うっちー編
◆仕事
うっちーはその日、大きめの紙とにらめっこしていた。ももらは、そんなうっちーを遠くから見つめていた。アクシーがそれを発見し、何を見てるのかと尋ねた。
うっちーは、「ユーロ」と他の戦闘組織が戦うとして、どんなメンバーが行くことが効率が良いかをいつも考えている。数多ある組織やユニーク・テクニックと「ユーロ」の組み合わせは膨大だ、それを考えるのは大変そうだ。そんな大変な作業をしているうっちーは凄いと思ったので、つい見つめてしまったと、ももらは答えた。
アクシーは、確かにその作業のおかげで余計なアビリティを使わずに戦うことが出来、助かっていると言った。
ももらは、遠くから見てるだけではなく、この気持ちを直接伝えたくなったと言い、アクシーと別れた。
そして、うっちーにうっちーは凄い、そんな中で喧嘩の仲裁もしていて大変だと言った。うっちーは急なももらからの仕事への高評価に照れた。その上で、ももらから「ジャスティス」をもらったあとは作業が捗っているかもしれないと高評価を返した。
しかし、うっちーは今日の作業はなかなか難しくて頭が爆発しそうだ、外の空気を吸うついでにまだ見ていない戦闘組織の戦力を把握しに行こうかと思ってると言った。
◆偵察
ももらは、うっちーの偵察を兼ねた散歩に一緒に行っていいかと言った。うっちーは珍しいとしながらもそれを受け入れた。うっちーは愛用の双眼鏡を持ちながらももらと出掛けた。
ももらはうっちーの双眼鏡は、章平の作ったユニーク・テクニック判別機だと章平自身から聞いたことがある、一度覗いてみたいと言った。うっちーは、自分を対象に覗かせてくれた。すると、うっちーの顔の付近に「(属性)バックラー」、「(ユニーク・テクニック)ダザル」と表示された。ももらは章平の言ってた通り、感動したと言った。
うっちーはそういえばとしながら、偵察の帰りだった、ももらと道でぶつかったのはと言った。ももらは、驚き、楽しそうにあの時の話を振り返りはじめた。
そうしながら歩を進めて行くと、うっちーがまだ偵察していない戦闘組織の拠点に辿り着いた。その戦闘組織の名前は「スティール」。早速戦闘能力の情報収集をうっちーは始めた。
すると、うっちーの顔色が徐々に青ざめていく。ももらは、うっちーの体調が急に悪くなったのかと心配し、声をかけたが、うっちーは、違うといった。この「スティール」は、ハルバード属性の者だらけでバックラー属性の者が見あたらない、おそらくバックラー属性の者は皆無だろうと、震える声で言った。
更に、気分転換に来たのだが、酷いものを見せられてしまったと続けた。情報をとったため、「ユーロ」の拠点に戻ろうとし、ももらとうっちーは歩を進めていたが、うっちーを背後から捕まえる者が。そして、捕まったうっちーを解放しようと不用意に敵に近づいたももらも拘束されてしまった。2人を捕まえたのは、他でもなく「スティール」の戦闘員であった。
◆人質
「スティール」の拠点に連れてこられたももらとうっちー。「バックラー倉庫」と呼ばれている牢屋のような大部屋に2人は投げ込まれた。「管理人」と呼ばれている戦闘員の男が新品のバックラーが来たと笑った。
うっちーが自分たちは別組織の者、「スティール」のメンバーになるつもりはないと言ったが、管理人は、そんな立場になる必要はない、今からお前たちは「人質」という名の「盾」、そう言った意味でのバックラーとして働いてもらうのだからと再び笑った。
管理人は、ひととおり笑った後、ももらを見て、かわいい女だ、「盾」ではない使い道がありそうだなと、ももらを舐るように見まわした。うっちーはももらを隠すように前に立ち、そんなことはさせないと鋭い目で管理人を睨みつけた。怖い目だとし、管理人は撤退していった。
その後、うっちーは頭を抱えた。自分のミスで「ユーロ」に迷惑をかける。そして、ももらにまで迷惑をかけてしまったと。
ももらは大丈夫とし、自分も「ユーロ」の足手まといになってしまったと気を落とした。
しかし、この状況を解決する方法が考えつかず、ただただ「倉庫」の中で2人は時を過ごすことになる。
◆小さな戦意
一方、「ユーロ」の拠点では、ももらとうっちーがなかなか帰ってこないことで何かがあったと断定。蒼虎はじめメンバーは捜索活動を始めた。
そんな中ではあったが、捕まっているうっちーの方はやぶれかぶれになり、双眼鏡で遊び始める。「倉庫」にいる「盾」の人々の戦力を判別していった。バックラーだけではなく、ハルバードの者もここにいるとつぶやいた。
ももらもそんなうっちーに同調し、双眼鏡を使ってうっちーと同じ風景を見る。すると、幼い男女一組を発見する。ももらは、そのことに衝撃を受け、うっちーに言った。うっちーも嘘であってほしいと言いながら、話をしに行こうとその子供たちの所に行った。ももらもそれについていった。
