第18話
やっと時間が取れた…………
貧民街は危険だ、グループを組んだチンピラや人拐い、裏社会の組織の数が遥かに多い。だが、それを何とかできれば絶好の隠れ場所になる。
「まずは住む場所だな」
貧民街の奥、ここに住んでるのはロクな人間がいない──まあ、金には正直なのばかりだが。
場所を買おうにも夜なので、やはり朝まで待つのだが寝るところがない。
なので家を奪うことにしたが、裏社会の組織の一員の家を奪うと、舐められたとかで裏社会にも追われることになり、孤立する。そこで、寝たフリをして自分を襲わせ、そいつから家を奪う。それならば、物分かりのいいやつが多少いればなんとかなる。
演じるのは捨てられた子供、いかにも弱そうなのを。
「あぁ、シチューが食べたいな……これからどうなるんだろう…………」
その場に寝転がった。
「母さん……」
そして無警戒に目を閉じる
さすがに誰かが気付いただろ、後は夜間に襲いにくるか、それとも朝まで動きが無いか五感を強化しながら待つだけだ。
こそこそと足音が近づいてくる……大人。2人か?チンピラだな。裏社会の奴等なら単独で殺そうとしてくる。
二時間も待たせやがって、家持ってんのか?
「おい、このガキは金持ってんのか?」
「わかんねえ、持って無かったにしても人売りに売れば良いだろ?珍しい髪の色だ、高く売れるぞ。────それに子供なら男でも関係ない、躾といてやれば値が張るだろ」
「へへっ、そうだな。じゃあとっとと終わらそうぜ」
チンピラ達は俺をどうするかの会話をすると、足下と頭の上の方にゆっくりと近づいてきた。
あと五歩というところで足音のリズムが少し止まる……飛びかかる気だ。
「行け!」
掛け声と共に、大きな足音が1歩。
その瞬間に目を開け、肉体強化をして体のバネを使い、頭の上の方のチンピラに逆さまで飛びかかる。
「え!?」
「が!?げ…………」
そのまま、あっけにとられたチンピラの喉仏に右手の指をまとめて突き刺し、一気に指の間を開けると、水が沸騰したような音を喉から出しながら仰向けに倒れた。
「ひっ!?」
喉から指を抜きながら爪先を、逃げようとしたチンピラを向けて着地すると、投げナイフを二本投げつける。
投げられたナイフの一本は、その鋭い刃先で狙いを寸分違わずに相手の左膝の皿を砕き、機動力を奪う。
もう一本は相手の左肩に深々と突き刺さった。
「ぎ……ああぁぁぁぁ!──ぐっ!?」
そこで叫んだので、力強く踏み込むと、みぞおちを殴り、黙らせる。そして、
「さあ、今から言う要求に答えてもらおう。答えれば手当てしてやる」
右手で喉に短剣を押し当て、左手で相手の右肘を固める。
「分かった!分かったよ!何でも言ってくれ!」
チンピラは目に涙を浮かべながら懇願した。
「お前の家と特徴を教えろ、その周辺のめぼしいものと、そこに住んでいる人数も」
「俺の家はここから北に百メートルほどの所だ!南に二十メートル程に金属の赤いドアの建物に、傭兵団の隠れ家がある!俺の家は木のドアのレンガ造りの小さな建物!そいつと俺以外は誰もいない!」
すらすらと答えてくれた。楽でいいな。
傭兵団の隠れ家か……まあ、夜に出歩けば問題ないだろう。
「言っただろ!?早く手当てしてくれ!」
うるさいチンピラだ。
「分かった、すぐに楽にしてやるよ」
ナイフで喉を引き裂くと喉を押さえようと必死にもがいたので、固めていた右手を折り曲げ、投げナイフを抜いた後に退いてやる。
するとのたうち回り、少しすると動かなくなった。
死体を一別し、簡単な武器の手入れをしつつ、新居に向かった。