第10話
すいません、同窓会などで忙しかったので遅れました。
同じ大きさに切られた石で丁寧に造られた巨大な壁の間に、王都の出入口の一つはあった。
それは普通の建物より大きく、表面を魔法で幾重にも守られている両開きの木製の扉で、所々に金属で装飾が施されている。
「――――はい、これが道中にある砦の通行証です。再発行はここでしかできませんので、くれぐれも無くさないようにしてください、勇者様」
「ああ、ありがとよ。王様にはよろしく言っといてくれ」
その前で、勇者一行は都から出る手続きをしていた。
「さあ、行くぞ。」
レイアは、まるで子どものように笑いながら後ろを振り向いて言った。
「ああ、夜までには野営ができるところに行きたいしな」
それにランサムが嫌そうに返す。
そして一行は、送り出すように開けられた門の間を歩いて通り、長く、辛いけれども楽しい旅が始まった。
半刻ほど歩くと酒場にいた女性が立ち止まった。
「――――そろそろいいだろう、お前は何者だ?」
ランサムにサーベルを構えながら言う、
「なぜ闇の属性なのに人間なんだ?擬態でもしているのか?」
続けて淡々と問いかけた。
「いやいや、前例が無いだけで魔族扱いしなくていいだろ!」
ランサムが焦りながら答える、
「魔王討伐という大仕事に、いきなり闇の属性を持つやつが入ってきて怪しまないわけが無いだろう?」
女性は訝しげに聞いた。
「あ〜、それはレイアに聞いてくれ」
ランサムはそれに苦笑いしながら答えた。
「レイ……!?なぜ名前で呼んでいる!」
女性が驚きながら言った。
「お前が言うと気持ち悪いから、勇者様って言うなって言われたんだよ」
ランサムがため息をつきながら返した。
「――――それもそうだが、なぜ名前なんだ?」
気持ち悪い発言には同意のようである。
「…………苗字で呼ぶのが面倒なんだよ」
軽くへこみながらランサムは言った。
「…………いいんですか勇者殿?」
女性が聞くと、
「堅苦しいのは嫌いだからな」
それにレイアが軽く答える。
「勇者殿がいいなら……。話がそれました、なぜ彼はいるんですか?」
ランサムを横目で見ながら言った。
「ああ、こいつは盗人なんだよ。けど、この属性のせいで表社会に出れないから魔王を倒して、魔族じゃないのを証明して、足を洗いたいんだってよ」
ランサムが、微妙に言った覚えの無いことを言ってくれた。
「……そうゆうことだよ」
しかし、指摘するわけにもいかずに同意した。
「そうか…………名前は?」
納得した様子の女性がサーベルを降ろして問いかける。
「――ジョン=スミスだ」
ランサムは内心、偽名がバレないかどうかの不安で心臓が破裂しそうだった。
「ジョン……か、リリアナ=ジープランだよろしく頼む」
幸いにもバレなかった。それとも、気を使ったのだろうか。
そして一行は再び歩き始めた。