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はるひこ編

◆顔

とある戦闘から帰ったはるひこ。この日は、ももらと別チームだったため、怪我を抱えていた。ももらははるひこの治療をいつものように始めた。はるひこは、よくやってくれていると改めてももらを評価した。ももらは急な再評価に驚いた。

はるひこはバックラーであってもユニーク・テクニックが直接防御のものではないももらがここまで「ユーロ」に貢献しようとしてきた姿勢を見習いたい。だが、これからもももらは悩み、壁にぶつかるかもしれないと心配しているとも言った。 だから、はるひこは今更かも知れないがという前置きをしつつもももらにこう言った。「私でよければ、いつでも手を貸そう。だから、一人で抱え込まないように。貴女は一人じゃない。一人にさせない。」その言葉にももらは純粋に感謝の言葉を返した。

そして、ももらは次の怪我をしたメンバーの元へ去った。その姿を見送りながらはるひこは、これが限界だと顔を赤らめた。珍しいサブリーダーの顔だったが、その顔を誰も見ることはかなわなかった。


◆過去への旅

翌日、はるひこの姿は、蒼虎の所にあった。昨日、ももらにバックラーでも直接守備が出来ないももらとハルバードでも明確な攻撃が出来ない自分を同列に語ってしまったことを後悔していると蒼虎にはるひこは言った。

蒼虎は、雲をつかむ話をサブリーダーがしたことから反応に困ったが、そうか、と一言返した。

リーダーの困り顔を察したはるひこは、自分でも何を言っているのかわからないが、どこかで懺悔したくて蒼虎に話をしたと言った。

蒼虎は苦笑いしながら珍しいなと言い、更にそういう意味のわからない話を受け止めるのもリーダーである自分の役目かもしれないと続けた。

はるひこはその言葉に感謝しつつも、それに関連して過去を振り返ってしまい、少しだけ苦しいとも話した。

自分は「ユーロ」に入る前、「ラボラトリー」という戦闘組織に所属していたころ、自分は酷使されていたと。

蒼虎は、そちらがメインの話かとしつつ、自らの幼少期を思い出し、その気持ちはわからないでもないと返した。はるひこは共感に感謝しながらそれを受け、それに疲れて「ラボラトリー」を抜け、「ユーロ」に辿り着き、「ユーロ」からは穏やかな心をもらった。とても居心地のいい所だとし、このような戦闘組織を作り上げてくれたことにも感謝していると蒼虎に伝えた。蒼虎は、はるひこがクーデターに加わってくれたおかげだと過去の働きを労った。


◆死

「パレス」と「ビル」の戦闘停止作戦中、ももらは背後から攻撃を受けてしまった。ハルバード属性の相手が持っていたユニーク・テクニックは「ポイズン」。無数の針からももらの体に猛毒が注ぎ込まれ、苦しませた。ももらは苦しんだ末にその場で息を引き取った。

その場にいたのは、はるひこ、章平、うっちー、あきだったが、一様に衝撃を受けた。一旦ももらの遺体を放置し、戦闘停止を確認した後、手当てをそこそこに拠点へももらを運んだ。

章平とうっちーは、動揺が収まらないまま、自らのセイクリッド・シードでももらを治すことはできないかと挑戦する。あきがそれは無駄になりそうとの懸念を伝えたが、それは実行された。結果はあきの懸念通り、状況は変わらなかった。

はるひこはももらの遺体を見つめ、何かを決意した表情になった。そうしていると、別の戦闘組織同士の戦闘停止作戦に行っていた蒼虎、スバル、コスモス、千羽漢鶴、アクシーも拠点に戻ってきた。戻ってきた5人を待っていたのは、ももら死亡の報であった。こちらにも衝撃が走った。

8人がうろたえる中、はるひこはいつもの書物を取り出す。そして、それに何かを書き込み始めた。スバルがこんな時に何をやっているとはるひこに問いかけた。はるひこはこんな時だからこそと返しつつ筆を走らせた。

しばらくすると、それが終わり、また別の紙に何かを書き込み始めた。紙への書き込みはすぐ終わり、今度こそ集団の中にはるひこは戻ってきた。そして、はるひこは今から戦闘を開始すると宣言。

