表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/49

第36話

毎日ちまちま書くのに一週間かかる不思議。更新間隔を縮めなければ……

 平野に出て、冷たい風が吹き抜ける深夜にも関わらず、あのまま歩き続けているが先頭を歩くレイアが一言も喋らない……雰囲気が悪いにもほどがある。ワイバーンの群れが来なかったことは勿論、弓兵がなぜワイバーンに気づかなかったか誰に聞こう…………

 迷っていると、強化した聴力が波の音と人の声をかすかに捉えた。もう少しで着くようだ。船でもこの雰囲気なら圧迫感で死ねるな。マトモな話をするマトモな相手が殆どいなかったらな、こういうのには馴れん。マトモな話をしたのは盗品の転売屋くらいか…………いや、マトモな相手じゃないか。

 自分の交遊関係の無さに沈んでいると、リリアナがゆっくりと歩く速さを落とし、横に並ぶと、

「なあ、義手を付ける気はあるか?」

 提案のような、確認のようなことを話し出した。

「ギシュ?」

 聞いたことのない単語があったので聞いてみる。付けると言うからには、良いものだといいが。

「義の腕だ、魔力を通していれば動かせれるぞ。いい物は感触を感じれる。温度は無理らしいがな。余談だが、製作者は名称を魔手にしようとしたが、イメージが悪いから無くなったらしい……まあ、どうでもいいか」

「動かすだけじゃなく、感触まで…………」

「気にしない方がいい。便利に越したことはない」

 義手……魔力で動かせる腕か、何か仕込めるか?隠密性と価格、複製のしやすさが気になるな。まあ、隠密性だけ聞いておくか

「なあ、それって目立つか?」

 リリアナは少し悩み、こう言った。

「そうだな……義手と知られれば目立つが、そうでなければ手袋をすれば殆ど分からない。本物の腕のような見た目の物もあれば、正面からの戦いのみを考えたタイプもあるからな」

 世の中には色々な物があるな。もしかして、盗みってハイリスク・ローリターンか?いや、まさかな。

「それにしても、意外に知らないのだな。価値のあるものは調べ上げてあるのかと思ったのだがな」

 驚いたように言った。

「いや、盗むもの以外は調べない。面倒だからな」

「さらっと自分の無計画を言うな…………」

 少し呆れたようだ。

 しかし、義手の話がなぜ今、リリアナが言うんだ?レイアなら付けて戦えとか言いそうなんだが?

「そんな物があるなら、どうしてレイアは俺を降ろそうとしたんだ?それなら足が飛ぼうが、腕が飛ぼうが戦えるだろ?」 そう言うと、リリアナは嫌そうな顔をして俺を見た。

「ついさっき目の前で腕を無くした相手に、腕を付けて戦えって言う。私としては、十分に外道の言うことに感じるがな。そう思わないか?」

「あー、嫌気が刺すな」

「そうだろう?あの人は負傷者を無理矢理戦わせない。普段はさがらせるんだ、本人の意思を問わずな。…………さっき参戦しようとしたら止められてな。勇者殿どころか、アークやセレナにも……」

 心底とは言わないが、不服そうにリリアナは言った。

 さっきのワイバーンの時に参戦しようとしたのか?当たり前だ、あんな怪我で戦えるわけがない。戦えたとしても、戦力外だ。一応何回か戦ったんだ、死なれると寝覚めが悪い。欲で裏切るようなやつじゃなさそうだしな。

「当たり前だ、あの状態で戦おうとする方がどうかしてる。肩の肉が焼けたんだぞ?剣が振れなかったら戦いは無理だ」

 うん。言うことははっきり言わないとな。言い回しを変えるような、器用な真似は無理だし。

「そうか……当たり前のことか…………だが、お前は腕を無くした。もし参戦していれば、違ったかもしれん」

「は?」

 リリアナの雰囲気と顔つきが一気に悲しそうな物になった。

「そうだな。『違ったかもしれん』じゃなく、『違った』な。ああ、あの時参戦していれば…………」

 戦いは無理と言ったのに……どうしてこの勇者一行には責任感が過剰なやつが多いんだ……もしかしたら、レイアとセレナもじゃないよな?リリアナは凛としてるから、責任感は切って捨てると思ってたが……意外だな。少し話題を変えるか。

「それはいいからさ、あのチェーンメイルを着てた盗賊は剣で倒したんだろ?やっぱり首狙いか魔法か?」

「何?」

 鎖帷子と言った途端、リリアナの顔つきが変わった。

「どうした?」

 何かおかしいこと言ったか?

「盗賊はリングメイルじゃなく、チェーンメイルを着てたんだな?」

 俺の肩を掴んで言った。

「音と感触からはそうだ。それがどうしたんだよ?」

「チェーンメイルは製作に手間がかかる高価なものだ。略奪品にしろ、盗賊の多数が持っているのは…………」

「不自然と?騎士崩れの可能性は?商人を襲った可能性もあるぞ?」

「それもあるが、疑った方がいいだろう」

 疑り深いな、職業柄か?衛兵みたいだし。まったく、疑うのが職業なのは嫌なもんだな。

「これは少し注意するか。まいったな、指以外も持ってくればよかった」

「指?」

「依頼の証拠品だ」

 どうやらギルドの対人間の依頼の証拠品は指らしい。首だとかさばるからか?指だけ渡す可能性もあると思うんだが、それは治安で分かるか。依頼、ギルド、街……そういえば……!

「なあ、夜間は街に入れないだろ?下手したら兵士のお出迎えだ、どうやって入る?」

 冷たい風が吹いた。話が聞こえていたのか、レイアの足が止まった。つられてこちらの足も止まる。

 そして、レイアは気まずそうに振り返った。



「…………やべえ、忘れてた」



 近場で野営をした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