さまよえる刃
居場所のない学校から逃げ出した僕は、制服のまま薄暗いゲームセンターに流れ着いた。座り込んだ筐体に、なけなしの硬貨を落とす。
光るモニターに映るのは、貧弱なロボット。そのロボットが手に持っているのは鈍く光る短いナイフ。
僕は戦うしかない。輝く立派な剣ではなく、ナイフで。
なんでもない、何者にもなれない僕は戦えるだろうか?知りもしないゴールまで。
夏の空の下、花束を持って歩く。道は長く、先は見えない。
大きすぎるセカイの中で、いつしか僕の心は空洞になって、涙さえ嘘の仮面のように感じられた。そんな思いさえ、言葉に出来ずにいた。
ただ僕は自分の分からない心に沿うように、いつも刃を忍ばせていた。
そんな時、僕は君に出会った。君と出会った僕は、空洞にあった筈のものを思い出していく。
特別じゃなくていい。特別なんていらない。ただありふれた時間だけで良かった。
でも、君は最初から特別だった。出会った時から、君の結末は変える事なんて出来なかった。ただ僕はまた自分の無力さと、大きすぎるセカイを呪った。それと同時に僕は本当は、君が怖かった。
僕らは似ていて、なんでもなくて、何者にもなれないと思っていた。
君は僕の結末だった。君は、白い部屋のベッドから見える小さなセカイの景色を大切にしていたけれど、それがどうしようもない諦めなんだと僕は知っていた。
君へ贈る筈だった花束を空に投げる。色とりどりの花びらが散る。
僕は君への想いが、どんな言葉に当てはまるのかさえ知らない。
モニターの中のロボットは、ナイフを振るう。大きすぎるセカイの中では、なんて小さく非力なんだろう。
それでも僕は進むしかない。君は進むしかない僕を置いていく。生き方なんて教えず、死に方だけを残していく。僕は戦えるだろうか?知りもしないゴールまで。
さまよう心のまま、刃だけを手に。
幾つか物語を書いてきましたが、本当はこの物語が書きたかったのかもしれません。
掲載先が無くなり、行き場の無くなってしまった物語ですが、ここに残しておきます。