戦闘終了を確認したら自分にこれを渡してほしいと蒼虎に先程の紙を引き渡した。

8人の疑問の視線を感じたはるひこは、一時笑い、これからももらを生き返らせる。それが自分の真のユニーク・テクニックであるレストレイションだと言った。

驚く8人。そして、スバルがそんなユニーク・テクニックがあるのならなぜサキの時に使ってはくれなかったのかと問いただすと、あれは消滅という現象で、自分の能力外のことだった。提案すらできなかったと謝罪。

その上で、レストレイションとは、死という現象に攻撃を加え、死を滅するユニーク・テクニックで、今までの戦いは、この真の戦いのための訓練であったことを説明。黙っておこうかと思ったが、ここまで付き合ったメンバーに隠し事はよくないと説明を続けるはるひこ。

通常あってはならない死者蘇生を行うのだ、それには大きな代償が伴う。他のレストレイション使いの代償は知らないが、自分の場合はこれまでの記憶すべてだと言った。

ももらの死に衝撃を受けているメンバーにもう一つの衝撃を与えた。蒼虎がそのような代償があるというのなら、「ユーロ」に関する損失だ。断腸の思いではあるが、このままももらを葬ろうと提案。

はるひこは何度も首を横に振り、それはできない、思いは伝えては無かったが、自分はももらを愛している。愛するももらを死者蘇生が出来る自分が見捨ててこのまま死なせたくはない。自分のわがままを通させてほしいと言った。

それに、記憶はなくなるが、記録はある。それを元にこれからも「ユーロ」で活動はできると、いつも読んでいた書物を手に取った。

蒼虎はわかったと一言。他のメンバーも躊躇の後、レストレイション発動賛同の意を伝えた。蒼虎やメンバーにこれまで世話になったと感謝の意を伝え、はるひこは、はるひこ自身の真の戦闘へと向かった。


◆真の戦闘

メンバーが見守る中、はるひこは寝かされているももらをしばらく見つめ、そして冷たくなった唇に口づけをした。はるひこはこの冷たい唇をぬくもり溢れる物に今、変えるとつぶやいた。

そして、ユニーク・テクニックのレストレイションを発動した。左手をももらにかざし、右手は握りつつ体の横に伸ばした。すると、右手にはいつものはるひこが繰り出す刃とは違う荘厳な剣が出現。

一方ももらからは禍々しい獣のような物が溢れてきた。獣は、はるひこに襲い掛かってくる。それにはるひこは応戦。はるひこは噛まれたり、ひっかかれたりしつつも数匹の獣を優雅で的確な剣捌きで倒した。槍の使い方がわからないと言ったももらにはるひこが見本として見せた槍捌きと似たあの優雅さがここでも発揮されていた。

それが終わると、剣ははるひこの右手から離れ空中を浮遊した後、はるひこの胸を刺しつつはるひこの体に吸収されていった。はるひこは、戦闘終了を宣言しつつその場に座り、気を失った。


◆悲しみの命

一方、ももらは目を覚ました。拠点に自分が戻っていることに少し混乱はしたものの普通の目覚めが如く起き上がる。そして、傍らに座りながら眠るはるひこに気づく。状況が読めず言葉を発せない。そして、メンバーもここまでの多くの衝撃に言葉を紡げない。拠点は、静寂に包まれた。

やがて、はるひこが目を開ける。はるひこは日が高いことから昼のあいさつをし、静寂を破った。蒼虎がはるひこから預かった紙を戦いを労いながらはるひこに渡す。はるひこは、謝罪しつつ自分は記憶がないと言い、メンバーに自己紹介の依頼をした。

まだ状況が掴めないももら。しかし、メンバーが次々と自己紹介するのに続けてももらと名乗った。

はるひこは、ももらの名前に反応し、生き返ってよかったと一言。その一言で、ももらはあの攻撃で自分が一度死んだことを理解。

それを尋ねると、あきは間違いないと言った。更にそれに続けて、アクシーがはるひこの記憶と引き換えにももらは今、目を覚ますことができていると言った。

ももらははるひこを見つめ次第に呼吸を荒くし涙を流し始める。しかし、それを見たあきが泣くのは違う、言うべきことがあるだろうと助言した。ももらははっとし、懸命に涙を止めはるひこに感謝の気持ちを伝えた。どういたしましてと返したはるひこは、これから記録を読み込まなくてはならない、しばらく1人にさせてほしいとその場を後にした。

