#1 怠惰
時刻は深夜2時、夜勤バイトじゃ一番眠くなる時間だ。客も来なけりゃ品出しだってない。暇つぶしにも日々の消費で限界はくる。
しかしだ、君達。こんな時にもオアシスを求める心を持たなくてはならないんだよ。まあそんなもの存在しないのだが。
最近の話だが、夜勤のバディが俺がレジをしている時に急に奇声を上げ発狂しながら店を出て行き、そのまま失踪してしまったのだ。まあおおかた話に聞いていた彼女に振られたことによるものだろうと思い、そのままバイトを完了させた。失踪まで行くとは思わなかったが。早朝バイトくんにシフト交代の時に聞いた噂によるとヨリを戻したらしい。オメデタ迷惑なヤローだ、全く。
しばらくワンオペになる思ったが、思ったよりも早く人員が補充された。それが今のバディである村本くんだ。
彼は非常によくできた青年だ。仕事はできるしなんならバイトなのに気合いが入りまくっている。入りすぎて爆発するんじゃないかと前回失踪された身としてははヒヤヒヤしていた。しかしそんな心配をして早1ヶ月が経った。
熱は徐々に平熱へと進み、すっかり夜勤という名の泥湯に浸かり切っているようだ。光がすっかり失われた瞳に魂のない声。まさに夜勤である。
ところで1ヶ月ほど一緒に仕事をしているうちに、村本くんから夢を語られた。なんでもバンドマンを目指しているとのこと。深夜2時の暇な時間に嬉々として聞かせてきたので、なんとか理解しようとしたが俺はバンドに全く造詣がないので、神妙な面持ちでやり過ごすしかなかった。定期的に聞かされるのでそろそろ「僕はバンドに興味がないヨ!」とでも伝えようかと思っている。」
こうして新しい仲間と日々を過ごしているというのに肝心の日々とやらは全く変わってくれやしない。いい加減変わったらどうだい、いつまでも怠惰なのはどうかと思うよ、日々くん。
毎日5時くらいに起きて10時くらいに寝る生活は、もはや夜行性に還ったように感じる。一体俺はいつまでこんな生活を続けなくてはならないのか。
怠惰だ。日々を取り巻く怠惰がならんのだ。まるで怠惰に日々をカツアゲされている。なんとかしなくては、俺はこの怠惰に殺されてしまう!
 




