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第1話 久しぶりの帰省!


はろう、エブリワン。

あれからあっという間に3年ほどの月日が経って、アリア・ディミトロフ、25歳になりました!



あれからテムライムのドレス産業は見事復活。

そしてあの後、私はドレスに飽き足らず、農業の服も作ってキャロルさんに提案したの。その服ってのが、見た目はスカートなんだけど、ズボンになっているから動くのがとても楽っていうもので、前世で言うワイドパンツみたいなデザインになっている。


どうにかして女性もズボンを履くという文化が広められないかって考えている私に、エバンさんが「スカートに見えるズボンがあればいいのにね」と言ってくれたことで思いついたんだ。



うちの旦那様最高、最強。



そしてそのワイドパンツもヒットにヒットを重ねたらしいから、服飾産業の復活にも少しは貢献できたんじゃないかな?と自負してる。そのおかげもあってなのか最近はトラブルもないから私にお声がかからなくて、大人しく穏やかな生活をさせてもらっている。





「ままぁ~。」

「ん?どうした?」

「ボタンとめれなぁい。」

「ままぁ、僕もぉ。」



そして私たちの天使、カイとケンは4歳になった。

最近は何でもよくしゃべってくれるようになって、たまにエバンさんと訓練みたいなことも始めている。



「出来る出来る。大丈夫だから、ゆっくりやってみて?」

「いやだぁ。ままがいいのぉ。」

「ままっ。」

「ルナ、おいで。」



大人しく生活している理由は、実はそれだけではない。あれから私はもう一人女の子を授かって、他のことを考える余裕をなくしたっていうのが大きな理由の一つだ。


名前はルナ。現在2歳。とても月のキレイな夜に産まれた子だから、そう名付けた。どんな時でも私を暖かく見守ってくれた月のように、みんなを静かに暖かく包んでくれるような子になってほしい。



「ほら。二人ともルナに見られてるよ!」

「僕、お兄ちゃんだから出来るもんっ。」

「僕も!」



妹が出来たことで、二人は少したくましくなった気がする。

それは嬉しい事なんだけど、4歳は4歳だからしっかり甘やかしてあげなきゃいけないなと、たまに思い出してはそう思う。



「リア様、そろそろ。」

「ティーナ、ボタンできなぁい。」

「僕もぉ~。」



とはいえ二人には、私以外にも甘やかしてくれる人がいっぱいいる。



「坊ちゃま、順番です。」

「へへっ。」

「僕が先~!」



今もさっきまでは自分でやるって競っていたはずの二人が、それぞれティーナにボタンを留めてもらっている。恵まれた環境で育ってくれていることに本当に感謝しながら、私は自分とルナの準備を進めることにした。



「リア、いける?」

「はい。」



今日から久しぶりに、リオレッドに帰省することになっている。

本当はドレスのことが落ち着いたくらいの時、パパから「帰っておいで」と手紙が来たから帰ろうと思ったんだけど、その後くらいにルナを妊娠していることが分かって行けなくなってしまった。



リオレッドに帰るのは、実に5年ぶりになる。

この5年間でテムライムにパパやママが会いに来てくれたことはあったけど、やっぱり帰れるとなると気持ちが全然違う。私は帰省が決まったくらいから、まるで遠足前の子どもみたいにワクワクが止まらない自分をちゃんと自覚していた。



「ぱぱぁ!遅いよぉ!」

「ごめんごめん。」



エバンさんも、私の帰省についてきてくれることになっている。しばらくテムライムを空けなくてはいけないからと、ギリギリまで仕事をしてきてくれた。



「ごめんね。」

「リアが謝ることはないよ。むしろこれまで帰らな過ぎたくらいだ。」



エバンさんはそう言って、愛おしそうに私の頬をなでた。エバンさんと結婚してから、もう5年の月日が経った。それなのに彼は変わらず、こうやって私を思いっきり甘やかしてくれる。



「ねぇ~、行こおよぉ~。」

「僕お腹すいた!」

「ごめんごめん、いこっか。」



今日は荷物を乗せた船に同乗させてもらうことになっている。

私たちのためにスケジュールを変えさせるなんてことながないように、急いで荷物を馬車に乗せた。



「リア様、お気を付けて。」



ティーナはというと、あれから1人子どもを授かった。そして最近育休を終えて、無事に復職してくれた。

リオレッドはティーナの故郷でもあるから、一緒に帰った方がいいのかと思った。でも今の家族を置いて行かせるわけにはいかないし、ティーナにも「リオレッドには家族はいないから」と言われたから、今回は残ってもらうことにした。



「うん。ティーナも少しは休んででよ?」

「はい。」



ティーナはにっこり笑って返事をしたけど、絶対休まないと思う。

よく考えてみれば、ティーナと長い間離れるのは、出会ってから今まで初めてのことだった。何となくお互いそれを不安に感じつつも、子どもたちにせかされたせいで別れを惜しむ暇もなく、私たちは船に乗り込んだ。



「ねぇ、まま?」

「ん?」

「リオレッドは遠い?」



大きな船に乗って興奮気味のカイトが、目を輝かせながら言った。それがとてもかわいくて、思わず笑ってしまった。



「そうだね~。海のずっと先のほうにあるよ。」

「でも船がおっきいから、すぐ着いちゃうよね!」

「ふふ、そうね。」



この子たちのルーツは半分リオレッドにあるのに、今まで連れて行ってあげられなかったことを少し後悔した。甲板に立っていつリオレッドが見えるのかと目を輝かせている二人を見て、今後はもう少し頻繁に帰ろうと決めた。



「楽しみだね。」



二人を見つめている私を見て、エバンさんが穏やかに言った。

きっと私も二人に負けないくらい、目を輝かせていたんだろう。エバンさんの顔を見たら自分でもそれが分かって少し恥ずかしい気もしたけど、それでもやっぱりワクワクを止めることなく、まだ見えない故郷への希望を膨らませた。


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