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貿易事務OLが流通の整っていない異世界に転生したので、経験生かして頑張ります!  作者: きど みい
第一章 流行りの転生、しちゃったみたいです
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第4話 私、死ぬらしいです。

その日は少しウキウキしながら家に帰った。

すると帰るや否や南出さんから「今日はありがとう」と連絡が来て、またそれにもウキウキ気分で「こちらこそ」と返信をした。



ああこんな私にも、イケメンから好かれる道が、残っていたのか…。



久しぶりに楽しい気持ちのまま目を閉じたと思ったら、すぐに夢の世界へと落ちていった。






「…さん。」



本格的な眠りに入ってからどのくらいたったんだろう。

眠ってるんだから当然それがどのくらいかなんて分からないんだけど、頭の中から、何か声が聞こえ始めた。



「…つきさん。」



なんだよ、呼ぶなよ。

こっちは気持ちよく寝てんだよ。



久しぶりの浮かれた話にこっちは気分よく寝てんだから、頼むから幸せな夢でも見させてくれ。



「菜月さ―――――ん!!!」

「うるさ―――――――――いッッ!!!」



何とか内なる声を無視して寝ていたはずなのに、ついに耳元で大声で名前を呼ばれた。さすがにそれには驚いて目を開けると、周りにはどこまでも真っ白な空間が広がっていた。



「え、なんだ。夢じゃん。」



起こされたと思ってた。まだ夢の中なんだ、よかった。



安心した私は、もう一度横たわって寝ることにした。

そもそも夢の中なんだから寝るっておかしいだろ。頭が少しおかしくなった自分自身をクスッと笑いながら横になろうとすると、目の前ににょきッと、幼女の顔が現れた。



「うっわぁ!」

「こんにちは。」



まるでシーツを体に巻いたみたいに、ぶかぶかの白いワンピースのようなものを着た幼女は、にっこりと笑って私に挨拶をした。状況が全く読み込めないまま「変な夢だな」とつぶやくと、幼女は「え?」ととぼけた声を出した。



「夢じゃないです。ここは。」



幼女はまたニコニコと笑って、自信満々にそう言った。やっぱり変な夢だなと思って目をつぶろうとすると、幼女がまた耳元で「菜月さん菜月さん菜月さん」と何度も私を呼んだ。


「ねぇ、うるさいんだけど。」

「夢じゃないんです!」

「じゃあどこなの?」


あまりにも夢の中の幼女がしつこくて、私は逆に質問をしてみた。すると幼女は「う~ん」と考えた後、「そうですね」と言った。



「あなた方の世界の言葉でいうなら"天国"でしょうか。」

「はい???」



意味が分からなさすぎる。そう思って相変わらず頭にハテナを浮かべていると、幼女は笑顔を浮かべながら、「まあとりあえず座ってください」と言った。



「唐突ですが、菜月さん。」

「はい。」

「あなたは、死にます。」

「は?」



夢にしては意識がはっきりし過ぎている気がする。

それにしてもいきなりここは天国だと、そして私が死ぬと言われたところで、そんなこと「はい、そうですか」って信じられるはずがない。



「ナニイッテルンデスカ?」



思わず片言になって、そう言った。すると幼女は今度はため息をつきながら、「しょうがないですね」と言った。



「これがあなたの未来です。」



幼女はそう言って、白い空間にモニターのようなものを出現させた。そこには私と南出さんの姿が映っていた。


「菜月さんはこの後、南出さんといい関係になります。」

「はい…。」


そのモニターには、私と南出さんがデートを重ねる様子が映し出されていた。最初はカラオケに行って、そのあとは二人でご飯。そして夜景の見えるレストランで告白され、いずれは同じところでバラの花束と婚約指輪をもらう…。



「めちゃくちゃいいじゃないっすか。」

「ええ。理想の展開ですよね。」



幼女はそう言って笑った。その間にモニターには私がウエディングドレスを選ぶ映像が流れ始めて、それは理想中の理想の展開だった。



「はい、注目はここから。」



そんな理想の映像に見とれていると、幼女は唐突に指パッチンをした。するとモニターの映像が切り替わって、仕事終わりの通勤路を歩いている私の姿が映し出された。



「もうすぐ同棲し始める、というある日のことです。菜月さんはウキウキ気分で仕事から帰っています。」

「ええ。」



確かにモニターに映っている私は、心なしか軽い足取りで家まで歩いているように見えた。幼女は今の映像の状況を説明した後、モニターをまたパチンと叩いた。すると今度は、私を背後から移す角度に画面が切り替わった。



「その時あなたは後ろから、この女に刺されて死にます。」

「はい…?」



幼女の言った通り、私の背後には包丁を持った女がいて、その女は勢いよく走っていって私の背中を刺した。



「田中華 33歳。あなたと同じく、OLです。」

「誰、ですか?」



その女性の顔に、全く覚えがなかった。殺されるほど恨みを買った覚えもなくて震えると、幼女はにっこり笑った。



「この方は、南出修司さんの元彼女です。」

「南出さんの…。」

「はい。彼はあなたに出会ったことで、彼女を振ります。」

「えええ?!」



やっぱりハイスぺイケメンなんて信じるもんじゃない。

どこかでそう思ってみたものの、これは夢なんだからそもそも私があの人とどうにかなれる気がしないんだったと、そこでやっと思い出した。



「夢じゃないって言ってるじゃないですか。」



その時、幼女が私の心を読んだみたいにそう言った。

何を言っているのかまだ全く分からない私は、とにかくその白い意味の分からない空間で頭を抱えた。



「これはあなたに1年以内に起こりうる事実です。あなたは確実に、死にます。」

「えっと…。」



いや、本当だったとして、どうしろと?

今すぐハイスぺイケメンからは離れろと、そういうことなのだろうか。


幼女が私に何を求めているのか全く分からなくなって、私は言葉を失った。



「そこであなたにチャンスを与えに来ました。」

「チャンス…?」

「ええ、私は天使なので。」



そこで幼女は、「あ、忘れてた」と言って、背後から黄色い輪っかを取り出した。そしてそれを頭につけた後、また曇りのない笑顔でにっこり笑った。



「自己紹介が遅れました。天使と申します。」

「はあ…。」



何もかも意味がわからないけど、その輪っかって、アタッチメント式なんですね。

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