彼女がExecutive Secretaryを断った理由
人事コンサルタントをしていた時の事でした。
英国の証券会社から、
「オフィスマネージャーを探してください」
とのオーダーをいただきました。
その証券会社は、
何故か、他の大手の人材コンサルタント会社に依頼をしないで、
私が勤務していた会社に人材探しを全面的に
依頼する会社でした。
まだ、バブルがはじける前のことです。
東京支社ができて間もない100名ほどの社員をようする
外資系証券会社の女性のオフィスマネージャーといえば、
待遇も良く、多くの方があこがれるポジションでした。
しかし、当時、日本では
女性のオフィスマネージャーの経験者は
ほとんどいないというのが実情でした。
いろいろと、探していると、
たまたま秘書希望者の中に、オフィスマネージャーに
相応しいと思われる方を見つけました。
早く働きたいと言っていたから、
きっと、喜んでくれるだろう。
そう思って、
早速、オフィスマネージャーのオファーをしました。
ところが、なんと、
その方は、頑として、嫌だと言うのです。
その方の主張はこうでした。
「私は、外資系の秘書になりたくて、
アメリカの秘書学校へ行ってきました。
秘書になりたいのであって、
オフィスマネージャーにはなりたくありません。
それに、オフィスマネージャーが、
何をするのかもわかりません。
ですから、絶対に嫌です。」
強硬な「NO」でした。
でも、私には、彼女以外に
帝国ホテルインペリアルタワー
のお洒落なオフィスで
オフィスマネージャーとして働く姿をイメージすることが
出来なかったのです。
原則として、
本人の希望しないポジションをおすすめしないことに
していました。
でも、この時だけは違いました。
何度も彼女に会いました。
時には食事もしながら、
オフィスマネージャーの仕事について説明をしました。
幸いなことに、人事コンサルタントをする前、
私は米系の会社でオフィスマネージャーをしていました。
ですから、
オフィスマネージャーの仕事について、
詳しくお話をすることができました。
もちろん、秘書より、責任も重く、大変なこともたくさんあることも話しました。
何度も話をしていくうちに、
次第に、彼女も折れてきました。
「では、どのような会社で、支社長さんがどのような方なのか、
会ってお話を聞くだけなら。」
と言うところまでこぎつけました。
そして、いよいよ支社長との面接。
支社長は何と言うでしょうか?
オフイスマネージャーの経験が無くてはダメ
というのでしょうか?
面接が終了すると、すぐに支社長から連絡が入りました。
支社長の言葉は、
「彼女以外にオフィスマネージャーは、考えられない。」
でした。
支社長が、すっかり、気に入られた様子にホッとしました。
それでも、まだ、彼女は決断できませんでした。
「一応、やってみますけれど、合わなかったら、やめても良いですね。
そして、秘書のお仕事を見つけてくれますね。
約束してくれますね。」
「それは、もちろんですよ。」
それから、数日後、
彼女は、オフィスマネージャーとなり、
今度は、わが社のお客様の立場となって、
いろいろな人材のオーダーを
くださるようになりました。
彼女がオフィスマネージャーとして
仕事を始めてからも、
時々お会いしました。
仕事の話で、プライベートで、
お食事をしたりすることもありました。
しばらく経ったとき、
米系の誰でもが知っている会社から、
Executive Secretaryのオファーを頂きました。
丁度、彼女にお目にかかることがあったので、
ちょっと、聞いてみました。
「米系の会社で、Executive Secretary を探しているのですが、
興味あります?」
すると、何ということでしょう。
「とんでもない! 私、秘書にはなりません。
絶対にオフィスマネージャーです!」
と言うではありませんか。
そして、思わず私達は顔を見合わせて、笑ってしまったのですが、
その彼女の笑顔を見た時、
何故か、涙がこぼれそうでした。
本当に、嬉しかったのです♪




