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第2話

 ここは、地下のため空気がこもり、湿気の多い空気と、血の匂いが混じる不快な臭いが立ち込める地下牢。

 ここの牢はみんな立方体の形をし、通路側の壁は鋼鉄で作られた柵になっており、囚人を見せつけるように拘束具が通路に向かって配置されている、それ以外には何もない簡素な作りの牢が通路を挟んで向かい合っている。

 ランサムは、ランサム=リザルトはここに拘束されていた。そして彼に何かを持ちながら牢を開けて近づき、彼の頭をそれの中に突っ込ませた。

 それは、水がめいいっぱい入った桶だった。ゴツゴツした手で頭を押さえつけられしばらくして、ランサムは苦しそうに、そして必死にうめく、

「――ゴボッ!?ゴボボッ!」

 しかしそれは奇怪な音になり、さらに手足を使って逃れようとするが、ジャラジャラと鎖がこれ以上伸びるのを拒絶する音が出るだけだった。そして動きが鈍くなった途端に頭を押さえつけていた手がどけられた。なんとか顔を上げたランサムに向かって

「どうだ?顔だけじゃなくて、体の中も洗えてよかっただろ?」

 その声の主はランサムが屋敷から逃げる際に吹き飛ばした、若い男だった。

「……なかなかよかったぜ?あの傷は水の魔法で治したのか?お前は動きにキレがなかったから楽だったぜ?」

 それにランサムは、息も途切れ途切れだが言い返す。若い男はため息そして、

「まったく、口が減らないなあ!」

 膝を着いているランサムの腹をおもいっきり蹴りつけた、

「うげっ……!」

 そこからは一方的な私刑が始まった、蹴り、殴り時には桶で強打する。見るに耐えない暴力がまだまだ続くかと思われた、その時

「おい!何やってんだ!」

 チンピラ勇者が現れた、意外にも彼女は若い兵を止めに入った。その声を聞いた若い兵は、

「これはこれは勇者様。何って拷問に決まってるじゃないですか?結界で守られたあれを、どうやって盗んだかを知りたいんでしょう?」

 妙にかしこまって若い兵は答えた。それに対して勇者は激昂し、

「ふざけるな!普通はまず尋問だろう!」

 今度はうんざりした様子で若い兵は答える。

「そんなのは形式だけですよ、それに勇者様も見たでしょう水晶に映ったこいつの属性を?」

 属性は水晶を通して見ることができる。火なら赤、水なら青といった具合に属性を色で判別するのである。しかし、ランサムの色は何もかもを呑み込みそうな暗黒だった。

「闇の属性は魔族のやつらの属性です!人間が闇の属性だなんて、聞いたことがありません!きっと魔族の手先です!

 それに対して勇者は

「なら、なぜ王宮に入った時に王を殺さなかった!?なぜ逃げる時に私を殺そうとしなかった!」

 終わりの無いような言い合いを中断させたのは、さっきまで黙っていたランサムだった、

「なあ?もう夜だろ、飯くれないか?できるならシチューがいいな。」

 その言葉に若い兵はキレた。

「黙ってろ!」

 振り向いて叫んだ瞬間、顔に桶が直撃した、

「いっちょ上がり!」

 ランサムは、両手足を自由に動かして立ち上がった。

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