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第18話 明日の敵は今日の友?違うか!


「ここに行きたいの。」



無事クラドさんたちと合流した私は、さっき聞いた場所を地図の上で指さした。するとクラドさんは「わかった」とだけ言って、またウマを迷いなく走らせ始めた。



この人、タクシー運転手だとしたらめちゃくちゃ当たりだな。

たまにナビ入れても迷う人とかいるし、そもそもなぜかナビを使わない人とかもいるよね。


ってまた無駄なことを考えていると、彼は心配なくらい険しい森の中を進み始めた。



「ねぇ、合ってる?ウマ(スズメ)ももうあまり進めなさそうだし…。」

「ああ。いいところでウマ(スズメ) を置いて、そこからは歩くしかない。」



合っているかどうかすら不安だったけど、着いていくしか方法がない私は、素直に「うん」と返事をした。そしてその言葉通りクラドさんは、そこから少し進んだところでウマを置いて、私をウマから降ろした。



「来い。」



そしてクマでも出そうな道をまた迷いなく進んでいった。そもそもクマなんてこの世にいないんだけど。



「こんなところに…。」



こんなところに昔山賊が住んでたって、正気の沙汰だろうか。

ポルレさんも住みつかなそうな場所だけど…。


ってか忘れてた!

ポルレさん無事?!?



まああの人は大丈夫か。虫でも食べて生き延びてるはず。

むしろ内戦に気が付いてなかったりして。それはさすがに失礼か。




「ん?」



また余計なことを考えながらとにかくクラドさんの後をついていくと、彼が急に足を止めた。何があったんだと大きな背中越しに向こう側を見つめてみると、木で作られた人工的な門みたいなものがそびえたっているのが見えた。



「ここか。」



その門には当然だけど門番さんはいなかった。

もしかして人影なんて、見間違いなのか。


そう思うほどに辺りはとても静かで、木々が揺れる音くらいしか聞こえなかった。



「下がれっ!」



すると突然、クラドさんが叫んだ。

それと同時に後ろにいた部下の人が私の手を引いたと思ったら、クラドさんは持っていた木刀みたいなものを上の方に向けた。



カンッ



木と木がぶつかるいい音がした。

手を引かれたことで驚いて後ろを見ていた私がクラドさんの方を見直すと、彼は誰かと木刀を重ね合わせていた。



誰…?!もしかしてクソの手下…?!



ここで終わりか。

そう覚悟しながら、クラドさんが木刀を交えている人を覗き込んでみた。




覗き込んだ瞬間、その人が誰か分かった。私はすぐにクラドさんの部下の手を振り払って、二人の方に走り出した。




「…リアさんっ?!」



部下さんたちは急いで、私を追いかけてきた。

でもそんなことはどうでもよかった。全部どうでもよかった。



頭が真っ白になって何も考えられないまま、私はクラドさんを無視してその人の胸に飛び込んだ。



「…アルっ!」

「リ、リ、リア…?!?!?」



アルが面白いくらいに動揺してくれたのに、なんだか笑えた。でもそれ以上にアルが無事でいてくれたことが嬉しくて、自然と涙があふれた。



「よかった、ほんとに…っ。」



驚きからようやく少し解放されたらしいアルは、私がいるってことをやっと飲み込んで、背中に手を置いてくれた。私は力いっぱいアルを抱きしめて、しばらくそのまま動けなかった。



「お前、どうしてここに…っ!?」



気持ちを落ち着けて、体を離した。するとアルはまだ少し驚いた顔をしてそう言った。


「ん~~~。わかんない。気が付いたらここにいたの。」



どうしてと言われると、色んな理由がある。でもあえて答えるんだとしたら、体が勝手に動いていたとしか言いようがない。本当に私ってクレイジーなやつだ。



「っていうかこいつら…っ。」

「あ、よく分かったね。」



呆れた顔をしたアルは、クラドさんたちの方を見た。

あの時助けに来てくれたアルは彼の顔を見た瞬間、誰だかすぐに分かったみたいだった。



「明日の敵は、今日の友って言うでしょ?あれ、逆?昨日の敵は今日の友か!」



でも私がここにいられるのは、この人たちのおかげだ。

アルにとっては私や自分を襲ったやばいやつなんだろうけど、私にはもうこの人たちがただの真面目な人だとしか思えない。



だから前世の例えを引っ張り出して言うと、アルは意味が分からないという顔で私を見ていた。



「とにかく。こんなところにいられない。」



でもその後すぐ正気に戻った顔をして、「こっちにこい」と言った。そして私たちはさらに道がない道を進んでいくアルの背中を、静かに追った。


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