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貿易事務OLが流通の整っていない異世界に転生したので、経験生かして頑張ります!  作者: きど みい
第四章 トラブルに対応する制度を整える
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第41話 おばあちゃんになっても一緒に

それからすぐ、催し物が始まった。

テムライムならではの楽器の演奏や歌の披露、ダンスや花火…。この国の明るい国民性を表すような盛大なスタートを、私は言葉を失いながら見つめ続けた。



「わぁっ!」「うあっ!」



カイもケンも、楽しそうにその始まりを見つめていた。

楽しそうに笑う二人を見ていたら私ももっと楽しくなってきて、ワクワクしながらオープニングイベントを楽しんだ。



「リア、ティーナ。行こう!」



イベントが終わったと思ったら、エバンさんは私たちを色んな所に案内してくれた。どこに行ってもとにかく盛り上がっていて、そしてどこに行っても私たちは暖かく迎えられた。


エバンさんに案内されるがまま、普段はなかなか食べられない美味しいものもたくさん食べた。子供を連れてるからっておまけをしてくれる人たちもたくさんいた。本当に暖かくて素敵な国だと、何度だって思い知らせられた。


そのままいつまでもにぎわっている雰囲気を楽しんでいたかったんだけど、カイトやケントをあまり長く外にいさせるわけにもいかず、私とティーナはしばらく楽しんだ後、家に戻ることにした。エバンさんも一緒に戻ると言ってくれたけど、毎日一生懸命働いているんだから、たまには羽根を伸ばすべきだと思って、私はそれを断った。



「時間気にせず、楽しんできてね。」

「何かあったらすぐに呼んでね。」



エバンさんはそう言ったけど、今日はなにがあってもエバンさんには連絡しないぞと決めていた。名残惜しそうにエバンさんは去って行ったけど、その背中が心なしか浮かれているのがよく分かった。





楽しかった余韻に浸っている間に、あっという間に夜になった。昼間たくさん遊んで疲れていたのか、二人はいつもよりすぐに寝てしまった。暇を持て余した私は二人が起きないようにそっと窓を開けて、夜になってもにぎわっている街をそこから見下ろしてみた。



「キレイ…。」



夜まで消えない街の光が、キラキラ輝いてまるで星みたいに見えた。そしてかすかに楽器や歌の音が風に乗って聞こえてきて、それがすごく心地よくてずっと聞いていたかった。



「リア様。」



夜風にあたりながら街の光景を見ている私を、ノックの後部屋に入ってきたティーナが優しい声で呼んだ。私が小さい声でティーナに「おいで」と言うと、ティーナは「はい」と小さく言って私の横に並んだ。



「キレイね。それに賑やかで…。すごく楽しい。」



小学生みたいな、単純な感想を言った。するとティーナは小さく笑った後、「そうですね」と言った。



「私、賑やかなところは嫌いでした。」



しばらく無言で外を眺めていると、ティーナが唐突に言った。どうしたんだろうと思ってティーナの方を見て見ると、彼女はどこか遠い目をして街の方を眺めていた。



「暗い子でした。話せば人に迷惑をかけると、そう思っていました。」



じぃじに昔、ティーナが虐待を受けていたという話を聞いたことがある。

一度ティーナの着替えを間違えて覗いたことがあるけど、今でも古い傷が残っているのがとても痛々しかった。



「でも今日、すごく楽しかったんです。」



もしかして私のせいで苦手な場所に連れて行っていたのかもしれない。そう思った時、ティーナは私の考えを読んだかのように言った。



「人ってすごく、暖かいものですね。」



ティーナはかみしめるみたいに言った。

その表情はとても穏やかで優しくて、まるで出会った時とは別人のようだった。



「ティーナ、変わったね。」



あの頃、いつだって何かにおびえているようにしゃべったティーナは今、しっかり自分の言葉で自分の意見を話していた。その変化がすごく嬉しくて素直に言うと、ティーナはもっと穏やかな顔で笑った。



「リア様の、おかげです。」

「私の…?」



私は何もしていない。全部ティーナが頑張ったおかげだって思った。でもティーナは私の疑問に自信満々に「はい」と言って、また遠い目をして街の方を眺めた。



「リア様といると、自然と背筋が伸びます。置いて行かれないように頑張らなくてはと思えます。リア様は私にとって、太陽のような存在です。」



ウソ偽りのない目でそんなことを言うもんだから、思わず私が照れてしまった。

両親の愛をいっぱいに受けた私には、ティーナの気持ちは分からないのかもしれない。でも少しでも私のティーナへの"愛情"が伝わっているのならそれでいいと思えた。



「これからティーナがママになったって、私がおばあちゃんになったって、ずっとよろしくね。」

「はい。」



私たちは目を合わせて、くすくすと笑った。

ずっと昔から仕事や手伝いばかりしていてアル以外まともな友達のいなかった私にとって、ティーナは親友のような存在だ。



明日の夜はいよいよそんなティーナが一歩羽ばたいてしまうかもしれない。

少し寂しい気もしたけど心から応援してあげなきゃいけないなと、楽しそうに街を見ているティーナの横顔を見て思った。


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