくなっていた。
道子はどこか変になりそうだった。だた、隣の住人が引っ越しただけなのに、隣の部屋は家具と全てなくなって空っぽになって、道子の心も空っぽになった。
その川本という人物が隣に住んでいることで、生活のモチベーションの糧になっていた。どこで勝ちたいと思っていた。生活すべてにかけて、勝っていたいと思っていた。
道子は川本をどこかで軽蔑してのかもしれない。勝っていると勘違いしていた。勝手に勝負を仕掛けていて、勝手に落ち込んでいる。一方的で自分勝手な行動だった。
道子が実家からこのアパートに初めて1人で住み始めた。引っ越した時、1人暮らしだし、隣に誰が住んでいるのか、分からなかったし、トラブルたくなく、挨拶を避けた。引っ越した日に、隣を確認していた。そこにはネームプレートがあって、川本は住んでいた。
引っ越してからしらばらくは、会うことはなかったが、仕事帰りに玄関に入っていく川本を見た。太っていて、地味なので、どこか川本に勝っていると思えていた。無意識の内にライバル視して、それをモチベーションとして生きていたのだ。
だから、その川本が居なくなったことが、すぐに受け入れることができなかった。道子のモチベがなくなっていく。何をしても心の中が空っぽになっていく。仕事でどれだけ頑張っても報われることはない。
そもそも、川本のことなど、何1つ知らない。年齢も職業も何1つ、何も知らなかった。
だた、いままで隣に住んでいた人だったのだ。勝手にライバル視しても、意味など何1つないのだ。それに川本は今も道子が勝手にライバル視していたことなど知らないのだ。
人って無意識に誰かを勝手にライバル視して、勝手に落ち込むんだなと思えた。




