コスモス編
◆秘密の治療
ももらが初めてコスモスの病を知ってからと言うものの、コスモスは度々体調を崩し、ももらの元へ治療に通っていた。それは、当初の約束通り誰にも知られないように行われていた。
自分のセラピーが怪我のように一度でコスモスの病を消し去ることが出来ていないことに忸怩たる思いを抱きながらではあったが、そうしているうちに、ももらの心の中に「秘め事」というももらが思う大人の雰囲気を感じる単語が浮かび上がる。
こんな時にそんな言葉で舞い上がっている自分を恥ずかしく思ったが、次第にその「秘め事」が楽しくなり、その時間をくれるコスモスを特別な目で見るようになっていった。
一方で、コスモスが本当に病で苦しんでいるとわかっているため、ももらはコスモスにその想いを伝えることなく心にしまっておく日々が続いた。
◆第一の嫉妬
一方、コスモスも病の発症以来、体調面で得たことのない安らかな日々を過ごすことが出来ていた。
それは、ももらの治療のおかげ。いつしかももらにコスモスは愛を抱くようになっていった。
しかし、そのももらは、所属当初から章平の製作活動を手伝っている。章平の製作活動が忙しくなると、ももらは章平の部屋から出てこない時もあった。ももらの姿を見ない時は、きっと大変な作業があるのだろう、だから外に出てくる暇などないのだろう、と自分に言い聞かせながら日々を過ごしていた。
しかし、ある日思いを止められず、章平へ部屋でももらと章平は何をしているのかと尋ねてしまう。
章平は、コスモスの質問の意図が全くわからず、話は長くなると前置きをした後、製作現場の詳細を製作中の武器の説明を織り混ぜながら語り始める。簡単にまとめると章平は作業に専念し、ももらは道具や材料の準備や作業後の片付けをしていると。最近は本当に息が合ってきて作業が捗っている、ももらには感謝していると章平は長かった話を終えた。
コスモスは、理解したとしつつも、ももらには感謝の気持ちを向けているだけなのか、と章平に再び尋ねる。
章平は、先程言った話がすべてでいよいよよくわからない質問だとコスモスに言った。
コスモスは、では、2人は愛し合っているわけではないのかと言った。
章平は、そんな事は全くなく、自分には恋愛などしている頭があったらそれを全部武器開発に向けると言った。
コスモスは、少しの怒りの色を見せた章平に謝り、質問を止めた。
◆病の緩やかな悪化
そんな中ではあったが、「ユーロ」は容赦なく激戦を度々繰り広げる。コスモスは、激戦の疲労と度重なる怪我のストレスから徐々にももらの治療を受ける回数を増やしていった。
ももらは、コスモスの治療の回数だけでなく、治療完了までの時間が以前よりわずかながら長くなっていた事からコスモスの病が悪化していることを感づいた。
ある日、ももらはコスモスにコスモス自身が一番わかっているとは思うが、体が悪い方向に向かっているのではと指摘。
確かに、と返すコスモス。
ももらはやっぱりリーダーはじめ皆にこの事を伝え、配慮してもらおう、と提案。
しかし、コスモスは首を縦に振らなかった。
ももらは仕方ないとし、無理だけはしないようにと言ってその場を後にした。
◆第二の嫉妬
ももらは、コスモスへの心配を募らせていた。全く楽しくない、そして、もしもの事があったらと思うと地面が崩れ落ちて落下していくような感覚が襲ってきた。ここで、ももらはコスモスを「秘め事」をくれる楽しい存在ではなく、愛する存在なのだと認識した。
それからと言うものの、コスモスのことを考えるといてもたってもいられなかった。せめてと、ももらはコスモスの相棒のスバルには無許可だが、コスモスの病状を知ってもらおうと話しに行った。
しかし、無許可故にいざスバルを目の前にすると口ごもってしまうももら。
スバルは怪訝な表情を浮かべるだけだったが、ももらがコスモスの名前を出したため、コスモスの体のことかと尋ねる。
ももらは驚いた様子でその話をしたかった、コスモスは、病のことをスバルには話していたのかと言った。
しかし、スバルは直接話は聞いてない、間近で接することが多いため、なんとなく察していたと言う。
スバルは自分以外にも察していた人がいたのかと続けたが、ももらはコスモスの口から以前聞いたと言った。
スバルは一瞬呆気にとられた。そして、相棒の自分には話さず、後から来たももらには話したのか、どういうつもりなのかと頭をかいた。
ももらは、「ユーロ」きっての名コンビと思っている2人の間が冷え込みそうな話をしてしまったと焦り、コスモスが病のことを話したのは事故みたいなものだったと言った。そして、それ以降セラピーにて治療を施しているとスバルに知らせた。
その話に安心した様子を見せるスバル。治療を受けていたことはさすがに知らなかったが、そういう話ならよかったと言った。そして、スバルは内緒でコスモスの病状をたまに聞かせてほしい、相棒として把握したいと、ももらに依頼。
ももらは快諾。その代わり、知ってたのなら今までやっていたのかもしれないが、コスモスをあまり無理させないでほしいと依頼。
