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第26話

 一瞬、何が起きたのかわからなかったが、うつ伏せに倒れた体と、体温が抜ける感覚が教えてくれた。

 奇跡的に心臓や肺は外れたが太い血管や気管をやられた。更に、背骨が吹き飛んでる。胸から下が動かない…………とりあえず止血を。

 俺が咳き込みながら穴を必死に治そうとしていると、男は気色の悪い笑みを浮かべながら両手をこちらに向けた。さっきより手袋の模様の発光が強い。どうやら、止めを刺すらしい。……せめて、道連れだ!

 無駄な治癒をやめ、腕に強化を集中する。そして、腕力だけで思いっきり飛びかかる。

「くっ!?」

 驚いたようだが、男は手袋からのナニかを放つ。俺はあいての首に食らいつく。あいての放ったナニかは俺の足を潰したが、もう遅い、俺は既に男の両肩を掴んでいる。勢いよく引き寄せ、男の首に食らいつく、肉を噛みちぎる。それを吐き捨て、再び食らいつく。何回も繰り返すうちに、男は前から背骨が見えた。俺は胴体の風穴が増えた。これじゃあ自己再生は無理だ…………ああ、死ぬんだな。こうなった成り立ちを思えば、散々な人生だった。


 貧民街で産まれ、父は不明。母は俺を捨てた。そして物好きな盗人……『あいつ』に拾われ、盗みの技術や貧民街に外があること、家族を教えられた。俺には『あいつ』に親みたいだと言った。

するとあいつも息子みたいだと言った────けど違った。十二歳になった時に殺されかた、その時に『あいつ』は言った「お前を育てたのは家族として成長した後に殺し、自分の感情の変化を観察するため」だった。それは夜の出来事だった、そして『あいつ』は酒を飲んでいた。盗みの技術がある以外は普通の子ども、それなら殺せると思ったんだろう。けど、俺は普通じゃなかった。だから『あいつ』を殺し、家を奪った。

 その後は盗みを繰り返した、強盗もした。そして同業者……『そいつ』に会った、『そいつ』は同年代でいいやつだった。けど、ある貴族の家に盗みに入り、いつも通り分け前の配分を始めると、にダガーを突きつけてこう言った「分け前が減るから死んでくれ」けど、『そいつ』は俺より弱かった

 それからは手を組もうとしてくる奴を殺しまくった。殺して、殺して──完全に一人になった。

 勇者に会った時、正直羨ましかった。心から慕う関係、快楽や金が人生の中心である俺とは違った……。属性が物語るように勇者は光の頂へ、俺は闇のどん底へ。

 勇者達から逃げた。稼業は楽しい、続けたい。けど、そんなことは本意じゃなくて、本当はあの生き方が羨ましくて、眩しくて、認めたくなくて逃げたんだ。こういうのを素直な思考っていうのか?死ぬ寸前には素直になるのか、珍しいもんだ。

 思い返せば返すほど、ろくでもない人生だった。…………やっぱり稼業は続けたいな。



 力が抜けて目を閉じる瞬間、音が聞こえた。踏み出した音と、何かが爆発したような音。そして、

「大丈夫か!アーク!治療を!!」

「はい!」

「貴様……あんな魔法程度に…………」

「リ、リリアナさんも手を貸してください!」

 羨ましいやつらの声が。何で助けようと?まったく、どこまでお人よしなんだ……

 慌ただしいやつらの声を聞きながら、意識が太陽のように落ちていった。

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