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僕のループは流石にめんどくさいので抜け出したいと思います。

エピソードを間に入れたかったので再投稿しました。

あと、投稿時間ミスってたんで12時ではなく13時に投稿しました。

また、この朝が来た。

2024年4月9日、午前6時45分。 今日は、新利根市立新利根中学校の入学式――4度目の。


布団の中で天井を見つめたまま、深く息を吐く。

カーテンの隙間から差し込む淡い朝光と、微かに流れ込む風の匂い。


「……また、この日から始めるのか…。」


重い体をゆっくり起こして、部屋を見回す。

机の上にある一枚の紙。それは、前のループでも見た、見慣れたもの。


『中1で達成させたい目標』

・友達をたくさん作る

・テストで80点以上取る

・部活を3年間続ける

・中学校生活を、後悔しないように楽しむ …など


その下に小さな文字で、こう書いてある。


『目標を達成できなかったら、達成できるまでやり直す』


本当にこいつのせいでループしてしまってるのだとすると、なぜ僕はループしてしまったのだろう。

最初の人生では部活はやめなかったけど、なんで最後まで行くことができたんだろう。


最初のループでは6月にやめ、さらに、6月に退部届を出して、投げ出した前回。

悔しくて、情けなくて、でも何も言えなかった自分。

胸に残った苦味は、今も消えていない。


3度目のループ。下手したら、これが最後かもしれない。もう一度はないかもしれない。だから今回は、慎重に、確実にやらなければ。


朝食中、母の言葉が妙に新鮮に聞こえる。

聞き慣れたはずなのに、まるで初めて聞くような不思議な感覚。


「制服、ちゃんと着ていくのよ。ネクタイ曲がってない?」


「……うん、大丈夫。」


僕の返事さえ、どこか違っている気がした。 前よりも、少しだけ前を向けているような。ループを抜け出せるような…。


いつものように「いってらっしゃい。また後でね。」と見送られたあと、1.5kmの道を歩いて学校へ向かう。


今日はあいにくの雨。傘を差しながら歩いていると、


「よーすけ! おはよ!」


後ろから元気な声が飛んできた。

振り返ると、リュックを背負った愛美が駆け寄ってくる。


「陽介と同じクラスになったことないから、同じだったらいいねー。」


「……まあ、どうせ僕は1組で愛美は5組とか、だろうけどね」


前回もその前もそうだったから当ててやろうと思ったのが間違えだった。


「えっ、なにそれ。同じクラスになりたくないってこと?」


しまった。怒ったかも…。


「あ、いや、そうじゃなくて、いつも違うから……あはは」


「むー」


怒られてるけど、なんか可愛い怒り方だな、と内心思いつつ、会話を続ける。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


学校に着き、昇降口前のコンコースへ行くと、桜が満開で、その奥をニュートキワエクスプレスが通り過ぎていくのが見える。雨の中でも、不思議と気持ちは前向きだった。


昇降口前の張り紙を見ずに、下駄箱へ向かい、教室へと向かう階段を慣れた足取りで昇る。

3階の1-1教室。吹き抜けの天井から光が差し込む明るい教室だ。


「おはようございます。」


岩田先生に挨拶する。すでに何度も顔を見てきた吹奏楽部の顧問でもある先生だ。

席につき、配られた教科書やヘルメットを眺める。

周囲に知り合いはいないけれど、不安は少ない。


やがて学年初の遅刻野郎、栗林がやってきて、健康観察が始まった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


入学式。1組が先頭となり入場する。


吹奏楽部の演奏が体育館に響き、新入生たちの入場を彩る。

演奏は明るく華やか。僕はこの曲の原曲を知っているが、その曲よりも力強く、まるで新たな一歩を背中から押してくれるような響きだった。


入場も終わりだるい式が始まった。

特に校長の話は長かった。つまらないし、長い。早く終わりにして帰りたいという気持ちを持ったのは何回目だっただろう。

それに引き換え、まだ生徒会長の話は、まだ面白さがあった。 しかし、これも長い。めっちゃだるい。


ループしても、この長さとだるさは変わらないらしい。

寝ている奴もいるがしょうがないだろう。後で怒られるだろうけど。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


