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貿易事務OLが流通の整っていない異世界に転生したので、経験生かして頑張ります!  作者: きど みい
第三章 貿易の基礎を作っていきます!
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第19話 いってきますっ!

十七歳 貿易書類を作る


あの日から半年くらいの時が経って、ついに17歳になりました~!

17歳って言うとこの世界で言えば立派な大人で、結婚なんかし始めちゃう子が近所でもチラホラ現れてる。



私だって本当はその波に乗るつもりだったのに、テムライムに行くと決まってからパパの会社に行って、バリバリ仕事みたいなことをしてしまっている。


せっかくテムライム王が呼んでくれたのに失礼なことは出来ない。それまで出来るだけリオレッドのことも知っておこうと思って手伝い始めたんだけども、最近なんだか本格的に社員の一員感が出てきたから辛い。早く抜け出したい。




「リア、ハンカチは持った?」

「ねぇ、ママ。それもう3回目。」



そしていよいよ、テムライムへと出発する日がやってきた。だいたいの荷物はもう船に積んでいるから、私がこれから持っていくものなんて知れている。それなのにさっきからママは、忘れ物がないかってエンドレスリピートで聞いてくる。



「あら、そう?えっと…じゃあ、下着は…。」

「持った持った!ドレスももう渡してあるし、ワッフルだってたくさん詰めた!」

「ワッフル詰めたの?!」



「うそだけど」というとママは大きく「はぁ」とため息をついた。本当はいく前に一つ買って船に乗ろうとしていることは、秘密にしておくことにした。



「気をつけていってらっしゃいよ。」

「うん、分かってる。」



テムライムまでは船で2日ほどで行ける。そんなに遠くもないし、危険が多い海でもないらしいんだけど、着いてから1週間で帰ってこれるのか、半年とかかかってしまうのかは、行ってみないと分からない。


そもそもママとそんなに長い間会わないなんて人生の中では初めての経験で、いざ出発となると、すごく寂しくなり始めた。でも私よりもママが、とても寂しそうな顔で私の頬を撫でた。



「ママ?」

「ん?」

「美味しそうなものがあったら買ってくるね。」



不安そうな顔をしているママをそっと抱きしめると、ママはクスクス笑った。



「楽しみにしてる。」



この世界で私を産んでくれたママ。いつまでも天使のようにきれいで、ちょっと怖いけど本当はすごく優しくて頑張り屋さんのママ。


そんなママを悲しませないように出来るだけ早く帰ってこようと決めて、私はママの頬にそっとキスをした。



「リア様。」

「メイサ、ママを頼むね。」



本当はメイサも連れて行こうと思ったんだけど、メイサにはメレシーもいるし、一人にしていくママが心配だから、私たちが帰るまで家にいてもらうことにした。



「はい。任せてください。」

「私の方は大丈夫。じぃじがお支度してくれる人、同行させてくれるからさ。」



でもそんなメイサもママみたいにいつまでも心配そうな顔をしているから、出来るだけ元気にそう言ってみせた。


でも本当は、メイサもなしにどこか行かなきゃいけないことを不安に思っているのは、私の方だった。


いつからこんな情けない女になってしまったんだろう。

昔は一人でなんだって出来たはずだ。一人焼肉だって一人映画だって全然平気だった。


「それじゃ、行ってきます!」

「アシュリー、一人にしてごめんよ。」

「あなた…。私は大丈夫よ。」



菜月だった時のことを思い出して元気に言うと、その時ちょうどパパとママがいちゃいちゃし始めた。もう結婚して20年弱経つだろうに、この人たちはいつまでもこんな感じだ。


「心配だよ、本当に。」

「大丈夫よ。メイサもいてくれるから。あなたはお仕事頑張って?」


パパはママの頬と腰を持って本当に愛おしそうな顔で見つめた。ママもパパの腰辺りにしがみつくように両手を回して、とろんとした瞳でパパを見ていた。



「ねぇ、パパ行くよ。」

「あ、ああ。」



ほおっておくと別れを惜しんでいちゃいちゃチュッチュが長引きそうだったから、私はその流れを断ち切った。

私たちはそのまま馬車リゼルに乗って、港に向かって出発した。



角を曲がる前に後ろを振り返ってみた。するとママとメイサは家の前に立って、こちらの方をずっと見つめていた。



「いって~きま~~~すっ!!」



二人の不安な気持ちが少しでも軽くなるように、振り返って元気に言った。すると二人ともそれにこたえるみたいにして、こちらに向かって大きく手を振ってくれた。



ママ、メイサ。行ってきます。

無事、帰ってくるからね。



寂しい気持ちをおさえたせいか、角を曲がって二人の姿が見えなくなった瞬間、急に心細さを感じ始めた。

するとそれを察したのか、パパが私の肩を持って自分の体へと寄せてくれた。私は安心で少しは不安が解消されるように、パパに素直にもたれかかった。

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