第11話
変な所で終わった……。
1万PV……ありがとうございます!
勇者一行が王都から二刻ほど歩き、森へ入ろうとした時にセレナが立ち止まった。
「──モンスターが30メートルほど奥にいます。おそらく10体だと思います」
そして、静かに、丁寧に言った。
「さすが弓兵……。なあ、全部倒すか?」
ランサムが短剣を抜きながらレイアに聞いた。
「ああ、けどお前の実力見てみたいから一人でやれ」
レイアはのんきにあくびをしながら言い放った。
「ええ、幸いアークがいるので、肉体強化で治せない怪我をしても治せますから」
リリアナは、ランサムが眼球を再生したのを無かったことにしていた。
「無くなった部位は生やせませんけどね」
アークが付け足すように言った。
「ああ、分かったよ。もし危なくなったら助けてくれよ?
ランサムはうんざりした顔で森へと歩き出した。
気配を消し、奥へ進むと、そこではガリガリで不健康そうな肌の色をした、小柄な人型モンスター────ゴブリンがお食事中だった。
それらはどうやら行商人を襲ったようで、近くに中から商品らしきものが散乱した馬車が見える。
15メートルほど先で取り合うように商人の死体をむさぼっているのが5体。10メートルほど先で馬車をあさっているのが3体。5メートルほど先に会話をしているらしき2体。
ランサムはまず手前の2体に近づいた。
両手に肉体強化をしてから、両手に投げナイフを1本持つ。
そして、3歩ほど進んだところで右手で片方に投げナイフを投げつけ、手際よく左手から右手にナイフを渡し、もう片方にも投げつける。
そして、それは放物線をほとんど描かずに、2体の頭に深々と刺さった。
ゴブリンは、傷口から血を少量流しながら崩れ落ちた、ランサムはそれが地面につく前にそれぞれの首を掴んだ。
そして、それを馬車にむけて力強く投げると、短剣を抜きながら、食事中のゴブリン向かって走り出した。
投げられたゴブリンは、投げられた衝撃で首がねじ曲がり、あらぬ方向を向き、仲間へと突き進んだ。
馬車にいたゴブリンは、ぶつかる寸前に気づいたがよけれずに、全身から木が強風で倒れるような音を立てながら馬車の奥へ突っ込んだ。
ランサムは状況が理解できていないゴブリンの集団の中心へ、飛び込んで短剣を横薙ぎに振るい、4体の首をはね、噴水ができると同時に、左手でもう1体の顔をしっかりと掴むと、ゴブリンの頭が手から出た魔力で破壊され、中身が飛び散った。
そして、馬車の中でうごめいているゴブリンを馬車の外へ放り出し、そこで止めを刺した。
「────終わったぞ!」
森の入り口へ歩きながら知らせた。
「────まったく、簡単にやったな。」
レイアがゴブリンの死体を横目で見ながら言った。
「最後のは何をやったんですか?」
セレナが不思議そうに聞いた。
「ああ、握り潰すのが気持ち悪いから、魔力で相手を弾き飛ばすのを掴みながらやったんだ。密度を極端に高めるのは苦手だけど、一部に溜めて、放出くらいならできるから」
ランサムは、最初の2体から投げナイフを回収しながら言った。
「溜めるのと密度を高めるのは違うのか?」
リリアナが怪訝そうに聞いた。
「なんと言うか…………留めるのが溜めるで、圧縮するのが密度を高めるなんだ。だから、肉体強化で密度を高めでもしたら、体内に空洞ができる。けど溜めるは、染み込むみたいな感じだから問題が無いんだ」
ランサムは装備から血を拭いながら言った。
「放出しても衝撃波みたいにしかならないから、相手を固定しないと、弾くしかできないんだ」
今度は、短剣の刃の具合を見ながら言った。
「武器が好きなんですか?」
ランサムを見ていたアークが、確かめるように言った。
「────まあまあだ」
さっさと短剣を収めながら言った。
「……そうですか」
納得した表情でアークは呟いた。
「さあ、こいつらの仲間が来るまでに行くぞ」
ランサムが言うと、
「この馬車はどうするんだよ?」
レイアが止めるように言った。
「どうするって……必要な物もらってからは放置に決まってるだろ?」
場の空気が凍った。