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貿易事務OLが流通の整っていない異世界に転生したので、経験生かして頑張ります!  作者: きど みい
第三章 貿易の基礎を作っていきます!
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第15話 シャル ウィー ダンス?


舞踏会の会場に行くと、そこにはすでに音楽に合わせて踊っている人たちがいた。とはいえまだほとんどの人はご飯を食べたりお酒を飲んだりしているから、会場には人がそんなに多いわけではない。私はそれに少しホッとしながら、エバンさんの後をついていった。



「アリア様。」

「はい…。」



エバンさんはまた優しい声で私を呼んだ。いちいち心臓がうるさいからやめてくれって思いながら、エバンさんに促されるままダンスの最初の姿勢になった。



「大丈夫、力を抜いて。」



初体験の時に言われるセリフみたいだと、この場に全くふさわしくないことを考えた。でもその言葉で自分がエバンさんの腕を力強く握っている事に気が付いて、勢いよく手を離した。



「す、すみません…っ!」

「大丈夫です。僕は全然痛くないですから。」



エバンさんはそう言いながら、もう一度私の手を握って、もう片方を腰に回した。一気に距離が近くなったせいで、私の心臓はもっともっと早くなり始めた。



「では、いきます。」

「はい。」



音楽に自然に合わせるように、エバンさんはダンスを始めた。この人も元々貴族だってのもあって、まるで音の波に乗っているかのように、流れるようにダンスを踊っていた。


私はというと、その動きについていくことに必死だった。

でもエバンさんがしっかりと私を支えて踊ってくれるから、ただ身を任せているだけなのに、めちゃくちゃ踊れてるみたいな気持ちになった。



――――すごいな…。



私は心から感心して、エバンさんを見上げてみた。すると視線に気が付いたのか、エバンさんはこちらを見た後、にっこり笑って照れた表情を見せた。



――――キレイな、目…。



エバンさんの目は、いつまでも見ていたくなるくらいにキレイだった。私はダンスをしているというのに、思わず彼の顔に見とれてしまった。



キレイに通った鼻筋に、シュっととがった顎。漆黒の髪によく映える色白の肌と、真っ赤に澄んだ瞳…。




――――イケメン、かよ。



こんなに近くで、こんなにイケメンの顔を見るのは初めてかもしれないと思った。それと同時に、こんなイケメンと一緒に踊っているのが私なんかじゃ釣り合わないって気がし始めた。


整いすぎた顔を見ていればいるほどなんだか辛くなりそうで、私はそっぽを向いた。すると夜の闇に反射したガラスには、踊っている私たちの姿が映り出されていた。



確かに踊りは、上手とは言えない。

でもスカートにちりばめられた宝飾が、私が回る度にキラキラと揺れてとてもキレイだった。そしてテレジア様からもらったバレッタも、ドレス同じように輝きながら、私と一緒に踊っていた。


ドレスやバレッタから放たれた光がまるで二人を照らしているように見えて、さっきまで感じていた劣等感なんて忘れてしまった。



――――本当にこれは、勇気のバレッタだ。




私はさっきより少し、背筋を伸ばしてダンスを踊った。エバンさんと触れている部分から流れ込んでくる温度があたたかくて、すごく心地よかった。いつまでもこうしてたいとすら思った



――――私って結構うぶね。



私はそのまま、今度は余計なことを何も考えることなく踊り続けた。すると知らないうちに1曲が終わって、踊っていた人たちは一度踊り終えてお互いに挨拶をした。



私たちも例外なくお互いに礼をすると、どこからともなく拍手と歓声があがりはじめた。




「え…。」



気が付けば会場は、さっきとは比べ物にならないくらいの人たちで溢れかえっていた。その人たちはどう見ても私たちの方を見て楽しそうに噂をしていて、私は一気にそれが恥ずかしくなった。



「アリア様。」

「はい。」



当然それに気づいているだろうエバンさんは、小さな声で私を呼んだ。余裕があっていいなと思って彼のキレイな瞳を見つめると、エバンさんは少しやんちゃそうな顔をして笑った。



「逃げましょうか。」

「え…っ?!」



エバンさんはそう言ってすぐに、観衆に向かって礼をした。そして私がそれに合わせて礼をし終えたのを確認すると、私の右手をグッと引いた。



「エバンさん…っ!」



そしてそのまま人ごみをかいて、エバンさんはずんずんと進んでいった。私はただ茫然とそのたくましい背中を見つめながら、こんなことって人生で起こっていいものなのかって冷静に考えていた。

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