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貿易事務OLが流通の整っていない異世界に転生したので、経験生かして頑張ります!  作者: きど みい
第三章 貿易の基礎を作っていきます!
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第3話 王様、この国に足りないものがあります!


「お嬢様、足元にお気をつけください。」

「ありがとう。」


船の上までは、危なっかしいはしごみたいな階段を登って行くしかなかった。高いところがあまり得意ではない私は、おじさんの手にギュっとつかまりながら、なんとかはしごを登り切った。


おじさんが嬉しそうな顔をしていたのは、パパには秘密にしてあげる。



「うわぁ、すごい!」



思っているよりずっと、船は大きかった。大きな甲板にはたくさんのトマト(チヂミ)が箱に入って乗っていて、ちょうど皆さんがそれを運び出す作業をしていた。



「近くで見られますか?」

「はい、ぜひ。」



おじさんは私を、作業をしている近くまで連れて行ってくれた。作業をしている人たちが運んでいるのは、昔パパが作った大きなカゴに入っているたくさんのトマト(チヂミ)で、それは蓋もないままむき出しの状態で、船の上に乗っていた。



「これじゃあ…。」



これでは天候の影響をもろに受けてしまっても仕方がない。テムライムとの貿易条件以前に、輸送方法が雑すぎる。

実際によく見てみると、カゴに入っているいくつかのトマト(チヂミ)がダメになっているのが分かった。これでは無駄が多いし、何よりもったいない。



視察することで貿易条件には全く関係のない問題点がもう一つ見つかってしまった。まずはこれ以上テムライムとのトラブルが大きくならないように貿易条件の整備をしないといけないけど、そのあとはこの輸送方法をどうやって改善していこうか考える必要があるなとぼんやり考えた。





「じぃじ!」

「リア、待ってたよ。」



視察では別の問題点しか見つからなかったけど、私の頭の中には一つ提案が出来上がっていた。分かりやすくするためにもそれを紙にしっかりとまとめて、私は次の日も王様の部屋に行った。


まだ子供だった頃は、案が浮かんでも伝えるまで苦労した。でも16歳になった今はそのハードルを軽く超えることが出来る。



私は惜しむことなく、知識を駆使した解決策をまとめた紙をじぃじの前に置いた。



「昨日一生懸命考えてみたの。一つずつ説明するね。」

「頼む。」


16歳だって子供は子供なんだけど、じぃじはいつも私が何歳かなんてことを気にすることなくしっかりと話を聞いてくれる。そのおかげで暮らしは一つずつとてもよくなっていて、国民からのじぃじへの"信頼"が、すごくすごく厚いのが私にもわかる。


私も例外なくその一人だから、そんなじぃじに誠意をもって説明することにした。



「まずね、お約束をした方がいいと思うの。」

「お約束?」

「うん。今は何となく船に乗せるまではテムライムの人がやってくれるってなってるけど、それをしっかりとお約束にするの。ここまではお互いやりましょうねって、ここまではこっちのせいだけど、こっからはあなたのせいですよって。」


私が紙に書いたのは、今問題とすべき2つのことだった。その一つ目が約束をするべきってことで、説明を聞いたじぃじは納得した顔で「なるほど」と言った。



「お約束を決めれば、どっちがわるいんだって揉めることもなくなるでしょ?逆に決めていないとそれが大きな揉め事になってしまって、戦争に発展してしまってもおかしくないと思うの。」

「そうだな。」



じぃじは物分かりがいいから、本当にありがたい。私が今説明したのはインコタームズの理論だけど、じぃじはこれだけの説明で全て納得してくれた。



「あとね、そのお約束をね、紙にするの。」

「紙に?」

「そう。」



そしてこの世界にもう一つ欠落しているものと言えば、"契約書"だ。今はテムライムとの関係が良好だからいいけど、これからそれが悪くなってしまったり、他の国とも貿易を始めるってなれば、すべて口約束でしてしまっていることがトラブルを引き起こしかねない。


条件を決めていたところでそんな話していないって言われないためにも、書面での約束は必須だと思う。



「じぃじが、私にこれを渡してくれたでしょ?」

「ああ。」



私はそこで、あの時もらった通行許可証を取り出した。これはじぃじが生み出したこの世界で始めての"契約書"と言っても過言ではない。



「これを見れば確認しなくたって、じぃじが私にお約束してくれたってのがみんなわかるから、じぃじは私にこれをくれたじゃない?」

「そうだ。」

「そうやってテムライムとも紙でお約束をすれば、お互い"これでいいよね"って確認も出来るし、将来また揉め事になる事だって避けられる。」



じぃじはそこまで聞いたところで、「ありがとう」と笑顔で言った。そして久しぶりに、私は思った。



じぃじ、後は頼むよ。と。

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