ももらとうっちーは、その子供たちにはじめ警戒されていたが、話を聞くことが出来た。この10歳を下回ると思われる子供たちは、いずれもハルバードの姉と弟で、バックラーの両親と共に小さな戦闘組織を結成し戦っていると。
どこからともなく溢れ出る思いをももらもうっちーも止められなかった。その思いとは、子供たちを両親の元へ返してやりたいということ。
◆救出
「ユーロ」のメンバーは、フォースの気配を「スティール」の拠点から感じ、ももらとうっちーが捕まってしまったと推測。不本意ではあるが、侵入、場合によっては「ユーロ」側からの攻撃を伴う救出作戦の検討に入った。
一方その頃ももらとうっちーもフォースの気配から「ユーロ」のメンバーたちが付近にいることを感じた。
しばらくして「スティール」の拠点内が騒がしくなる。8人組の侵入があったと遠くで聞こえた。ももらとうっちーは顔を見合わせた。そして、ももらは「ユーロ」が来たと小声でうっちーに言ったが、運悪く管理人に聞かれてしまう。
そして、無言で管理人はももらとうっちーを捕まえ、連行していった。そして、別の戦闘員に2人を引き渡した後、新品の「盾」をすぐ使うことになるとは面白いと笑いながら「倉庫」に戻っていった。
その戦闘員の手でももらとうっちーは、「盾」として「ユーロ」のメンバーと対面する。それ以上の侵入は、2人の死をもたらすと言われた「ユーロ」は、動きを止める。
すると、思い出したようにうっちーはダザルを発動。強い光に目がくらんだ戦闘員はうっちー共々ももらも解放。
「ユーロ」側に戻ると思われたうっちーだったが、なぜか「スティール」の拠点内部に戻っていく。はじめは戸惑っていたももらも何かを思い出したようにうっちーについていく。
「ユーロ」のメンバーは、しばらく呆気にとられていたが、2人を追いかけていく。
うっちーは、ダザルを連続で発動しながら「倉庫」へと走る。
ももらも「スティール」に捕まらないよう、うっちーに置いてきぼりにされないよう、全力で走った。
そして、2人は「倉庫」に辿り着いた。そして、先ほどの姉弟に一緒に逃げようと呼びかけた。管理人はふざけたことをと怒りの声を上げた。他の「倉庫」にいた人々の驚く顔も見たももらは、姉弟だけでなく、ここのすべての皆で脱出しようと言った。うっちーもそれはいいと管理人に強烈なダザルを発動。ももらは出入口を開放した。
状況がわからないまま、「ユーロ」のメンバーがももらとうっちーに追いついた。2人がここの人質を解放していると口々に言ったため「ユーロ」は脱出を支援するため戦った。
そして、「スティール」の拠点から人質がすべて解放された。姉弟は、助けてくれてありがとう、両親のもとに帰れると「ユーロ」に言った。
◆謹慎
「ユーロ」の拠点に戻ったももらとうっちーは、蒼虎とはるひこから厳重注意を受けていた。
捕まってしまったこと、「ユーロ」が不本意な形で救出に向かったのにも関わらず、人質解放という件があったにせよ「スティール」の拠点へ戻るという危険な行為をしたことを責められた。
ももらとうっちーは申し開きの言葉もなく、蒼虎から言い渡された2週間の謹慎を受け入れた。2人はメンバーにも迷惑をかけたと謝罪し、謹慎期間に入った。自室から出ることが許されず、ただひたすら反省をしなければならない2週間が始まった。
◆姉弟からの感情
謹慎期間が始まって5日。ももらとうっちーに来客がある、謹慎期間ではあるが外に出るようにとの話があった。
出ていった先に見たのは、あの姉弟。そして、大人の夫婦と思われる男女が立っていた。直感的に姉弟の両親だと思ったが、その通りだった。夫婦は、ももらとうっちーに姉弟の人質解放してくれた感謝を直接伝えたかったと言った。
更に夫婦は、子供たちを助けてくれた2人が謹慎していることに胸を痛めた、自分たちは戦闘から足を洗うので、どうか2人の謹慎を解いてほしいと元々応対していた蒼虎とはるひこに頭を下げながら依頼した。
少し考えた後、蒼虎はそれに従うと返答した。夫婦の顔は明るくなった。
そして、姉はももらに、弟はうっちーに近寄ってきてお仕置きが終わってよかったねと言った。2人はありがとうと返した。更に姉弟は2人と友達になりたいと言い始めた。2人はそれを受け入れた。
それからと言うものの、姉弟は、度々「ユーロ」の拠点に来ては、ももらとうっちーと遊びたがった。ももらもうっちーも多忙ではあったが遊ぶ時間を確保し、姉弟の無邪気な表情を共に見た。
その日も、遊びに来ていた姉弟を見送ったももらとうっちー。ももらは通常の「ユーロ」の仕事に戻ろうとしたが、うっちーが少し話をしたいと引き止めた。