置きっぱなしにしてあった紙には、自分のコードネームははるひこ、レストレイション発動、対象者はももら、これから記録を読むように。と書いてあった。


◆贖罪の愛

ももらはそれから苦悩の日々を過ごす。自分のせいではるひこは記憶をなくしたと。自責の念が止まなかったが、はるひこの事を考えているうちに自らの心にはるひこへの愛が芽生えた事を自覚。

この気持ちはしまっておかねばならないと思ったが、ある日、思いが溢れてももらははるひこに愛を伝える。はるひこは微笑んだ。すれ違いではあるが、自分たちは今、互いに想い合ったようだと。

更に、記憶をなくす前の自分はももらを愛していた、だからすべてをかなぐり捨てレストレイションを発動した。だから、この記憶喪失は自分の誇りだと続けた。

はるひこの言葉にどう返していいかわからないももらへ、はるひこは、記録にあるこの実感のない愛を再び実感のある愛に変えたい、自分を愛しているのなら、そばにいてほしいと言った。

ももらはその言葉に救われた気持ちになり、はるひこのために出来ることがあれば何でもやると約束した。そして、ももらはまず、最初の奉仕として、これより記録を読む時間にしてほしいと言った。はるひこは感謝し、記録を読み込む作業に移った。その様は、以前の書物を読み耽る姿そのものだった。

それからというものの、ももらははるひこが記録を書き込んだ書物を読める時間を少しでも確保できるようにはるひこの身の回りの世話をし始めた。

その様子を心配そうに見ているメンバーがいた。それは、章平だった。


◆戦線復帰

ある日、ももらとはるひこの所に章平が訪ねてきた。はるひこの記録は膨大で大変そうだと思い作った機械があり、渡しに来たと言う。

その手には片眼鏡が握られていた。これに記録を読み込ませ、目にかければはるひこの頭の中へと記録を常時運んでくれると言った。更に、これからの記録も任せることが出来るとも。

はるひこは有難い物だと喜びながら受け取った。早速、記録を片眼鏡に読み込ませた。片眼鏡は書物を高速でめくって記録を読み込んだ。

そして、はるひこは目にかけてみた。すると、記録が脳内に入ってくる。驚き、感動したはるひこは、章平に感謝しつつこれで近いうちに前線に復帰出来ると言った。そして、後日はるひこは戦線復帰を果たした。


◆検証

章平からの片眼鏡のおかげでももらははるひこに特別な手伝いをする必要はなくなった。それを少し悔しいと、ももらはある日はるひこに言った。

はるひこはももらの今までの手伝いに感謝しつつ、これからは普通にそばにいて、記憶をなくす前のももらを自分に見せてほしい、きっとそれだけで実感のあるももらへの愛が戻って来るだろうと言った。

ももらはわかったとしつつも、今まで罪悪感からはるひこのために動いて来たのかもと正直な気持ちを吐露。

はるひこは、罪悪感といえば、記録にあったももらを一人にさせないと言った言葉はあの時言うべきではなかったと後悔しているとし、お互い様だから気にすることはないと言った。

そう言い終わると、はるひこは表情の色を変え、戦闘に関する話をしたいと言った。ももらは自分でいいのかと尋ねたが、ももらに関連することだから構わないと言った。

記録を見るに、戦闘は停止させても停止させてもどこかで起こってしまう、それは、戦闘員の資質であるのかもしれないが、何かしらの別の要因があるのではと考えているとはるひこ。ももらからもらった「知恵」の力を借りながらここ数日可能性を探っていたとも話した。そこには大いなる闇の影が見えたと。

ももらは、詳細が訊けなかった「アーロス」の話を持ち出す。それと何か関係があるかもと返した。検証の必要があるとはるひこ、蒼虎にこのことを相談する、ついてきてくれるかと言った。ももらは拒否する理由がなかった。

