第31話
これまた微妙な所で終わった気が……
描写不足などをお知らせいただけると助かります。
しばらく歩くと、狼の死骸が散らばる道の中心に腰を下ろしているレイアたちが見えた。こちらに気づいていたようで、しっかりとこちらを見ている。そのまま歩くとレイアが話しかけてきた。
「よう、そっちはどうだった?」
「見ての通りだ」
狼に食いつかれ、服が血まみれだ。これは洗ったら落ちるのか?きっと、シミになるだろうな……
「そうか、首を…………魔具はどうだった?」
「ぼちぼちだ。殺傷力は申し分無いが、貫通させるには溜めがいる。まあ、ゴブリンや人間相手なら問題無さそうだ」
他にも攻撃が透明だから気づかれにくい。とかはあるが、言わなくていいだろう。それにしても──
「この狼、どうやって殺したんだ?この風穴は一体?」
レイアたちが倒した狼の死骸に、この手袋での傷とよく似た風穴がある。更に、それぞれの位置はバラバラだが急所を貫いている。
「ああ、これか。これはセレナがやった。────セレナ、説明頼む」
「え!?」
いきなり話を振られたセレナは驚いている。
レイアは説明が面倒なのか、どうやったか分かってないのか…………
「えっと、刻んだ文字を隠してはいますが、この弓は風の矢を作れる魔具なんです」
セレナは、一度で覚えれるような短さで言った。
分かってるなら言ってもよかった短さだよな、これ。それだけなら面倒じゃないだろう……
「付け加えるなら、この弓は同時に複数の矢を発射、連射もできます」
セレナに会って間もないが、この性格だとこうやって付け加えるのは珍しいと思う。
自分の戦い方を教えるってことは、警戒はされてないのか?
「え?そうだったのか?」
レイアが驚いたように言った。
…………お前は知ってないと駄目だろ、一応この一行の頭なんだから。
「へー。毎分何発ぐらいだ?」
恐らく一撃で狼の頭蓋に風穴を空ける。連射の度合いによっては、肉体強化でも危ないかもしれん。
「えっと、ちょっと待ってください…………9600発ぐらいですね。私の魔力と体力が尽きなければですが」
セレナが照れくさそうに言った。俺は固まった。
9600を60で割って……えーと…………学が無いのはきついな……160か?一秒に160!?死ぬ、確実に死ぬ。引き撃ちされたら終わりだ…………
「あ、威力は多少落ちますよ。あくまで支援なので、実際には多対一か多対一、その上破壊してもいい場所じゃないとそんなに撃てませんが」
少し残念そうにセレナは言った。
「それでも充分強い」
多対一、この一行を抜けるときになりそうな状況だな。その時には、誰かを盾にするか。
「もういいか?」
いつのまにか立ち上がっていたセレナが、埃を叩き落としながら言った。
「急いでるのか?」
歩くだけなんだから、ゆっくりでもいい筈だ。
「ああ、大陸に渡るって言ったよな?それには船で行くから、天気が変わらない内にな」
レイアが計画的なことを言った。これは大嵐だな。
「分かった。じゃあ行こう」
今の考えは心の中に閉まっておこう。船が沈んだら大変だ。
「魔具はどうでしたか?」
黙々と歩いていると、アークが話しかけてきた。
「レイアに言った通りだ」
これが無難だろ。ほとんど事実だしな。
「そうですか。しかし、あなたの戦い方には合わないのでは?」
その通りだ。あれは近接じゃなくて中距離、遠距離の武器だ。一気に距離を詰めて戦うための武器じゃない。「あの手の魔具は使えば使うほど、持ち主に合います。中には成長する魔具もあるそうなので、使い続ければ自然と馴染むようです」 アークは解説するように……解説か、これは。
「これからは主にそれを使うのですから、それに馴れないと怪しまれますよ──本当に長い間、魔具を使っているのか?と」
アークは真剣に言った。
よく分からないが、これは分かる────少しでも怪しまれ、属性がバレたら絶対に面倒になる。
「それは不味いな」
「でしょう?セレナさんほど使い込まなければ、ドラゴン相手には苦労すると思いますよ」
それっきり、アークは何も言わなかった。
ドラゴンか見たことないな。確か、ドラゴンの鱗を使った装飾品を、やけに厳重に保管してた貴族がいたな…………魔具の扱い、考えてみるか。
そんなことをふと、思った矢先。
「寄り道をして、明後日には港に着く予定だからな」 そう言うレイアは干し肉をかじっていた。
「分かったよ。それ、つくれるか?」 人が食べているのを見ると、自分も食べたくなるのはなぜだろう。
「ああ、いいぞ」
そう言うと、ポーチに手を突っ込み、
「────あ、無い。補充しなかったからな」 とんでもないことを言いやがった。
「無いって……さっきの街で買っただろ?」
王都を移す計画が囁かれるほど王都から港に近い国とはいえ、補充をしてないのはおかしい。
「いやさ、誰かさんが金を持っていったおかげで、船代しか無いんだよ」
レイアとセレナはジト目で、リリアナは刺すような目付きで、アークは諦めたような目で見られた。
俺が持っていった金か。……自業自得になるのかこれは。
「まあ、多少は返ってきたんだが、お前の服や、紛失した武器を買ったしな」
止めを刺すようにレイアが言った。
「──と、言うわけで。さっきの街で依頼を受けたんだ。依頼はさっきの街と、港の間に出没する山賊の討伐。あの傭兵の例もあるから魔具には気を付けろよ。ゴブリンにも持っているやつがいるらしい」
「なあ、魔具って魔物からしか手に入らないんじゃなかったのか?ゴブリンはモンスターだろ?」
疑問に思ったので聞くと、レイアは何か間違えてしまったように話し始めた。
「あー、最近はモンスターと魔物の区別が曖昧なんだ。まあ、どっちも同じように使われるな」
「なんだそれ……」
これには呆れてしまった。今までは、魔族に使役されている物が魔物。自然界に存在しているのがモンスター。その分け方が一般的で、それによってギルドでの依頼の難度も決まっていた。
「仕方ないさ。最近は人間以外は獣っていう輩も増えてきたからな。エルフやドワーフのような奴等もいるのに……きっと魔族が、違う種類が怖いんだろう……後々まで続きそうな問題だ…………」
レイアは心底まいった様子で俯いた。
これからの種族関係を左右できるかもしれない、勇者という役は相当重く、この事を深刻に思っているようだ。まあ、俺には関係ないが。
「まあ、何とかなるだろ。それより、山賊探しだ」
そう言うと、レイアは呆れたようにため息をついた。
「ああ……そうするか。けど、こっちは待つだけだ。探しても無駄だ、特に昼間はな」
探しても無駄、昼間は特に。ということは、
「夜襲待ちか?」
「言わなくても分かるだろ」
いや、違ったらどうするんだよ。
「詳しく言うなら、夜にはわざと見張り無し、その上寝た振りだ。…………朝になったら一人だけ死体だった、とかはやめろよ」
嫌味か、それは。
「じゃあ、進めるだけ進むぞ」
そう言い、俺の肩を叩くと歩くペースを上げた。