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第44話

話を進めたいので色々とカット

 久々になる土の感触を感じつつ、魚の生臭い匂いが潮風に乗るのを肌で感じる。

 あの後、二日ほどで大陸にたどり着いた。たいして変わった事は無かったが、エールの味に飽きてしまった事だけは述べておく。

「おーい、出発するぞランサム」

 少しこの街で休みたいのだが、レイア曰く「船で休んだだろ?」だ、そうだ。

 それにしても、手続きが終わってすぐに出発は早すぎるだろ。なかなか大きな街だから見て回りたかったな。

「ちょっとぐらい待てよ」

 そう言う間にも、レイアたちは門に向けて歩き出している。

 人混みの中を掻き分けながらそれに走りで追いつくと、リリアナが小さく手招きをしていた。

「何だよ?」

 前のレイアに気づかれないように、近くに寄って小声で言う。

 まあ、察しは付くが。

「義手の事だ。付けるか、抜けるか?」

「付けるに決まってるだろ」

 義手が欲しくてここにいるんだ、抜けたら自腹になるだろ。

「…………そうか。前にはここにも工房があったのだが、どうやら首都に移転したらしい」

 リリアナもレイアには隠しておきたいのか、声を低くして言う。

「首都には行く予定は確かにあるが、先に行かなければならない場所がある。すまないな」

 残念そうと言うより、煩わしそうにリリアナは言う。

「そんな事か?手に入るなら別にいい」

 まあ、用事がある訳でもないんだ、そこまで急ぐことは無いだろう。

「そうか。なら、どんなのにするか決めておけ」

 そう言いながら、『名作義手〜戦闘編〜』と表紙に書かれた厚い本を手渡してくる。

 試しになんページか開くと、いかにも固そうな物や、骨のような軽そうな無機物の右腕が、ずらりと載っている。

 この中から選ぶのか…………

「しっかりと性能も見る事だ。体の一部になるのだからな」

 リリアナはそういうと、スタスタと早歩きになってしまった。

 少しぐらいオススメとか言ってくれよ………

 そう思いながら、渋々とページを捲った。




「まったく、次から次へと」

 出発して大した距離も進まぬ内に気づけた草むらからの視線に、うんざりしていた。

 しかも、襲ってくることはなく、息を潜めて追って来るのだ。

「────セレナ」

「兎です」

 確実に気付いているであろうセレナの側に寄って声をかけると、王都の兵士特有の暗号を言われる。

 兎は一般市民などの、無害な人物を意味する。その他には、蛇は商人、鼠は軽装、熊は重装の敵、そして龍が仲間だ。

「兎なら、様子見だな」

 セレナの索敵能力は確かだな物だと、俺は信じる。

 さて、どうするか。

「石でもなげるか?」

 セレナにそうふざけて言うが、当然の如く返答は無い。

 はいはい、ふざけて悪かったな。

 その視線を気にしつつも、黙々とレイアの後を追いかける。

 そのまま数時間ほど歩いていると、不意にレイアが立ち止まった。

「魔物だ。下から来るぞ」

 そう言うと、勢い良く剣を地面に突き刺した。

 勢いはかなり付いていたようで、レイアは片膝を着きながら刀身を根本まで地面に沈ませる。

「下?モグラみたいな奴だな」

 そう軽口を叩いてやると、レイアは背を向けたまま言った。

「モグラならよかったんだがな…………」

 そう言った途端、苦痛に満ちた声を上げる何かが地面から飛び出した。

 それは濃い緑の粘り気のある液体を両目から滴らせ、下顎が左右にパックリと開いた全身に血管の浮き上がる人間だった。

「うぇ」


 その姿に、思わず声を漏らしてしまった。

 それに体毛は多少残っているが、その身には何も纏っていない。更には歓喜と絶望を合わせたような、歪な形で表情が固まっている。最も気色が悪いのは、その腕がまるでオケラのように、物を掘るための形をしているからだ。