相談しに行った先の蒼虎は、有志を集め、検証作業を含めた戦闘停止作戦を実行しようと決定。その作戦に異を唱えるものはいなかった。

総力戦となったその作戦で、見事黒い影を見つける。それに誰からともなく攻撃を加えた。すると、戦闘組織全員が逃走を図った。あの黒い影がこの戦いの元凶と認識、仮に「アーロス」と名付けることにした。


◆敵襲来

その後、「アーロス」発見の件でももらは、はるひこに声をかけた。記憶をなくして不安な時にも「ユーロ」の使命を忘れないなんて凄いと言った。

ももらは、はるひこに記憶喪失について一旦自分の世界が1人になってしまうことと想像している、「私でよければ、いつでも手を貸します。だから、一人で抱え込まないでください。あなたは一人じゃないです。一人にさせたくないです。」と言った。

その言葉に、はるひこは胸が高鳴るのを感じ、これが自分がももらを愛した理由かとつぶやき、ももらを抱きしめた。ももらははるひこの心から溢れる愛の抱擁と感じ、はるひこを抱きしめ返した。

その直後だった、「ユーロ」の拠点が襲撃に遭う。新生「ユーロ」結成以来初めての事態で若いメンバーは動揺を隠せなかったが、年長の者の鼓舞によりいつもの戦闘態勢を取る。戦う相手は、戦闘組織「ラボラトリー」だった。戦闘員の1人がはるひこのことを「はる」と呼び、レストレイションしてほしい死人がごまんといる、戻ってこいと言った。はるひこは断ると一蹴。ももらもはるひこを「ラボラトリー」には渡さないと言った。

「ユーロ」の拠点は「ラボラトリー」によって破壊されていく。メンバーは心の悲鳴を抑えつつ応戦した。すると、「アーロス」と名付けた黒い影をまた見ることになる。ももらは大声で呼び掛けた。黒い影はアーロスなのだろうと。

影は、人のような形になり、黒いオーラを「ラボラトリー」に浴びせかける。すると倒れた者も含めて「ユーロ」に襲いかかってくる。ももらは声の限りを尽くして制止の叫びをその場に轟かす。

すると、アルティーテの声がその場に響いた。今こそアーロスと対峙し、戦いを止めろと。ももらはそれに応えた。アルティーテは、ももらを導くが補助としてもう1人連れていいと言った。ももらは勿論と、補助にはるひこを選んだ。


◆復活の知恵

神々しい光に包まれたももらとはるひこは、漆黒の空間に1人で座る禍々しいオーラをまとった男がいる部屋に辿り着いた。

すると、ももらとはるひこの脳内にこの「グローバル・バンダリズム」の真相が流れて来る。ももらはそしてはるひこはアーロスに同情の念を伝える。

アーロスの苦しみを今、取り除くと言い、ももらはアルティーテの加護を受けたセイクリッド・シードのフリーダムを発動。その自由な力は、はるひこのアビリティとフォースを融合させた。はるひこは、ウィズダム・レストレイションを発動。

ももらを生き返らせた時の剣よりもさらに荘厳な剣がはるひこの右手に出現。神聖さを加えた剣を優雅かつ舞うように振るう。すると、知性を感じさせる聖なる鳥が数羽剣から出現。アーロスの方へ飛んでいき、アーロスを囲んで消えた。

熱気の溢れる空間となった部屋で清々しい表情をしたアーロスは自身を止めてくれたことに感謝すると言い、ももらとはるひこを元いた場所へと導いた。

戻った先では、完全に戦意をなくした人々が自分のしたことにうろたえていた。「ユーロ」のメンバーたちは、戸惑いを隠せない様子だった。ももらはこれから、手当てをしようと提案。メンバーたちは手当てを開始、人々を立ち直らせた。

その後、はるひこは命が消えないような職に就こうと思っていると、ももらに言った。ももらはそばにいると一言。どちらからともなく口付けを交わした。


◆抱いた夢をその手に

とある年、大きな病院、看板には本木総合病院と書いてあり、更に病院長の欄には本木晴彦と書いてあった。その内部では看護師長が呼ばれていた。返事をした女性の名札には、本木美結とあった。

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