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第28話

駄文です……

 正しい意志疎通って大事なんだな。


「調子はどうだ?」

 暗闇を抜けると、自分がいるのは宿らしき部屋のベッドで、目の前に勇者がいた。

「あ……ああ、大丈夫だ…………」

 上体を起こそうとすると多少の痛みが背中に走ったが、それを除けば楽に起こせた。

 あの暗闇は何だったんだ?夢か?──いや、夢なら加速や落下の時の感覚はしないだろ。じゃあ、あれは事実か?だとしたら名前言っちまったのは…………改名するか?いやいや、あんな場所聞いたことがない。ましてや俺は街にいるんだ、夢だ夢。

「本当に大丈夫か、ランサム?」

 ………………夢、だよな?なんでランサムって呼んだ!?そう言ったのはあの夢の中で──

「ああ、あの暗闇の事で混乱してんのか?」

 軽く言うな!!こっちは焦ってんだよ!

「あれは所謂あの世だ。よかったな、俺が居なかったら死んでたぞ」

 …………得意気に何言ってんだ、こいつ?

「おい、その可哀想な人を見る目をやめろ!止め刺すぞ!!」

 俺がドン引きしていると、青筋がこめかみに浮かんべながら引く原因がキレてきた。気が短いにも程があるだろ…………

「悪かったよ。で、何で俺が生きて──」

「俺が助けたって言ってるだろ!」 最後まで聞かずに答えてきた。なんでこんなに不機嫌なんだ?

「違う、方法を聞きたいんだよ。あの世って事は、俺は死んだんじゃないのか?」

 背中にガラス片が埋まり、胸に風穴が空き、脚が潰れたのになぜ生きてるんだ、俺は?

「死んだよ。アークが治療したんだが、傷が治るとほぼ同時にな」

 レイアは思い浮かべるように言った。

「やっぱり死んでるじゃねえか……」

 今見てるのは何だ?死んだら生き延びた場合を見るのか?

「ここからだ。お前が死んで肉体が空になったから、聖霊に頼み、俺が入ってお前が肉体に戻るよう働きかけた。賭けだったが、成功した。以上だ」

 訳が分からん。まあ、気にしたら負けだな。

「そうか。賭けって言ったが、リスクってどれくらいだ?」

 聖霊がなんたらかんたらには触れず、引っ掛かった部分を聞いた。

「リスク?俺も死ぬだけだが?」

 ……………………勇者が死ぬ『だけ』?

「すまん、耳の調子が悪いみたいだ。もう一回言ってくれ」

「仕方ねえな。俺が死ぬだけだ」

「すまん、もう一回」

「……俺が死ぬだけだ」

「すまん、もう一回」

「俺 が 死 ぬ だ け だ !」

「すまん、もう──」

「うぜえ!!」

 綺麗、かつ鋭い右ストレートが顔面に刺さり、上体だけ起こしている俺を、ベッドに叩きつけた。

「い゛……つっ〜〜!?」

「何度も聞き返すな、蹴り飛ばすぞ!!」

 蹴られはしないが、殴られたな。いや、それよりも言わねば、俺の生活のためにも!

「あのな?お前まで死んだらどうする気だ!?」

 鈍い感覚の残る顔を押さえながら上体を起こし、言った。

 勇者が死んだら代わりはいない。魔王がいるか不明だが、対抗できるやつは死なない方がいい。死なれると稼業が不味い、盗まれる側の物が無くなる。

「そん時はそん時だよ」

 笑いをながらレイアは言った。

 こいつ……何考えてんだ?

「まあ、成功したからいいだろ?そんな事言ったら一人で殴り込んでこうなった、お前も大概だぜ?」

 ん?

「気絶させられた上、衛兵なのに置いてかれたリリアナはかなりキレてたんだ。説教がありそうだな!」

 ケラケラと楽しそうに笑うレイア。

 話が噛み合って無い気が……。衛兵を逃走に連れていく犯罪者?アホか。それに、リリアナには説教どころか斬られたわ!

「まあ、魔具も手に入ったからいいだろ」

 そう言うと、レイアは懐からあの忌々しい手袋を取り出した。

「魔具?なんだそれ?」

 今までに聞いたことの無い単語だった。

「ああ、王都にずっといたお前は知らなかったか。最近、魔物が使う付呪武器が付呪じゃ無いことが分かった。あいつらは武器や防具に特殊な呪文を刻み、魔力を流す事により効果を発揮する特殊な物、魔具にするんだ。」

「付呪武器とはどう違うんだ?」

「魔力を流して発動するから範囲や威力の調整が利く。欠点は使わないと効果が分からないのと、持っている奴が極端に少ない」

 レイアは得意気に言った。

 それを聞いた俺はこの事しか考えれなかった。

「つまり……高く売れるってことか!?」

 きっと今の俺は目が輝いているだろう、欲の光だが。

「……あ、ああ、物にもよるが結構高値で売れるぞ。売却には安全管理上、戦士ギルドを通さないといけないが」

「よし!行くぞ!売るぞ!」

 そう言い、ベッドから勢いよく立ち上がると、

「おい」

 少し強めに背中を叩かれ、

「──ぐ!?」

 刺すような激痛に襲われた。

「ガラスは抜くのにアークの水魔法で場所を調べるんだ。けど、他の傷を治すのに魔力を使ったから今はまだ無理だ。明日になったら調べるくらいは出来るだろうから抜いてやるよ」

 そう言うとレイアは俺をベッドに寝かせると、なぜか俺の枕元に手袋を置き、部屋を出ていく。が、扉を開けると立ち止まり、

「ああ、目印とはいえ、派手すぎる狼煙はあれだけにしてくれよ」

 苦笑いしながら出ていった。

 目印?狼煙?ああ、俺の家の火災か。多分、この手袋はちゃんと使いこなせってこともあるだろうが。

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