「あの両腕に気を付けろ。ほとんどの鉱物は掘れる上に、怪力だからな」

 リリアナは抜いたサーベルの刀身を発行させつつ言うと、それに向かって一気に駆け出した。

 これの相手に慣れてる。そう思った。

「ハァ!」

 そして、一瞬で距離を詰めたリリアナは、そいつの頭を一閃で跳ねた。

「────え?」

 あまりの呆気なさに俺が固まっていると、レイアがリリアナに向けて駆け出した。

 そして、その勢いをロングソードに乗せ、リリアナの背後を狙うように振りかぶった。

「アアァアァ!」

 次の瞬間、聞くに耐えない声を上げながら、その狙った位置の地面から口から緑を撒き散らすそれが出現し、

「ギッ─────」

 その背後から降り下ろされたロングソードにより、体を左右に分けられた。

 慣れすぎている事に感心していると、足元が震動するのを感じて真横にステップで移動する。

「アアァアアァ!」

 すると、先程の個体と全く同じ声を上げるそれが、地面から飛び出した。

 腰から下が地面の下にあり、明らかに隙だらけなのでその頭をボールを高くに上げるように蹴り飛ばす。

 すると、まるで死体を蹴ったような柔らかい感触と共に、その頭は宙に狭い放物線を描いた。

「ランサム、まだまだ来るぞ」

 リリアナはそう言うと、新たに飛び出して来たそれの上顎と下顎を、上げていた右腕を巻き込みながらサーベルで切り離した。

 まだまだ地下にいるのか、足に地下の震動が響く。

 真横に出てきた二匹目の右腕の突きを避けると同時に左手で掴み、後ろから地面から飛び出す勢いのまま飛びかかってきた三匹目に真横から叩きつける。

「ギ……ォ…………」

 鈍い声を出しながらそれが宙で止まった所に、衝撃力を重視した空気の塊を叩き込む。 それによって柔らかな肉は結合組織から剥がれると、大きな関節ごとにハラバラになって飛び散った。

 近寄る音がないために辺りの状況を伺うと、各々の方法でそれの首を執拗に狙っている。

 弱点がそこなのだろう。

「ん?」

 セレナに目をやると、先程からいた兎の方に向けて矢を放っていた。

 人助けなのだろうか。余裕だな。

 そう思っている内に地中の音が無くなり、レイアが剣を納めた。

「終わりだな。出発するぞ」

 そう言うと、レイアは何事も無かったかのように再び歩き出した。

 やけに無感動だな。「気色ワリイ」とか言うと思ったんだが。

 そう思いつつも、取りあえずはその後を追った。




 レイアが焦る。首都に行く前の寄り道が、とても面倒な気がしてきた。





「何度目だよこれ…………」

 あれから半日ほど歩いて夕方になったが、断続的に人間モグラの襲撃を受けていた。

 オマケに、なぜかこちらを見ている一般人は、そのとばっちりを受けながらも付いて来ている。

 山に入ったんだぞ?死にたいのかお前は。

「リリアナ、地図あるか?」

「ん?街ならもう直ぐだぞ」

 俺の思考を読んだようにリリアナは言う。

 それは予想できるだろうが、街が見えないのはどういう事だ?

「こんな山の中に街がある?ドワーフの洞窟でもあんのかよ」

 そう馬鹿にするように笑ってやると、リリアナが驚いた声を上げた。

「よく分かったな。てっきり着くまで気づかないかと思ったよ」

「何!?」

 おいおい、ドワーフって言ったら鉱物を集めるのが有名だぞ。これは一人旅用の金を集めるために、俺に与えられたチャンスか?

「…………分かっているだろうが、手癖の悪い真似をしたら両腕が義手になるぞ?」

 再犯する犯罪者の考えは分かりやすいのだろうか、五秒足らずで釘を打たれた。

 これじゃ、単独行動は許されないかもしれない。

「まあ、長居はしないぞ。二日が精々だ」

「二日か……」

 二日で何ができるだろうか。精々、そこの盗み関連を取り仕切っている奴に、盗品を売る許可を得るぐらいか?

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