第13話 4歳にして初めて街デビューします!
それからパパとケルシュさんは毎日徹夜みたいな状態で荷台の設計をした。
最初は何度作ってもうまく車輪が回らなかったり車輪が途中で取れてしまったり、うまく行ったと思ってもウマに持たせると強度が足りなかったりしたらしい。
まあそれも全部盗み聞きだから実際パパがどれほど苦労したかはわからないけど、半年くらいしたらなんとなく使えるくらいまでのものが出来上がったみたい。
「アリア~!お前は本当にすごい子だ!」
「へへ、でしょぉ~?リア、えらい?」
「えらいえらい!リアはパパの救世主だ!」
パパは私の髪がぐちゃぐちゃになるまで頭を撫でて、そして最後はギュっと抱き締めてくれる。私はパパにそうされるのがなんだかんだ好きで、そんな展開になるようにいつも仕組んでしまう。
パパ、いつもごめんね。
「リアのおかげで、街の光景も随分変わったよ。本当にすごい、この子は。」
「リアはパパの会社でお仕事出来るかもね?」
ママは冗談っぽく言ったけど、それは正解だった。最初はパパがもっと帰ってくるために始めたことだったけど、今では何となく、暮らしをもっとよくしたいとか、意識の高いことを考えてしまっている自分を自覚せざるを得ない。
「ほんとにこの子は希望だよ。ママも今度街に見に来たらいい。」
「パパ、リア、それ見てみたい!」
出来上がったというのに、考案者の私はまだそれを見たことがなかった。
パパとケルシュさんが作り上げたものがどんなものなのか、ちゃんとこの目で見てみたい。そしてもっと暮らしをよくするためには、街の様子を見ておく必要がある。
また意識の高いことを考えながら目を輝かせてパパに頼むと、パパは少し考えた後、にっこり笑って「よし!」と言った。
「明日、一緒に行ってみるか!」
「あなた、大丈夫?」
ママはすごく心配そうな顔をしていたけど、私が「やった~!」と言ってあまりにも喜ぶもんだから、ダメとは言えないって顔をしてため息をついた。
「危険なことなんて何もないよ。そろそろアリアにもいろんなものをみせた方がいいだろうし。」
「パパァ~、私パパがいつも買ってくれるワッフルを街で食べたいな~。」
「リアはほんとにワッフルが好きだな。」
パパはいつもお土産に、見た目も味もワッフルみたいなせんべいという食べ物を買ってきてくれる。アツアツのそれがいつか食べたいと思っていた私のテンションは、心底上がった。
「リア。パパのいう事をちゃんと聞くこと。一人では絶対どこにもいかない。わかった?」
「はぁい、ママ。リアいい子だからだいじょぶ~!」
ママは信用できないって目で、私を見た。私は「へへへ」と笑ってそれをごまかして、パパに思いっきり抱き着いた。
「ゴードン様。わたくしもお供して構いませんでしょうか。買い足したいものもありますし、リア様をお守りすることも出来ます。」
「そうね!メイサも行ってくれれば安心ね!」
ママはいい考えだって顔をして、両手を叩いた。パパも「もちろんいいさ」と言ったから、明日は3人でおでかけすることになった。
「ねぇ、メイサ。リア、あのブルーのドレスが着たいの。リボンもつけてね!」
「ふふ、アリア様。かしこまりました。」
「メイサもブルーの服を着ていこうよ~!リアと一緒!」
メイサは優しく笑って、「そうですね、そうしましょう」と言ってくれた。
そう言えば年を聞いたことがないけど、メイサはいくつなんだろう。私が生まれてから5年弱たったんだから、きっとこの世界で言う結婚適齢期みたいにはなってるはずだ。
いつかメイサも、結婚してこの家を出て行ってしまうのかな。
前の世界では結婚してもしなくてもいいくらいに思っていた私だけど、きっとこの世界ではそうはいかない。そんなことをぼんやり想像したら、なんだか悲しい気持ちになりはじめた。
精神年齢は33歳のはずなのに、数年幼女を続けていたら、気持ちまで若返っちゃったのかな。
一瞬は悲しい気持ちになりかけたけど、明日食べるワッフルのことを考えていたら、楽しみな気持ちがまたどんどん湧いてきた。