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第61話 王様へ報告


「ごめんなさい。」



国に帰ってすぐ王に報告に来て、真っ先に頭を下げた。

私が行くって意気込んで出て行ったのに情けなさ過ぎる。何か罪に罰せられてもおかしくないなと思いながら謝る私に、王は一言「やめてくれ」とだけいった。



「リアがどうにも出来なかったのなら、それが答えだ。」

「でも…。」

「リア。」



歯切れの悪いことを言っている私を、王は反対にとてもはっきりとした声で呼んだ。国がものすごいピンチを迎えているっていうのに、彼はなぜか少し楽しそうな顔で笑っていた。



「君はここではしおらしくしてるが…。リオレッドでは立派に喧嘩を売っていたと聞いた。」

「え…。」



誰がそんな不服な報告したんだ。

と怒りたかったけど、確かにあの時私は自信満々にリオレッドに喧嘩を売ってきてしまった。



「ごめんな、さい…。」

「はははっ。」



まるで怒られた子供のように謝ると、王は豪快に笑った。全然笑う場面じゃないのに、やっぱり彼はすごく楽しそうだった。



「ラルフが言ってたんだ。いつかリアに騎士王の座まで奪われるかもしれないって。」

「…え?」



ラルフさんがそんなことを言っていたなんて知らなかった。っていうか私が騎士王って最弱すぎんだろと、心の中の私が全力ツッコミを見せていた。



「そのくらいとても強い子だってことだ。」



そんなに強くなった覚えはないし、もしラルフさんと戦ったとしたら30秒で負ける自信がある。むしろ少しでも訓練を受けている子どもたちの方が強いかもしれないなと、ぼんやり考えた。



「そしてこうも言っていた。」



疑問だらけの私に、王は続けて言った。

図太いやつだとか言われてないだろうなって、思わず身構えた。



「いつも誰かのために、強く戦っているんだって。」



いつも誰かのために戦ってくれているのは、ラルフさんやエバンさんの方なのに。ラルフさんがそんな風に私を評価してくれているなんて、初めて知った。

嫁に来たのに"強い"なんて言われてしまうのがいい事なのかは分からなかったけど、そんな風に私のことを王様に話してくれていることはすごく嬉しかった。



「国のために、売りたくない喧嘩を売ってきてくれたんだろう。」



王様は悲しげな顔でそう言った。

その顔が今にも泣きそうなくらい悲し気だったから、私の方まで悲しくなり始めた。



「嫌な役回りをさせてしまったね。本当に申し訳ない。」

「や、やめてください…っ。」



王様はそう言って、さっき私がしたみたいに深く頭を下げた。

何もできなかった上に謝らせるなんて、余計申し訳ない気持ちになり始めた。



「私のせいで国が混乱することは事実です。」



確かに誰の手でもどうにもならない問題だったのかもしれない。

でも私のせいでこれから関税のかけあいが起こって、国中が混乱するのだって事実だ。だから事実をそのまま口にすると、王は少し悲しい顔をして一つうなずいた。



「致し方ない。しばらくは国から色々な支援をするようにしよう。」

「ありがとうございます。」



これ以上"リアのせいじゃない"と言っても私が聞かない頑固なやつだと判断してくれたのか、王様はそう言ってくれた。理解のある王様の元にいられること、本当に感謝しないとなと今回のことを経て心から思う。



「お互いの状況が厳しくなる前に、もう一度交渉の場を作りたいと思っています。」



そしてこの問題はここが終わりではない。

私はあの時心に決めた通り、自分で始めた戦争を自分の手で終わらせなくてはいけない。そんな決意をこめて王様の目を見ると、彼もまた同じように強い目をしていた。



「その時は、王様も同行いただけませんでしょうか。」



今度リオレッドに行くとしたら、また同じメンバーでいっても意味がない。もっと決定権のある人たち同士で話をしないと、話は平行線をたどるだけだ。

失礼を承知でそう言うと、王様は強い目をしたまま大きく一つうなずいた。



「もちろんそのつもりだ。本来は今回だって、俺が行くべきだったんだ。」

「ありがとう、ございます。」



何処までも心強い王様に出会えたことが、大きな心の支えになっているような感覚がした。そして彼のこの思考回路の根本にじぃじがいるんだと思ったら、じぃじまで私を見守ってくれているような感覚を覚えた。



どこかで見てくれているんだろうか。

見てくれているんだとしたら、どうかお互いにとってダメージが最小限におさまりますように。



次の交渉の話が決まるまで私に出来るのは、ただ祈ることだけだった。

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