勿論、とスバルは返した。
それから、定期的にももらはスバルにコスモスの体の状態を知らせにいく日々を過ごす。その様子を遠目で何度かコスモスは見て、ももらが思いを寄せているのは章平ではく、スバルであったと解釈。ならば自分のために治療を全力で施してくれているももらの恋路を応援してやろうと心に決める。
そして、とある日の戦闘時、コスモスはスバルが単独で無茶な戦いをしているのを発見。
コスモスはいつもなら単独で駆けつけるが、ももらとスバルの恋路を応援すると決めたことを思い出し、こうももらに言った。「やれやれ、アイツまたつっ走ってやがる。行ってやらねぇとな。あ、一緒に行くか?アイツの所にさ。」と、言った。
ももらは言い表せない違和感を抱いたが、コスモスの隣にいられる幸せを感じつつ、スバルの元へ急行した。
スバルはももらが来たことに疑問を抱いたが、すぐに戦闘へ集中した。
◆溢れる想い
コスモスは、その日ももらに急に昔話をし始める。しかし、それはスバルに関してのことで、以前蒼虎から聞いたサキの話だった。
ももらは蒼虎から聞いた話だが、コスモスからも話を聞けてよかったと言った。
それならとコスモスはスバルを大事にしてほしい、相棒としてそれを依頼すると言い始める。
ももらは、はじめ何の話をされてるかわからなかったが、勘違いされてることに気づく。そして、先の戦闘中コスモスからかけられた言葉の真意を掴んだ。
それを受け、ももらは自分も想いに蓋をしてしまったのが悪いが、全くコスモスに自分の気持ちが伝わっていなかったと無力感を抱く。
更に、コスモスが勘違いとはいえ自分とスバルとの恋を応援するということは、コスモスが自分を見ていないということ、その悔しさに涙が出てきた。「違うよ。私は他の人の所には行かないよ。大好きでそばにいたいのはあなたの所だけだよ。」と泣いている最中ももらは感情のまま想いを告げた。
コスモスは、自分たちが想い合っていることをここで初めて知る。今までやってきてしまったことに恥ずかしさを感じたがとにもかくにもももらの涙を止めたくて思わず抱きしめてしまった。
ももらは驚いて涙が止まった。コスモスは目を泳がせながら、何度も謝ったあと、ももらを愛しているからこそ、ももらが愛する者と幸せになってほしかったと言った。
そして、自分たちが想い合っていることを知った、ならば、自分がももらを幸せにすると宣言。コスモスは再びももらを抱きしめる腕の力を優しく強めた。ももらはそれに身を任せた。
◆謝罪
後日、コスモスはスバルに隠し事をしていた。相棒としてあるまじき行為だったと言い、病を正式に告白しつつ謝った。
スバルは知っていたとしつつも何故急に話をしたのかとコスモスに尋ねた。
ももらと付き合うことになった。その際、自分は自分の病状をスバルに伝えていたももらがスバルを愛していると勘違いし、勝手に応援しようとしていてももらに否定された。その原因を今更ながら取り除きたく今、スバルに伝えることにしたと言った。
スバルは馬鹿だなと一言。ももらの治療を受けているようで安心しているが、無理はするなと続けた。
そして、死ぬな、愛する者を1人にするなよと助言してその場を去った。
◆周知
それから、コスモスはももらの力を借りながら病と共に戦闘に身を投じていく。
しかし、ある日それも限界を迎える。コスモスは戦闘中、急に体が動かなくなり、背中を打ち付ける形で仰向けに倒れた。
次にコスモスが意識を取り戻したのは、「ユーロ」の拠点だった。
ももらとスバルがそばにいたが、勿論、メンバー全員も心配そうにこちらを見ていた。ももらからコスモスにもう隠せないのでは、と言い、スバルはうなづき、コスモスが病のことを皆に話すよう促した。
コスモスは、本題の病のこと、何故戦いに身を投じたか、そして、今ももらの治療を受けていることを告白。その上で今まで黙っていたことを謝罪した。
スバルは、コスモスに今回のももらの治療は熾烈を極めたようだと言った。
ももらはそれは言わないでほしかったと言いつつも、放たれた言葉は戻らないと今回の治療内容を説明することにした。元々戦闘で傷ついていた上に、倒れた衝撃で体中大怪我をした。更に病が重なり、すべてのものを治療するのに長時間のセラピー発動を余儀なくされたと。
コスモスは、謝罪の上、その疲労が取れるかはわからないとしながら自らのセイクリッド・シードであるコンフォートを発動し、ももらに与えた。
すると、ももらの疲労は回復した。ももらは「ユーロ」に入ってから初めて治療のようなものを受けた。感動していると感謝。
そのやり取りが終わったと確認したスバルは、これからは自分1人で戦う。コスモスは病気療養に専念しろと言った。
リーダーである蒼虎もそうするようにと命令。
しかし、コスモスは首を縦に振らなかった。倒れる間際、空に禍々しい物を見たと、それを排除出来るのは自分だけではないかと言った。自分のユニーク・テクニックのアクセレーションで空まで行き、それを引きずり落とした後、皆に攻撃してもらいたいと言った。
