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作者: 七瀬涼夏

私には誇れるものがございません。これまでの人生、ずっと愚図の様な事しかしてこなかったのです。例えば、人を騙したり、嫌がらせをしたり、悪口を言ったり、これはまだ可愛い方でございます。もっと酷い事をしてきました。ですが嫌われることはありませんでした。

私は容姿端麗だからです。また、運動や勉強も学年上位に入っておりました。だから嫌われてはおりませんでした。先程、誇れるものがないと申しましたが、容姿だけは整ってるように思います。不細工などと言われたことがございません。この世は容姿なのです。容姿だけが整っていれば何をしても許されるようです。また、勉強が出来ればなお良いでしょう。先生方からの信頼を得ることができるのです。先生方からの信頼を得れれば、学校生活なんて、容易いものです。

性格が悪いと思ったでしょう?そうなのです。私はこうでもしないと自分の価値を失いそうになるのです。常に強い私でありたいのです。人の上に立っていたいのです。人の上に立っていなければならないのです。そうしないと父上に怒鳴られるのです。殴られるのです。父上も昔はいじめっ子だったと聞きました。私はこれ以外の生き方がわからないのです。

ですが時々疲れてしまうのです。沢山の人間と一緒にいると疲れるのです。本当は仲良くしたい人を虐めるのも心が痛むことがあるのです。俗に言う一軍という群れに所属しているのでしょうが、私、実は読書が好きなのです。この間もあの静かな女の子が読んでいた本に、心が惹かれたのです。私の手下という言い方は悪いですが、私の隣にいる方はその女の子の本をズタズタにしたのです。私はその時すごく心が痛んだのです。苦しくなったのです。なので次の日誰よりも早く学校へ行き、その女の子の引き出しに新品の本を忍ばせておきました。

私は何度も酷いことをしてきましたが、趣味を馬鹿にする事だけはしてきませんでした。理由は特にございません。私の隣にいる方が、男の子の遊戯道具を水に沈めました。家へ帰り、それを調べると、少し高価なものでした。ですが、私の家は大金持ちと言う部類に分けられていたので、そのようなものは容易く買うことが出来ました。少し、ほんの少しだけ、父上に我儘を言いました。そしてその次の日、あの時と同じように、誰よりも早く学校へ行き、引き出しの中に忍ばせておいたのです。もしかしたらこれが私の優しさなのかもしれません。

少しですが、そんな自分が好きになりました。そんな自分に価値を感じました。人の上に立たなくても、人間に価値はあるのかもしれません。

最後まで目を通して頂き、ありがとうございます。少しでも、自分が好きだと思える所があるのであれば、誇っていい事だと思いますよ。なにも出来ない、なにも持っていない、なんて思わないでくださいね。

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