そして、友人である姉弟の無垢な顔が自分には眩しい。あんな純粋な子供を戦場に晒すこの戦いが許せないとし、こう言った。「僕は、もめ事が大嫌いなんだ。だから一刻でも早く戦いが終わるようにここに入った。ね?仲良く平和を僕と掴もう?」と。ももらは勿論と返した。
それから、あの親子はより安全な所に疎開するとし、遠くの地に旅立つことになった。姉弟はももらやうっちーと別れたくないと泣きじゃくったが、ももらとうっちーはきっとまた会える、絶対に会おうと約束した。
大人の対応で親子を見送ったももらとうっちーだったが、想定外のさびしさが襲ってきた。それは、姉弟との別れから1週間後のことだった。どちらからともなくさびしさを訴えながら2人で姉弟との楽しかった時間を振り返った。
その後、うっちーは姉弟との出会いの前後には多くの気づきがあったと言う。ももらはどんな物なのかと尋ねた。今までこの戦いが生んだのは言い争いを含めた争いがすべてだと思っていた。けれど、それだけじゃない卑怯さ、下劣さ他の事も生んだ。それも排除したいと言った。そして、あの姉弟が自分たちの年齢になる頃に、世界中の喧嘩を見せたくはない。そのために自分は身を削ると宣言。
そのうっちーの目は、見たことのない真剣さで鋭く、正義感の溢れるものだった。ももらは「沢山掴みたいものが増えたね。一緒に掴んでいいかな?」と尋ねた。うっちーは、ももらとしか考えられないと返した。ありがとうと、ももらは返した。
そして、ももらはあの時、うっちーとぶつかってよかった、それから苦しいこともあったが、色んな感情をもらえた。とても幸せだった。これからも幸せでいたい。更に、その幸せを戦いを止めることで世界中の人にも分けたいと続けた。うっちーは、それは、自分と一緒にしたいことかと尋ねた。ももらは勿論と答えつつ、うっちーにもたれかかった。
その後、雑談へと話が移った。うっちーは、凄く正義感あるから弁護士とかになれそうだと言う冗談混じりのももらの声が響いた。
◆闇を炙り出す光
気持ちも新たに戦闘停止作戦に赴くももらとうっちー。その戦いも激戦であった。しかし、うっちーの偵察結果から構築した戦略がいつになくはまり、順調よく戦いの勢いを削って行った。
しかし、一部しぶとい者もいて、うっちーはより強めの光をダザルで戦意喪失させようとした。すると、光を全く受け付けない黒く細い柱を見た。皆、理由はわからないまま、戦慄が走った。
ももらは「アーロス」が関連しているのかもと言う。「アーロス」とは何なのかわからないが、アルティーテが止めろと言ってたものなので、強く、邪悪なものに違いないと言った。
ならばとうっちーは、ダザルを発動しなければ見えない柱に攻撃用の槍を使って攻撃を加えてみた。すると、柱は消えた。
◆正義の悲鳴
ある日の戦闘停止作戦中、「ユーロ」の背後から第三の戦闘組織が襲ってきた。それは、「スティール」だった。
ハルバードのみの戦力は強い殺意と共に、「ユーロ」だけでなく、「ユーロ」が戦闘を停止させようとしていた2つの戦闘組織まで攻撃する。
四つ巴となった戦況は、混迷を極めた。うっちーは、こんな戦い方は駄目だと悲鳴に似た叫びを轟かす。
そんなうっちーの声を聞いたももらは戦いながら泣きだす。
その涙が空中を舞ったその瞬間、アルティーテの声が響いた。アーロスの元へ行く時だ。世界を救えと。
その助けに1人だけだが導くことが出来る。どうするかと尋ねられた。
すると、ももらはうっちーの名前を呼んだ。一緒に行ってくれるかと。
うっちーはももらの元に駆け寄り、これ以上ない真剣な目でももらの手をとった。
すると、2人は神々しい光に包まれ、姿を消した。
◆天に灯すものは
凍えそうな闇の空間に辿り着いたももらとうっちー。お互いのぬくもりを分け合う2人の心に闇の氷が張る。
すると、無気力な顔をした男、アーロスが現れた。
その瞬間、心の氷にこの戦いの真実が映像として映る。うっちーは、アーロスにも正義の心があったのかとつぶやいた。自分が思い出させてやると今度は強く毅然として言った。
アルティーテの加護を受けたももらはセイクリッド・シードのフリーダムを発動、うっちーのアビリティとフォースの融合を促した。
うっちーはそれを受けジャスティス・ダザルを発動。
強い光を灯すおびただしい球体が空間の壁一面に貼りつき、その光はアーロスの失くしたと思われた正義の心を照らして存在を思い出させた。
すると聖なる熱気がその場を包む。精悍な顔となったアーロスは、感謝を述べ、あるべき所に戻れと、ももらとうっちーを導いた。
戻った先には、傷だらけの「ユーロ」のメンバーがいた。しかし、今まで戦っていた3つの戦闘組織の姿はそこにはなかった。
◆続く正義の光
その日、発売された雑誌に「敏腕弁護士を支える人」という特集が組まれていた。「大内法律事務所」の代表弁護士、大内昇二を支える事務長、大内美結が紹介されていた。