ももらは、「アーロス」という名前を思い出した。それは、正体不明ではあるが、アーロスの仕業ではないかと。
◆空へ
コスモスの提案は、実行に移すことになった。しかし、しばらくの間、空の禍々しい物は見あたらなかった。その間、コスモスは通常の戦闘を余儀なくされる。しかし、コスモスはその強靭な精神力で戦った。
そんなある日、ようやく空に禍々しい物が現れる。それを確認したコスモス、スバルに単独の戦闘をするようにと言い、アクセレーションを発動、空へと高速移動していった。
そして、禍々しい物に辿り着く。引きずり落とそうとしたその瞬間、コスモスは禍々しい物に少しの間吸収されてしまった。
そして、引きずり落とす予定の物を落とせないまま、コスモスは空から突き落とされた。
万事休すと思われたが、とっさにあきがリストレイントで空中のコスモスを縛り、落下の速度を落としてコスモスの命を救った。
その後、コスモスは空で恐ろしい物を見たと言い、気を失った。
◆戦闘不能の中
アビリティを使用しすぎた負担は、コスモスの病状をますます悪化させた。状況を鑑みた蒼虎やはるひこはコスモスにきつく戦闘に出ないよう命じた。
自宅療養も検討されたが、コスモスのことだから療養せずにどこかで単独で戦ってしまう可能性があると、拠点での療養を決める。
そして、治療と監視役として、ももらが選ばれ、四六時中そばにいることになった。これにより、ももらも前線に全く出ない日々を過ごすことになった。
コスモスはおそれていた事態が起こってしまったと後悔していたが、愛するももらと時を過ごせる喜びも感じていた。
ももらも他のメンバーが傷ついているのを心配しながら、コスモスの顔をずっと見ていられることに幸せも感じていた。
この頃になると、コスモスの病状は、激しく重くなり、コスモスに提供されるももらのセラピーは、気休め程度の物となっていた。ももらはコスモスにその事を謝罪したが、コスモスは、ももらのセラピーがなければきっと今ここで生きてはいないだろうと、逆に感謝した。
そんなある日、戦闘組織が襲来してくる。あいにく他のメンバーは、戦闘停止作戦に出ていて留守だった。
拠点は破壊され、ももらとコスモスがいる部屋も崩れていく。動けないコスモスは死を覚悟、ももらに避難を呼びかける。
しかし、ももらは死ぬときは一緒がいいとコスモスに覆いかぶさる。
コスモスは、はじめももらを突き離そうとしたが、ももらの意思の強さにそれを諦め、突き離す為に使っていた手をももらの背中に回した。
そんなお互いの心に去来するのは、相手の命だけは助かってほしいという気持ちだった。
その心の叫びに呼応したのか、アルティーテの声が響いた。ももらと補助する者1人をアーロスを止めるために導くと。
コスモスは、自分は補助などできないと、ももらに1人で行けと言った。
しかし、ももらは首を横に振る。置き去りに出来ない、そんな事をしたらコスモスは攻撃で死んでしまうと。そして、コスモスと共にアーロスの元へ行きたいとアルティーテに言う。ももらとコスモスは神々しい光に包まれ、その場から姿を消した。
◆許しの時、安息を
重苦しい空間に移動したももらとコスモス。ももらは体調の悪いコスモスを心配した。
コスモスは横になるしかなく、ももらは膝枕でコスモスを寝かした。
すると、恐ろしい目をした男、アーロスが現れた。コスモスは、いつか見た恐ろしい物だ、と言った。
アーロスのオーラは、容赦なくももらとコスモスに襲い掛かる。そのオーラは、2人にこの戦いの真実を教えた。
2人は、痛みを覚えた。それは、身体的な痛みではない、心に直接響く痛みであった。コスモスは辛かったなと一言。
ももらはコスモスに許すのかと尋ねる。コスモスは仕方がないと答えた。更に、辛さを取り除いてやりたいと言う。
それならと、アルティーテの加護を受けたももらは、セイクリッド・シードのフリーダムを発動し、コスモスのアビリティとフォースを融合させた。
それを受けたコスモスは、コンフォート・アクセレーションを発動。
あれだけ動かかなったコスモスの体は、光に包まれながら空間中飛び回り、闇を安らぎのある光の空間に変えていく。
そして、穏やかな顔に変わったアーロスは、頭を下げ、ももらとコスモスを元の場所へと導いた。
帰還した先には破壊され尽くした拠点と、その拠点にすべての戦闘が停止になった事から帰って来て状況に驚いている「ユーロ」のメンバーたち。
スバルが2人が生きていてよかったと言った。そして、それをきっかけに、コスモスを支えるももらと立ち上がることが出来るようになったコスモスを囲んだ「ユーロ」全員のあたたかい輪が出来上がった。
◆別の病との戦い
その日、病児保育も行う「コスモス保育園」では、入園説明会が行われていた。保護者に配られていた書類には、名誉園長、水上柊。園長、水上美結。と書いてあった。壇上には、杖を傍らに置く男性と、それに寄り添う女性の姿があった。