案の定、教室に戻ると、先生は式中の居眠りや私語を咎め始める。

この様子も、「変わらないな」と心の中で思った。


そして、体験入部の案内用紙が配られる。

変わらない中だが、絶対に変えたくないものもある。部活は吹奏楽部以外、絶対あり得ない。

僕はあの宮坂先輩に追いつきたい、一緒に部活したいと思っている。キモいだろうけど、僕は前回や前々回のループの時の宮坂先輩が大好きだ。


色々あったがついに4回目の入学式が終わった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


帰宅後、紙を見直すのが習慣になっていた。


『部活を3年間続けたい』


……その一文が、今の僕の目標だ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


翌日、4月10日。


自己紹介の時間。

出席番号順に進み、最後に僕の番が来た。


「和田陽介です。新利根小学校出身です。好きな曲は、今年の吹奏楽の課題曲です!」


教室がざわめく。先生が驚いた顔で、


「吹奏楽、好きなの? 入るつもりなの?」


「はい!トロンボーンをやりたいと思っています!」


今のうちに言っておいた方がいいと思って言った。

なにせ、今のところどのルートでも結局トロンボーンになることは知っているのだから。


その後はレクリエーション。少しずつ、クラスの空気に馴染んでいくことができた。


= = = = = = 同日・放課後 = = = = = =


私は、今日もフルートの手入れをしていた。今日の部活動は体験入部の準備。使える楽器を探すのが、私の担当。


作業はすぐに終わったから、あとは練習。課題曲の2ndパート。

メロディじゃないから、合わせるのがちょっと難しい。まあ、すでにこの曲マスターしてるんだけどね。


とりあえずBまで、今日はそこを重点的に練習する。


……でも、ふと考え始めてしまう。


――今回のループで、和田くんが目標を達成したら、私は……


「……助かる、のかな」


女神様の和田くんの目標を使うという考えは分からないけど。

でも、今回こそは……。


そんな時、先輩に呼ばれた。


「おーい、ミーティングの時間だよー!」


「あ、はーい!」


私は楽器を片付け、音楽室へ向かった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


4月11日。部活見学の日。

今日は“見学”だけ。本格的な体験は来週から行われる。


そんな朝。角を曲がったところで、誰かとぶつかった。


「大丈夫? 和田くん。」


思わず声をかける。


「大丈夫です。そっちも……?ん?」


何か考え事を始めたような和田くんを見て、私は素早く女子トイレに身を隠した。


和田くんは考え事をすると、いつも周りが見えなくなる。

その隙を、私は知っていた。


「……まだ、助けてくれないのかな…。てか、名前知らないはずなのに和田くんって言っちゃった!あ〜どうしよ〜。」


と極力小さな声で騒いで、冷たい水で顔を洗い、また教室へと戻った。


= = = = = = 同日・1分前 = = = = = =


今日は部活見学の日。めっちゃだるい空気に流れている朝。ぼーっと歩いていて、角を曲がったところで、誰かとぶつかった。


「大丈夫? 和田くん。」


と声をかけられた。見てみると、あのフルートの先輩だった。


(あれ…?なんで僕の名前を…?名札を見て…?)


めっちゃ不思議に思って聞いてみようと我に帰った頃にはもう先輩はいなくなっていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


とりあえず、今日は部活見学の日だ。吹奏楽部以外あまり興味はないが、クラス単位で各部活を見て回るのでしょうがない。また、1つの部活につき、5分しかみれない。

吹奏楽部では、短い5分間の演奏時間に全力を注いでくれた。


その音に、胸が打たれる。

何度も聞いたことのあるはずの曲なのに、心が震えた。


演奏していたのは、あの三枝、千尋先輩、そして――

フルートの、あの先輩。


「……やっぱり、あの中に入りたいな」


どれだけ前のループで挫けたとしても。

今度こそは、変えられる気がする。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


机の上の目標リスト。


『部活を3年間続けたい』


この夢を諦めない。

そのために、僕は頑張っていい方向へと進めるしかない!


= = = = = = = = = = = =


今日の演奏の時、和田くんを見つけた。


演奏を見ているその目が、まるで初めて見て、聞いたように輝いていた。


私は自分の部屋のベットに寝っ転がって天井のLEDに向かって手をかざし、こう言った。


「ねぇ、女神様……。今回は、うまくいくと思う?」

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-著者 宮本葵-
茨城県のつくばエクスプレス沿線民。最近、よく会う友達(と呼べるのかわからない人)に「小説家じゃなくてただ物を書いてるだけだろ」とディスられたので、ピリピリしている。目指すは有名小説家!ですが、テストという大きな壁に妨害され結局はただ物を書いている人になってます。現在は5作品の小説を執筆中!

宮本葵の他作品
誰も信用できなくなった俺の前に、明日から転校してくる美少女が現れた。
シェア傘ラプソディ♪
Silens&Silentia シレンス・シレンティア
最後の7日間 〜吹奏楽コンクール県大会まで〜
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